東北地方の高速道路における保全業務を担うネクスコ・メンテナンス東北には、15の事業所がある。そのひとつである十和田事業所は、東北自動車道の安代IC(岩手県)から秋田県を通り、碇ケ関IC(青森県)までの66.1kmを担当している。そこでは、補修、災害や事故の復旧、植栽、除雪、サービスエリア(SA)やパーキングエリア(PA)の清掃などが日々の業務となっており、さまざまな場面でiPadが利用されている。
短い準備期間で8つの機能を備えたiPadソリューションを運用開始
2013年3月、各事業所にiPadが1台ずつ配備されたことを機に、十和田事業所では業務改善を目的としiPadを業務に生かす取り組みがはじまった。すぐに、事業所の社員全員分にあたる7台のiPadを追加導入し、現場で撮った写真をiCloudで共有することからスタート。さらに、情報共有や業務の効率化を図る方法を検討する中で、所長の伊藤和明氏が選択したのがFileMakerだった。他社の導入事例ビデオを見て、これなら短期間かつ容易に導入できると確信したという。
同年7月には、ファイルメーカー社のセミナーで講師として登壇し、iPadのビジネス導入事例を紹介していた寿商会に開発を依頼し、同社代表取締役社長の若林孝氏との打ち合わせがはじまると、12月には、8つの機能を備えたソリューションの運用が始まった。
2015年6月時点、8つのソリューションはFileMaker Serverで共有ホストされ、25台のiPadにインストールされたFileMaker Goから接続して運用している。このほか、集計レポートの作成をパソコンで行うために FileMaker Pro も利用している。
現場の状況を素早く共有できることが安全につながる
高速道路における保全業務には、“万が一”があってはならない。そのため、重大な事故や災害を未然に防ぐためには、ネクスコ東日本とグループ会社の社員が常に目を光らせ、細心の注意を払いつつ日々の業務を遂行している。その中でネクスコ・メンテナンス東北の社員と作業員はiPadを活用して危険な事象を常日頃から共有・監視することが非常に重要となっている。
そこで十和田事業所では、こうした事故や災害につながるおそれのある事象を蓄積するための「ヒヤリハット記録システム」を導入している。このシステムは、重大なトラブルには至らなかったけれどヒヤリとしたりハッとしたりする事象を情報共有し、蓄積するものだ。そのため、作業員はより迅速かつ適切な処置を施すことができ、安心・安全な保全業務の実現を可能としている。
その他、「安全巡回記録システム」や「現場点検報告システム」も同様で、状況を素早く入力して情報を共有できる。現場の写真や図面なども保存できるようになっている。
現場の様子を写真で逐一記録していく。撮影した写真はiCloudにアップロードされ、関係者に共有される |
現場では通信回線の状況が良くないこともあるため、iPad上に保存した写真を後からFileMakerのオブジェクトフィールドに入れることが多い |
また、このようなソリューションの利用用途は、記録の入力や写真撮影だけではない。たとえば「あの修復箇所はどうなった」という問い合わせを受けた場合、以前は事業所のコンピュータの前に戻るまでわからなかったが、今はiPadで写真も含めてその場で確認できる。このようにどこにいても検索や閲覧ができることで、情報共有や報告業務などの大幅な効率アップに寄与している。
スタッフの安全、データ集計、円滑なコミュニケーションなどメリットは大きい
FileMakerソリューションの導入を積極的に推進した理由のひとつとして伊藤氏は、「以前、SAの「エリアSAPAっ人(えりあさぱっと)」さん(東北のSA・PAの清掃員の愛称※)が急病で倒れてしまうという出来事がありました。しかし当時は、それをすぐに知るすべがなかったため、人の動きや現場の状況を共有するシステムを早急に作らなければと思い、『清掃員安全管理システム』を構築しました」と、開発の背景を語る。
※「エリアSAPAっ人」(えりあさぱっと)とは、株式会社ネクスコ・メンテナンス東北がトイレの清掃員さんの愛称を社員から募集して決定したネーミング。北東北の方言で「さぱっと」⇒「きれい」の意味。
清掃員安全管理システムでは、「エリアSAPAっ人」が自身の出退勤を記録するほか、作業内容、トイレットペーパーの使用量、日誌も、随時入力している。
「以前は月末に手書きの作業記録用紙を集め、Excelのワークシートに入力していました。それに3日もかかっていたのです。今ではFileMakerのソリューションにすべて保存されていますから、「エリアSAPAっ人」さんの勤務台帳の作成も、トイレットペーパーの使用量集計も、いつでもすぐにできます。用紙からExcelに転記入力の作業をしていた社員には別の仕事をしてもらえるようになりました。それに、1か月前の日誌を読んでも対応できないことが多いし、正直なところピンとこないですよね。今はリアルタイムで日誌も見られるので、素早く対応でき、コミュニケーションの風通しも良くなっています」(伊藤氏)
話をうかがった「エリアSAPAっ人」の方は、ここでの仕事を始めて1か月半ほどとのこと。「最初は、このようなシステムがあることに戸惑いました。iPadを使うのは初めてでしたが、まわりの方に使い方を教えていただくうちに慣れましたね。書類を手書きするより楽ですし、日誌もすぐ見てもらえるのでありがたいです。何かあった場合でも、電話は相手の都合などを考えるとかけづらいですが、iPadで日誌に書けばすぐに伝わります」と、抵抗なく有効に使いこなしている様子だった。
十和田事業所での実績を受け、ネクスコ・メンテナンス東北の本社やほかの事業所にも同様のソリューションを導入する構想があるそうだ。さらに東北以外の関連会社に紹介したり、高速道路の建設・管理技術に関する展示会に出展したりする予定もあるという。
「ほかの事業所や他社にも広がって、さらに組織横断的な情報共有が進むかもしれません。今後どのようになっていくか非常に楽しみです」と伊藤氏の期待は大きい。
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