少子高齢化と労働人口の減少、そして近年大規模化する災害への対策など、地方自治体や一般企業はさまざまな課題を抱えている。これらの課題解決においてICT(情報通信技術)の活用は不可欠だ。そこで地域密着型で通信事業を展開する西日本電信電話株式会社(NTT西日本)は2019年10月、「地域創生クラウド」の本格提供を開始した。その地域創生クラウドに付加価値を提供するのが、オラクルのデータマネジメント基盤である。

10月にNTT西日本グループがオンラインで開催したイベント「NTT GROUP COLLECTION 2020 ONLINE LIVE」で、日本オラクル株式会社の担当者がオラクルのデータマネジメント基盤について説明を行ったので、その詳細をお届けしよう。

※2020/12/21から2021/3/15までの間、NTT GROUP COLLECTION 2020 ONLINEを実施中。
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データ利活用の場となるデータセンター、地域と集約の2種類を提供するオラクル

登壇したのは、日本オラクル アーキテクチャー&インダストリーストラテジー本部 コネクティッドエンタープライズ部で部長を務める尾山仁一氏、そしてテクノロジー・クラウド・エンジニアリング本部 キーアカウントソリューション部でシニアクラウドアーキテクトを務める柳沢成俊氏だ。

  • 日本オラクル株式会社 アーキテクチャー&インダストリーストラテジー本部 コネクティッドエンタープライズ部 部長 尾山 仁一 氏

    日本オラクル株式会社
    アーキテクチャー&インダストリーストラテジー本部
    コネクティッドエンタープライズ部
    部長 尾山 仁一 氏

  • 日本オラクル株式会社 テクノロジー・クラウド・エンジニアリング本部 キーアカウントソリューション部 シニアクラウドアーキテクト 柳沢 成俊 氏

    日本オラクル株式会社
    テクノロジー・クラウド・エンジニアリング本部
    キーアカウントソリューション部
    シニアクラウドアーキテクト 柳沢 成俊 氏

変化の激しいビジネス環境に対応したり、顧客や社会のニーズをベースに製品やサービスを開発したり、場合によってはビジネスモデルを変革するデジタルトランスフォーメーション(DX)、その土台となるのがICTだ。オラクルはDX実現で特に重要になるICTとして、人やものをつなぐ「センシング技術」、センサーやデバイスからのデータ送信に関連する「ネットワーク技術」、データを処理するアプリケーションが格納される「クラウド」、大量のデータを高速かつ安全に集積・処理するための「ビックデータ」、データ処理から洞察を得たり自律的な判断や予兆を行う「AIと機械学習」の5つがあるとみる。

DXにより競争優位性を確保するためには、さまざまなデータから現状を正確に把握したり、これまで見えなかった問題点の抽出と検証を行う必要があり、また、未来に向けて意思決定をスピーディに行っていくことが求められる。「収集したデータの利活用を進めることで、DXが加速します」とオラクルの尾山氏は説明する。

データの利活用を行う”場”となるのが、データセンターだ。オラクルの場合、集約型データセンターとして、東京と大阪の2箇所に「Oracle Cloud」のデータセンターを用意している。データマネジメントはもちろん、ERP、SCM、CX(Customer Experience)などのアプリケーションなどさまざまなサービスが利用できるパブリッククラウドとなる。

これに加えて、オラクルは地域データセンターの取り組みも進めている。地域データセンターとは地域に特化したクラウドで、自治体や教育機関などが自分たちの地域にデータを置くことができるうえ、ネットワークコストや遅延を抑えられるというメリットもある。オラクルは、集約型と同様のデータマネジメント基盤などの技術を地域データセンターでも用意しており、「地域データセンターと集約データセンターの両方を使いながらデータの利活用も可能」と尾山氏はいう。

■NTT西日本の地域創生クラウドに不可欠だったOracle Database

NTT西日本の地域創生クラウドとは、ICTを活用して地域の社会課題解決や活性化を支援するために同社が構築・提供する情報集積プラットフォームだ。その地域の自治体、大学、企業などはこれを活用することで、業務の効率化などの目的に合わせたアプリケーションを利用できる。

技術的には、Microsoftのプライベートクラウド技術「Microsoft Azure Stack Hub」をNTT西日本の地域データセンターに構築し、さまざまなシステムの土台となるサーバー基盤を提供する。この基盤にデータベースの付加価値を追加するにあたって、重要な役割を果たすのがオラクルのデータマネジメント基盤だ。

西日本電信電話株式会社 ビジネス営業本部 アドバンストソリューション営業部 自治体クラウド担当(名古屋)で担当課長を務める千田敬人氏は、「データベースの安定性と可用性は不可欠でした」とオラクル採用の理由を説明する。特に、データを複数持ちながら整合性をとりつつ更新を行うオラクルのRAC(Real Application Cluster)の仕組みに対し、必要性を強く感じていたという。RAC活用に必要なオラクルデータベースの利用については、オラクルのデータベースクラウドをデータセンター内に構築できる「Oracle Exadata Cloud@Customer」を活用することで、ソフトウェアライセンスやハードウェアコストを抑えることができたという。

「データベースに最適化されており、安定かつ高速な処理を可能とするExadataをオンプレミスとして地域データセンターに設置しながら、同時に従量課金でサブスクリプションの価格体系を持っており、また、マルチテナントを実現できるなど、必要となる要件を満たしていました」と千田氏は評価する。

実際、「お客様からは、業務上のシステム処理時間が概ね40%以上短縮しているという声をいただいています」と千田氏、場合によっては半減~60%減のところもあるそうだ。

■複雑化するデータマネジメント基盤、オラクルのアプローチは?

