2019年6月13日、アメテックグループのクレアフォームから、ポータブル3Dスキャナーの最新モデル「HandySCAN BLACK」「Go!SCAN SPARK」についての説明会があった。クレアフォームの製品は他社の先を行く技術力で、産業用3Dスキャナー業界のなかでも高い実績を誇っており、自動車メーカーを中心に数多くの大企業で採用されている。
満を持して発表された2つの3Dスキャナー新製品は、いったいどのような進化を遂げたのだろうか。
より高速になった「HandySCAN BLACK」シリーズ
前述したとおりクレアフォームは2つの製品ラインナップを刷新した。まず1つ目は「HandySCAN」シリーズの後継機種「HandySCAN BLACK」と、その上位機種「HandySCAN BLACK Elite」だ。スーツケースに収まるほど軽く小型で、どこにでも持ち運んで3Dスキャンが行える。
従来機種「HandySCAN 700」からの大きな変更点は、測定速度と解像度だ。計測に用いるレーザークロスを7本の赤色レーザーから11本の青色レーザーに変更したことで、2.7倍の測定速度を実現。また測定解像度は0.050mmから0.025mmへと精細になり、細かな凹凸も高解像度で測定できる。また、測定範囲から外れたときに警告音を鳴らしてくれるサウンドフィードバックも搭載し、画面を確認せずとも素早いスキャニングが可能になった。
トラッキングポイントなしでスキャンできる「Go!SCAN SPARK」
2つ目の新製品「Go!SCAN SPARK」は、「Go!SCAN 20」の特徴である高解像度と、「Go!SCAN 50」の特徴であるスキャン範囲をバランスよく引き継ぎつつ、より取り回しやすくポータブル性に優れたデザインへと一新した。
最大の強みは、トラッキングポイントを使わずにスキャンできることと、色(テクスチャ)トラッキングが行えることだ。スキャンの速度や精度ではトラッキングポイントを利用する「HandySCAN」シリーズに及ばないものの、その柔軟性を活かすことで、これまで測定できなかった形状や色情報を取得できる。3Dスキャナーの可能性を広げる製品といえるだろう。
では、これらの2種類の新製品はどのような意図・背景を元に開発されたのだろうか。ここからはクレアフォームの副社長 兼 技術最高責任者 デビッド・ガニェ氏に、3Dスキャナーの可能性について聞いてみたい。
デビッド氏が語る「HandySCAN BLACK」の進化点
デビッド氏によると「HandySCAN BLACK」「Go!SCAN SPARK」は、クレアフォームの競争優位性をより高めるソリューションに位置づけられるという。
「『HandySCAN BLACK』は非常に用途が広く、軽量で可搬性に優れた形状を活かしてさまざまな分野で利用できます。従来のモデルと比較するとスキャンの正確性が大きく向上し、品質の高いデータが得られるようになりました」
開発はもちろんのこと、製品の検査やクオリティコントロールにも有効で、たとえば自動車業界や航空業界の現場での活躍が期待できるとのことだ。さらに同製品は、これまで利用できなかった素材や環境に対応したという。
「3Dスキャナーは光の反射でトラッキングを行うため、透明な素材を計測できないという短所があります。この『HandySCAN BLACK』は、自動車のヘッドライトのように透明度がそれほど高くない素材であれば、(精度の保証はできないものの)計測が可能となりました。また、従来は太陽光のような強い光源の下で利用するのが難しかったのですが、このような状況下でも計測できるようになりました」
「Go!SCAN SPARK」に期待される幅広い使われ方
「HandySCAN BLACK」が精細なスキャン性能を追求した一方で、「Go!SCAN SPARK」はさまざまな対象をすぐにスキャンできることを強みとしている。
「『Go!SCAN SPARK』の最大の特徴は、対象物の形や位置を認識させるためのトラッキングポイントを必要とせずに、3Dスキャンが行えることです。たとえば、二次加工まで終えた鋳造品の検査などに利用することができます」
さらに「Go!SCAN SPARK」は、物体の表面に描かれたテクスチャと色彩情報を取得できるようになった。また、高性能スキャンカメラ、白色光テクノロジーにこの色彩テクスチャカメラが加わることで、形状、色、マーカーの3種類からトラッキングを行えるようになり、よりさまざまな対象をすぐにスキャン可能になったという。
「プロダクトデザインやインダストリアルデザインにおいては有用な追加機能として活用できるでしょうし、広告業界やマーケティング、マルチメディアデザインといった分野でも使っていただけるのではないかと考えています」
3Dスキャナの性能向上がもたらすもの
このように3Dスキャナーが進化することで、今後どういった分野で活用されるようになるのだろうか。ダニエ氏によると、数多くの分野で3Dスキャナーの導入が進むなかで、とくに製品開発で利用の幅が広がっていくという。
「たとえばテーマパークの乗り物のような流体的なシェイプを持ったものを成形する際に使えますし、コンポジット成形のように素材を合成してモノづくりを行う際にも役立ちます」
クレアフォームの製品は、日本市場においてもアメリカ市場と同じように受け入れられてきた。なかでも自動車産業で広く利用されており、最新の「HandySCAN BLACK」も同様に採用が進むことが期待されている。というのも、いま自動車産業は転換期にあり、これから電気自動車やハイブリット自動車が増えていく。そのような変化の中で、3Dスキャナーの需要もより増していくだろう。
「新しい分野としては、医療業界での利用が進んでいます。たとえばリハビリ分野では、これまで患者様のサポーターを作る際に身体の形に合わせた型を石膏で固めて取っていましたが、『Go!SCAN SPARK』を使えばどこでも素早く計測し、3Dプリンターで作成可能です。また整形医療では、顔をスキャンして変化のビフォア/アフターを事前に確認するという使い方が一部で行われています」
3Dスキャナの進化の方向性は?
最後に、3Dスキャナーが今後どのような進化を目指しているのか、その方向性を聞いてみた。
「3Dスキャナーにはレーザートラッキングや白色光トラッキングなど、さまざまな計測・測定技術がありますが、いずれもトラッキングポイントを必要とすることが多いのが現状です。このような製品に変わってタッチレス、ポイントレスでトラッキングできる3Dスキャナーが主流になっていくでしょう」
3Dスキャナーが利用される範囲はどんどん広がっていき、これまでスキャンできなかったものに対しても積極的に使われるようになる。従来は自動車のドアを検査する場合、測定を開始してから結果が出るまで約1時間かかったが、「Go!SCAN SPARK」を使うことで分単位で検査が完了するようになった。精度も向上しており、今後もこのような現場での活用が進むことだろう。
「3Dスキャナーには無限の可能性があります。工業業界だけでなく、医療やサービス、エンターテインメントなどあらゆる分野で活用が進んでいくことでしょう。こうした新しいマーケットに対して、まずはその存在を知ってもらえるよう、プロモーションを続けていきます。3Dスキャナーの可能性にこれからも注目してください」
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