科学技術計算のための統合開発環境として、さまざまな産業におけるデータ解析やモデリング業務を支えているMATLAB/Simulink。同製品を提供するMathWorksが主催する、年に1回のユーザーイベント「MATLAB EXPO 2016 JAPAN」が、10月19日に「グランドニッコー東京 台場」で開催される。毎年1,500名を超える参加者が集う人気カンファレンスだが、今年は、IoTやAI、ロボットなどへの期待の高まりを受けて、さらに活況を呈しそうだ。本年も、イベントのテーマ選定などを指揮するMathWorks Japan インダストリーマーケティング部 マネージャーの阿部悟氏へのインタビューから、同イベントの見どころについて紹介しよう。

昨年開催の「MATLAB EXPO 2015 Japan」の様子。本年も、グランドニッコー東京 台場にて10月19日に開催される。
参考:昨年開催「MATLAB EXPO 2015 Japan」講演レポート

「融合とシンプル」をテーマにMATLAB/Simulinkの最新動向を紹介

MATLAB/Simulinkは近年、データアナリティクスやIoT、機械学習、ディープラーニング、AIなどへの期待の高まりを受け、これまで以上に活用領域が広がっている。

MathWorks Japan インダストリーマーケティング部 マネージャー 阿部悟氏

阿部氏は、MATLAB/Simulinkを巡る状況の背景を、「さまざまな技術の融合が進み、どの技術をどこにどう使うかという方向性が明確になってきた」と分析し、次のように説明する。

「最新の技術キーワードが、ようやく『地に足がついてきた』というのが率直な印象です。たとえば数年前に『ビッグデータ』がキーワードになったときは、コンセプトが先行するあまり実際に何に取り組んでいいかわかりにくいところがありました。ただ、この2年くらいの間に一気に話が具体的になりました。IoTだったらこう、ディープラーニングだったらこう、という、はっきりとしたアプローチが可能になったのです。」(阿部氏)

たとえばディープラーニングについては、すでにMATLABで「畳み込みニューラルネット(Convolutional Neural Network: CNN)」や「リカレントニューラルネット(Recurrent Neural Network)」といった機能がツールボックスとして簡単に利用できるようになっている。そして、こうしたディープラーニングの機能を画像処理の「Image Processing Toolbox」や、映像解析の「Computer Vision System Toolbox」などと組み合わせることで、センサーデータと機械学習を使ったIoTシステムの構築なども簡単に構築できる。

参考:「話題」で終わらせない - ディープラーニングの活用をMATLABではじめる
          http://news.mynavi.jp/kikaku/2016/06/17/002/

「実際、さまざまな業界のお客様がIoTやディープラーニングなどの取り組みを進めていらっしゃいます。MATLAB EXPO 2016では、そうしたお客様の事例をあますところなく紹介します。基調講演をはじめ、テーマごとに分かれた計8トラックでのセッションから、MATLAB/Simulinkの最新動向とお客様の最新の取り組みをご覧いただく予定です。」(阿部氏)

こうした現在の状況を踏まえ、2016年の同イベントでは、2つのコンセプトを掲げているという。1つが「融合」だ。領域をまたがって技術の活用が進み、これまでにない価値が生まれつつある。そうした新しい価値をどう生み出していくのか、実際の事例を多数紹介する予定だ。

もう1つのコンセプトは「シンプル」。領域をまたがって技術を活用しようとすると、同時に複雑さも増していく。それに対し、MATLAB/Simulinkでは、UX/UIからアーキテクチャまで、誰にでも使いやすい製品として提供することに力を入れている。新しいデザインが新製品にどう反映されているかを紹介する予定だ。

「Release 2016b」リリースハイライト公式Web。2016年の新規リリースでは、阿部氏の言葉通り、技術を「融合」し、それらを「シンプル」に扱える機能やUIの拡張がなされていた印象だ

基調講演には革新知能統合研究センター長の杉山将氏が登壇

そうした融合とシンプルを象徴するような取り組みの1つがAIだ。いまやAIは自動車や産業用ロボット、医療、コンシューマ向けサービスなど、さまざなシーンに適用されつつある。企業はAIをどう考えていけばいいのか。

