• スカパーJSAT株式会社 夏原 速人氏

    スカパーJSAT株式会社 夏原 速人氏

企業:スカパーJSAT株式会社
所在地:東京都港区赤坂1-8-1
業種:放送・メディア事業、衛星通信サービス・宇宙事業
連結従業員:667名(2020年3月31日)
目標:視聴データの分析にかかる時間を短縮し、顧客のニーズに合った提案を行う
ウェブサイト:https://www.skyperfectjsat.space/


Snowflakeのメリット

  • パフォーマンスの向上による処理時間の短縮
  • 実際に使用した分だけ支払う料金体系によるコスト最適化
  • 分析結果の新しい業務への適用

会員数300万人超の有料多チャンネル放送サービス「スカパー」を運営するスカパーJSATでは、膨大な視聴データを素早く効率よく分析するためにクラウドDWH基盤をSnowflakeに刷新した。これにより、分析のパフォーマンスが向上し処理時間を従来の10分の1にまで短縮。また、瞬間的なパワーを出しながら、その瞬間に使用したリソースにのみ課金される革新的な料金体系によりコストを最適化した。今後は、社内展開を進めるとともに、視聴データを活用した新しい施策を展開していく予定だ。

課題:重要性が高まる「視聴データ」、分析のためのDWH基盤が課題に

1996年10月に日本初のデジタル放送「パーフェクTV」としてスタートし、現在は国内唯一のCSデジタル放送を運営するプラットフォーム事業者として、会員数300万人超の有料多チャンネル放送サービス「スカパー」を運営するスカパーJSAT。メディア事業のほかにも宇宙事業として、航空機・船舶向けインターネット回線や災害時のバックアップ回線などアジア最大・世界第5位の衛星通信サービスを展開する。メディア事業と宇宙事業を両輪で展開するユニークな企業だ。

もっとも近年は、テレビ以外のさまざまなデバイス経由でコンテンツが視聴されるようになり、顧客の可処分時間の奪い合いが激しくなるなど、同社の事業環境は激変している。放送・メディアサービスを提供し続けるためには、さまざまなデータで顧客を正しく理解し、得られた知見から施策をデータドリブンに実行していくことが求められている。

そこで同社では、顧客との適切なコミュニケーションを図るための接点を設計し、サービスを推進していく部署としてコミュニケーションデザイン部を新設し、データ分析から顧客接点の設計・構築、データドリブンな施策までを一貫して実行する体制を整備した。コミュニケーションデザイン部の夏原速人氏は、こう話す。

「いつ、だれが、どのチャンネルで何のコンテンツを視聴しているのかを把握し、お客様を正しく理解するために、視聴データの分析に力を入れています。視聴データは膨大で、効率よく高い精度で分析を行うためには、データウェアハウス(DWH)を中心としたデータ分析基盤の構築・運用がカギを握ります。そこでクラウド上にDWH基盤を構築し、BIツールを使って視聴データの見える化に取り組んだのですが、データ量があまりに膨大で、分析に時間がかかりすぎることが課題になりました。DWHでの処理に数時間かかったり、BIへの集計結果の表示ができなったりというケースが相次いだのです」(夏原氏)

この課題を解決するために採用したのがSnowflakeだった。

解決策:複雑な条件の分析では結果を得るまでに数時間かかるケースも

視聴データは、視聴者がいつどのチャンネルを選択したかを記録したログデータだ。顧客がサービスをどう消費したかを直接的に示すデータであり、顧客を理解するうえで最も重要なデータに位置づけられる。

視聴データはチャンネルを変えるたびに秒単位で記録されるため、多チャンネル放送を行うスカパーJSATの場合、データ量はより大きくなる。特定のチャンネルについて前日のデータを翌日に分析する場合でもデータ量は膨大になる。また、放送されるコンテンツにはセンシティブな内容の物が含まれ、かつ、テレビは主に世帯財でもあるので、その視聴履歴は機密度を高くしたセキュアな管理が求められるのだ。

夏原氏は、視聴データを分析する際に直面した課題について、こう説明する。

スカパーJSAT 夏原 速人氏

「特に問題になったのは、併視聴率のような複数の条件を組み合わせた分析がほとんど実施できなかったことです。1つの分析を行うために数時間かかってしまうため、ニーズが生じたときに、適切なタイミングで結果を提供することができませんでした。また、視聴動向分析の性質上、アドホックに行うことが多いため、利用時間が決まっているわけではなく、いつでも分析できる環境を準備しておくためのコストも懸念点でした」(夏原氏)

分析時間を短縮させるために、DWHから一部データを抽出し、用途ごとにデータマートを作る取り組みも進めたが、アドホックな分析では利用できないなど課題も多かった。また、在宅勤務の際にVPN経由でリモートアクセスすると回線速度の関係でさらに分析に時間がかかり、分析のためだけに出社せざるをえないことも悩みだった。