データベース最大手のオラクルだけあって、データマネジメントは重要な差別化となる。

日本オラクルの尾山氏はオラクルの強みを「データアクセスの容易化」「システム管理者の労力極小化」「強固なデータセキュリティ」の3つから説明した。この3つにより、収集したデータが蓄積・管理されるデータレイクをNoSQL、ブロックストレージ、Hadoopなど、リレーショナルデータベース以外に複数持ちながら、データに高速かつ容易にアクセスできる。さらに、データをしっかり保護するセキュリティ技術も備える。

そもそも、デジタル化の推進によりデータマネジメント基盤の課題は複雑になっている。「従来から扱っている構造化データに加え、JSON、キーバリュー、グラフデータなどさまざまな形式のデータを扱う必要が出てきています」と日本オラクルの柳沢氏は語る。その結果、企業はそれぞれのデータ形式に最適な単機能のデータベースを導入し、マルチデータベース環境を構築していることが多い。しかし、このようなマルチデータベース環境はデータのフラグメンテーション(断片化)を招いてしまい管理が複雑になる。「アプリケーション側も、複数のデータベースにアクセスする必要があるため処理が複雑化する」と課題を指摘する。

このように複雑化するデータマネジメント基盤において「管理性」「利用性」「安全性」の3要素を実現するため、オラクルは「Converged Database」「Oracle APEX」「Oracle Database Security」「Oracle Exadata」「Autonomous Database」という5つの技術を用意している。

1つ目はOracle Databaseを単一のデータベースかつ複数のデータ形式で管理できるなど、さまざまな機能を持つConverged Databaseだ(Convergedとは統合を意味する)。企業内にあるさまざまなデータの管理と分析において、オラクルではシングル・データベース戦略を推奨している。「シングル・データベース環境にすることでデータの断片化がなくなり、データ管理も簡素化され、さらにはアプリケーションの複雑性も排除できます」と柳沢氏は語る。

2つ目のOracle APEXとはApplication Expressの略で、データベース上で動作するアプリケーション開発フレームワークだ。最大の特徴はコードレス。これにより、分析をする利用者が自分でデータ分析アプリケーションを開発できるという。「データ分析では、データの収集、分析、共有というサイクルを早く回すことが重要。Oracle APEXにより、DXのスピードに対応できます」と柳沢氏は語る。

3つ目のOracle Database Securityは、脅威からデータを保護する機能群だ。データベース機能を中心に、アクセスの掌握・監視、データの保護・不可視化、権限管理などで構成されるベストプラクティス「Oracle Maximum Database Security Architecture」を提供している。「データベースはセキュリティの最後の砦。こうしたセキュリティ機能群により、データをしっかり守ることができます」と柳沢氏は述べる。

4つ目のOracle Exadataは、さまざまなデータベース処理に最適化されたOracle Database専用のプラットフォームだ。オンプレミスとクラウドの両方をサポートし、高性能、優れた運用効率、高可溶性、セキュリティを実現する。特に柳沢氏が強調するのがストレージへの革新的な機能だ。「従来のデータベースサーバーの処理に比べて、数十倍、場合によっては数百倍で処理ができます」と柳沢氏は語る。NTT西日本が地域創生クラウドで活用したOracle Exadata Cloud@Customerは、顧客のデータセンターにこのExadataを利用したクラウドサービスを持ち込むサービスとなる。

5つ目のAutonomous Databaseは、Oracle Databaseを自律稼働するためのクラウドサービスとなる。機械学習などを利用して管理・拡張・監視・チューニングの自動化、外部からの防御、自己修復などを実現しており、「完全自動化によるデータ管理の効率化が図れます」と柳沢氏。オンプレミスからAutonomous Databaseに移行することで、管理コストを最大80%削減、TCO(総所有コスト)を最大50%削減できるという。

このAutonomous Databaseを導入しているのが、全日空空輸(ANA)が2016年に立ち上げた新組織デジタル・デザイン・ラボ(DD-Lab)だ。地域企業活性化の新規事業「Journey+(ジャーニープラス)」において、少数精鋭で新規事業を企画・運営するためにはシステムの構築と運用への負荷を最小にしたいというニーズから、Oracle APEXと共にAutonomous Databaseを採用した。

地域住民との交流を促進する旅を企画したり、評価に基づいた集客マーケティングのPDCAサイクルを回すなど、オラクルの最新テクノロジーを活用することで、チームはデータの活用に専念できるようになったという。

最後に柳沢氏は、「オラクルのミッションは、人々がいまだかつてない方法でデータを捉え、知見を導き出し、無限の可能性を得ることです。様々なサービスで、お客様のビジネス、地域社会の活性化にむけさらなる貢献をしたい」と述べ、クラウド中心のサービスカンパニーとして支援体制を整えていることを強調した。

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