そこへの大きなヒントを提供すべく、基調講演には、機械学習などの基礎理論で国際的に活躍するAI研究の第一人者、杉山将氏が登壇する。杉山氏は、東京大学大学院 新領域創成科学研究科 教授で、4月から理化学研究所に新設された革新知能統合研究センターのセンター長を務める人物だ。

革新知能統合研究センターは、文部科学省が進めるAIP(Advanced Integrated Intelligence Platform Project)に基づいた国内最大級のAI研究拠点だ。世界的なAI関連国際会議であるNIPS(Neural Information Processing Systems)ではアジア初のプログラム委員長などを務めた杉山氏が初代センター長として着任した。

杉山氏は「人工知能研究の現状と今後の展望」と題し、AIおよびそのコア技術である機械学習の研究分野を概観するとともに、革新知能統合研究センターが目指す方向性について述べる予定だ。

基調講演「人工知能研究の現状と今後の展望」の概要。詳細はこちらからもご覧になれる

AIへの期待の高まりとともに、杉山氏自身のスケジュールも逼迫し、講演を聞く機会は減っている。いまこのタイミングで同氏の考えやこれからのAIのあり方、そして、革新知能統合研究センターが何に取り組もうとしているのか。これらを知るにはまたとない機会となる、ぜひ足を運びたいところだ。

基調講演に続くMathWorksのLoren Shure氏の講演では、「アナリティクスドリブン」をキーワードに、MATLAB/Simulinkの最新事例を紹介。さらに、そこへ続くセッションでは、MathWorks Japanの大谷卓也氏と宅島章夫氏が「MATLAB and Simulink最新情報」と題し、R2016aとR2016bのリリースハイライトを中心に、アドオン製品を含むMATLAB/Simulinkの最新情報を紹介する。

7つの公開トラックでユーザーの最新事例を紹介

阿部氏が「地の足のついた取り組み」と評するようにMATLAB/Simulinkユーザーの取り組みは、着実に成果を上げている。イベントではそうしたユーザー事例を例年以上にふんだんに盛り込み、いま起きつつあるダイナミックな企業の取り組みの動きを肌で知ることができるようになっている。

公開トラックは、「A: 入門」「B: 設計・検証ワークフロー」「C: 機械学習/ディープラーニング」「D: データアナリティクス/IoT」「E: ADAS/ロボット/メディカル」「F: EMS」「G: アプリケーション」、そこへ教職員限定のトラック「H: 教育事例」を加えた計8つ。各トラックのテーマを見ると、さまざまな技術の融合が進み、業種をまたがった革新が起きていることがおわかりいただけるだろう。

たとえば、これまでは「メディカル」や「自動車」といったように、業種業界ごとに1つのトラックを構成するケースがあった。しかし、今年は、教職員限定となる教育事例のトラックを除くと、そうしたトラックは用意されていない。これは、技術が業種業界をまたがって利用されるようになり、他業界の知見やノウハウを自業界でも生かそうという取り組みも活発化している表れだろう。

実際、自動車の自動運転で使われるような画像認識技術は、医療分野やロボット分野でも有用であり、その逆も同様だ。トラック構成について、阿部氏はこう話す。

「各トラックのテーマはすんなり決めることができました。技術の融合が進み、業界を超えて共通の課題が見えてきたことが背景にあります。たとえば、モデルベースデザイン(MBD)やデータ解析のアプローチは、どんな業界においても有効です。お客様の間でそうした理解も広がっています。全体を通して、従来より幅広い層の方を対象にしていることが大きなポイントです。A: 入門トラックから、G: アプリケーショントラックまで、ユーザーの事例を中心にした興味深いセッションを取り揃えました。」(阿部氏)

各トラックの内容は、次回の記事で詳しく紹介する予定だ。まずは、来る10月19日に向けて、下記リンクなどから「MATLAB EXPO 2016」の内容を確認いただきたい。

10月19日に開催される「MATLAB EXPO 2016」【詳細・申込はこちら】

MATLAB 2016_総力特集
   1回目:基調講演に革新知能統合研究センター長杉山氏 - 10月19日開催「MATLAB EXPO 2016」の見どころは」(本記事)
   2回目:10月初旬公開予定


(マイナビニュース広告企画:提供 MathWorks Japan)

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