これらの解決策を探っていたときに、パートナー企業から紹介を受けたのがSnowflakeだった。「当時IPOを予定している企業として社名だけは知っていました。『ストレージとコンピューティングが分離されていることが大きな特徴』との説明を受け、興味を持ちました。実際に一部のデータを使ってマイグレーションテストしてみると、レスポンス速度とコストの面で驚くほどの効果が得られたため、すぐに導入を決めたのです」(夏原氏)

結果:分析時間は10分の1にまで短縮、使用した分だけ支払う料金体系により利用コストも最適化

データ分析基盤は、クラウドストレージ上にデータを蓄積し、その上に構築したDWHサービスで分析し、BIツールのTableauで表示するという構成だった。基盤刷新ではクラウドストレージとTableauはそのまま利用を継続し、DWHをSnowflakeに切り替えるかたちにすることで、スムーズに移行を完了させることができた。

「分析業務に利用していたDWHをすべてSnowflakeに移行しました。Snowflakeは瞬間的なパワーを出すことができるため、対象のデータが大きく複雑なクエリを実行する場合に特に効果を発揮します。また、セキュリティに関しても暗号化やSSL接続といった十分な機能が搭載されており、データの安全性を担保できています」(夏原氏)

導入効果は大きく3つに集約することができる。1つめはパフォーマンスの向上による処理時間の短縮だ。

「BIツール上でのデータの描画速度は1/10ほどに短縮しました。併視聴率など複雑な条件でのクエリについても、従来は数時間かかっていたものが数分で済みます。また、視聴率ランキングなどもほぼリアルタイムで結果を知ることができるようになりました。これにより各種施策の効果検証を社員自身が効率的に行うことができ、PDCAサイクルの高速化が実現できました」(夏原氏)

2つめは、使用した分だけ課金される料金体系によるコストの最適化だ。運用管理の手間がなくなった分、トータルコストが大きく下がったという。

「視聴データの分析は24時間365日実施しているわけではありません。1日に数回必要に応じてその都度実施するケースがほとんどです。以前のDWH基盤は、土日や夜間など利用しない間は一時停止したり規模を小さくしてコストを抑える工夫が必要でした。Snowflakeではそうした努力も必要なく、瞬間的に大きなパワーを使って分析を実行できます。以前と比べて同等のコストですばやい分析ができるようになりました」(夏原氏)

3つめは、分析結果の新しい業務への適用だ。併視聴率に代表される新しい分析が容易に実施できるようになったことで、顧客接点や顧客コミュニケーションに向けた新しい施策を講じやすくなった。これは今後のビジネス展開に大きな意味を持つと夏原氏は強調する。

未来:Snowflakeを活用した「パーソナライズレコメンド」を推進していく

新しい施策のなかでも、特に重要なのが併視聴率の分析だ。併視聴率とは、番組Aを見ていた人が番組Bを見ている割合を調べたものだ。たとえば、併視聴率が高いユーザーに対して、親和性の高い番組のレコメンドを行ったり、番組に関するコンテンツのプロモーションを行ったりする。ECサイトでは馴染みのある手法だが、テレビ放送のなかでは、まだ活用が進んでおらず、大きな可能性を秘めている。

「データをもとにダイレクトに番組編成を行うこともできますし、他のチャンネルと連携してクロスセルやアップセルなどを実施することもできます。当社は多チャンネル放送であるため、さまざまな組み合わせからお客様のニーズに合った提案をすることができると考えています」(夏原氏)

今後の展開としては、Web上のプラットフォームなどから取得しているすべての視聴データをSnowflakeへマイグレーションし、データ管理を一元化することを想定している。また、データ量の増加、集計条件の複雑化を行い、さらに複雑な分析を可能にし、社内のデータマーケティングを推進する予定だ。

「まだ使い始めて間もないですが、既にIT面での効果に驚いています。今後は、視聴データだけでなく、その他すべてのデータを統合するプラットフォームの基盤にも採用したいと考えています」(夏原氏)

さらに、新しい分析手法の開発にも取り組んでいくという。

「Snowflakeの瞬間的なパワーを生かせば、機械学習させながら複雑な分析・アウトプットを行うことも可能だと思います。たとえば、リアルタイムでのトランザクションデータに対して、決められたルールベースではなく、複雑な予測モデルを回しリアルタイムで結果を返すといったようなイメージです。このようなことが可能ならば、ユーザーのリアルタイムな行動から感情を捉えたうえで、番組を即座にレコメンドしてあげるという夢のようなCRM施策もできるのではないかと考えています」

有料コンテンツサービスは、顧客にいかにコンテンツに興味を持ってもらい、視聴してもらうかが重要だ。そうした「パーソナライズレコメンド」を中心に、SnowflakeはスカパーJSATのビジネスを支えていく。

「いつ、だれが、どのチャンネルで何のコンテンツを視聴しているのかを把握し、お客様を正しく理解するために、視聴データの分析に力を入れています。視聴データは膨大で、効率よく高い精度で分析を行うためには、データウェアハウス(DWH)を中心としたデータ分析基盤の構築・運用がカギを握ります」
──スカパーJSAT 夏原 速人氏

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