12月8日、東京都新宿区にて開催された「マイナビニュースフォーラム2017 Winter for データ活用 ~企業間競争に勝ち残るビッグデータ活用術~」。同イベントは流通・小売業、製造業の2トラックに分かれて開催し、製造業のキーノートとして積水ハウスとブリヂストンが登壇した。本稿では、それぞれの企業がどのようにデータを活用しているのかお伝えしよう。

講演レポート(1):積水ハウス

全業務システムに精通するIT部門が『企業間競争に勝つための情報活用』を牽引

はじめのキーノートでは、積水ハウス IT業務部 部長(組織運営担当)の宍倉正人氏と、同業務部 部長(システム企画/IT推進担当)の上田和巳氏が登壇。「積水ハウスのIT部門が考える企業内ビッグデータ活用術」と題した講演を行った。

積水ハウス IT業務部 部長(組織運営担当) 宍倉正人氏

宍倉氏は冒頭で、IT業務部の役割について「グループ会社および関係会社を含む、企業内の全業務システムを横串で担当している部門です。社内業務に精通すると同時に、あらゆるデータの所在を把握しており、俯瞰的な視点で業務フローの全体最適化を図れるという立場から、システム開発だけでなく業務での活用や落とし込みまでを行っています」と語る。

企業内ITの目的は、企業活動に貢献して成果を出すことにある。しかし実際には、末端に行くほど経営目的から離れてブラックボックス化したり、目的が共有されずに導入だけで満足してしまったりと、当初の企画通りに成果を出すことが難しいケースも多い。また、部門や組織の壁によって部分最適に陥ってしまう、利用者側に“やらされ感”が生じて意見・要望すら通らない、といった部分も大きな課題だ。

これに対して、宍倉氏は「経営視点を欠いたIT活用では大きな効果・成果は望めません。必要なのは、経営とITをシームレスに結合したIT適用です。単純なシステム導入だけでなく、目的の共有、調整、落とし込み、フィードバックといった各プロセスを実行する上では、『業務の支援』『情報の活用』『現場のITリテラシーの向上』が極めて重要といえます」と語る。

積水ハウス IT業務部 部長(システム企画/IT推進担当)
上田和巳氏

続いて登壇した上田氏は、これまでIT業務部が手掛けてきた具体的な事例として、年間87億円もの継続的なコストダウンを実現した「邸情報プロジェクト」における企業内コア情報の一元化と業務の再構築、約4万台にもおよぶiPad/iPhoneの全社展開で実現した働き方改革・業務革新、アクションにつなげるためのインテリジェンスレポート作成について解説。

最後に「『企業間競争に勝つための情報活用』に必要なのは、情報活用に向けた風土と環境の構築、しっかりと仮説を立てて検証する情報分析、そしてなによりIT部門が一歩前に出て牽引することが重要です」と、参加者に対するアドバイスを送った。

講演レポート(2):ブリヂストン

段階的なバリューチェーン基盤の変革でソリューションビジネスを加速

もう一方のキーノートでは、「ブリヂストン、デジタル変革の挑戦~生産革新から新サービス創出まで~」と題して、ブリヂストンでソリューションIoT戦略部 センシング技術開発ユニットリーダーを務める花塚泰史氏が講演を行った。

かつて弊社は、いわゆる“古典的な製造業”でした。しかし、近年では新興国のタイヤメーカーがグローバルでシェアを拡大するなど、急速に変化する事業環境への対応が求められたのです。その答えがデジタルトランスフォーメーションでした」と語る。

同社では、タイヤを売るという従来のビジネスモデルから、タイヤを貸し出してメンテナンス部分を受け持つという、製造販売業からソリューションプロバイダへの大規模な転換を図っている。これは、空気圧やローテーションの管理、在庫管理の手間といった不安要素の解消で顧客価値を生み出すと同時に、環境負荷低減によるサステナビリティも実現するものだ。

ブリヂストン ソリューションIoT戦略部 センシング技術開発ユニットリーダー
花塚泰史氏

ただし、ソリューションプロバイダへの転換を果たすには、その礎となるバリューチェーン基盤にも変革が必要となる。

花塚氏は「バリューチェーン基盤の変革には、各プロセスをデジタル化・見える化するだけでなく、必要に応じて統合することが求められます。また、これまでの事業で培ってきた知識や技術、経験などをデジタルと融合し、独自のデジタル技術を創出するというのも重要なポイントです」と語る。

しかし、これらを一気に全社展開するのは困難だ。そこで同社では、社内における可視化・最適化を用いた生産性と運用性の向上、タイヤを中心とした顧客向けソリューションの提供、業界レベルでのエコシステム構築という段階的な取り組みを実施している。

ここで花塚氏は、顧客への提供価値を上げるデジタルサービスの一例として、鉱山車両向けタイヤ空気圧・温度管理システム「B-TAG(Bridgestone Intelligent Tag)」や管理ソフトウェア「TreadStat」を用いたソリューションについて解説した。

このB-TAGは、鉱山車両のタイヤに空気圧や温度を測定するセンサーを取り付け、タイヤの状態をリアルタイムにモニターできるというもの。タイヤの寿命は使い方によってばらつきが大きいが、走行距離/走行時間/取付位置/残溝量/交換理由といった複数のデータと知見を合わせることで、銅・鉄・石炭などの対象資源および顧客ごとの差が見えてくる。こうして可視化された情報から、顧客に最適な商品の提案や開発、状況に応じたタイやローテーションの提案など、各種ソリューションサービスへとつなげていくわけだ。

「“これまでの知見”と“データサイエンス”の組み合わせにより、課題解決の“質”と“スピード”を上げることができます」(花塚氏)

さらに花塚氏は、社内におけるデジタルトランスフォーメーションの例として、AIを搭載した最新鋭タイヤ成型システム「EXAMATION」も紹介した。こちらは、同社のコア技術に関する知見と生産工程などで得られる膨大な情報のビッグデータ解析結果から新たな制御アルゴリズムを生み出す「BIO(Bridgestone Intelligent office)」、そのアルゴリズムに基づきセンシングデータからAIを活用して生産設備の自動制御を行う「BID(Bridgestone Intelligent Device)」という、2つの技術をベースとしたもの。

「弊社ではBIO/BIDの活用により、センシングデータの解析および、それをシミュレーションして現物で検証するサイクルを回すことで、改善活動のデジタル基盤を実現しました。現在は、このサイクルをグローバルに同時展開しています」と語る。

花塚氏はそのほか、タイヤと路面の状況を感知するセンシング技術「CAIS」 を用いた安全・安心なモビリティ社会への貢献、実際に使われている冬季道路管理の最適化例などを挙げ「ソリューションビジネスを加速するデジタルトランスフォーメーションで、ひとつ先の時代を目指しています」と講演を締めくくった。

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