ワンストップによる製品提供でニーズに応える

デルといえば個人向けPCやビジネスPC、サーバー、ストレージなど、基幹ハードウェアに強い企業というイメージがある。個人で同社製PCを購入したり、会社から支給されたPCが同社製品だったりする人は、なおさらそのようなイメージを強く抱くことだろう。だが、同社は近年、クライアントPCやサーバーなどのITハードウェアだけでなく、ソフトウェア、ネットワーク、プリンタ、プロジェクタといった周辺機器にも積極参入し、クラウド環境の構築はもとよりデータセンターサービスの提供なども視野に入れた、ビジネス全体を支えるトータルITソリューションベンダーへと進化を続ける。目指す姿は、企業のあらゆるニーズに合わせたITインフラ環境とソリューションを一括提供できる、希有なワンストップ・ソリューション・プロバイダーだ。

そんなデルが特に注力している事業領域の1つに、SMB(スモール・ミディアム・ビジネス)市場向けイメージング・ソリューションが挙げられる。今回は、その事業領域に対して、同社がどのようなビジョンを掲げ、現状どのような施策を実施しているかなど、キーパーソンに話をうかがってきた。

デル コンシューマ & SMBマーケティング事業本部ブランドマネージャの河田浩行氏は、まずこう前置きした。

デル コンシューマ & SMBマーケティング事業本部ブランドマネージャの河田浩行氏

「デルの最大の特徴は、お客様の事業規模に合わせて自社の事業体を編成し、ニーズに合わせたきめ細かいソリューションを一括して提供できるところです。ラージエンタープライズ、SMB、個人ユーザーから公共事業に至るまで、多種多様な市場へ効果的なリーチが行えるようリソースを適正配置しています。特に日本における全企業数の約98%以上を占めるSMB市場は、弊社にとって戦略上特に重要であり、この領域に他社には真似のできない効果的なソリューションを提供することは、我々にとって大きな命題です」

さらに河田氏は、以下のようにも続ける。

「SMBのお客様にとってデルのソリューションを導入いただくことは大きなメリットと考えています。たとえばコスト面などの理由で専任のシステム管理者を設けることが困難な事業所の場合、必要な仕様に関しての適切な判断基準がなく外部委託に頼らざるを得なくなり、結果コストに跳ね返ります。ですが、弊社の一貫したサポート体制を活用していただければ、適切な判断基準に基づく機器構成によりそのコストは適正化できるのです。さらにはPCからプリンタ、サーバー、ストレージ、ネットワーク機器など手がける製品ジャンルが広いため一括しての導入が可能となり、ワンストップでソリューションを導入できることもコスト圧縮につながります。こうしたことから、弊社の提供するソリューションがSMBのお客様のお役に立てるのではないかと思います」


このように、SMBの企業ニーズをしっかりと把握し、最適化したソリューションを提供できるビジネスモデルがデルの強みだろう。事実、河田氏は、少しずつではあるがSMBのユーザーが同社のSMBに特化したソリューションビジネスを認知し始めていると、その手応え感じているようだ。

A4プラットフォーム機による分散型出力環境の構築を提案

では、SMB向けのイメージング・ソリューションとして、デルはどのような戦略を描いているのだろうか。デル コンシューマ & SMB事業本部SnP事業部 オフィスイメージング事業開発 担当部長の久次要氏は「分散型出力」、さらには「モバイルワークプレース環境での出力と文書管理」だと、そのキーワードを挙げた。

デル コンシューマ & SMB事業本部SnP事業部 オフィスイメージング事業開発 担当部長の久次要氏

「日本のオフィス環境では、大企業のワークグループに限らずSMB市場において、大型複合機を中心としたイメージング・ソリューションが主流を占めてきました。例を挙げると、増加し続けるオフィスの印刷需要に対応するため、複数台の集中型複合機を導入したり高額なA3プリンタを追加購入したりする事業所が数多く見られました。これではあらゆるコスト、たとえば『機器導入コスト』のような見えるコストや『設置スペースコスト』『トラベリングコスト』『ウェイティングコスト』といった目に見えないコストで、無駄が発生してしまっています。トラベリングコストは、デスクから出力機まで移動するためのコスト、ウェイティングコストは、前のユーザーの出力が終わるまで待たなければならないコストです」


さらに久次氏は、集中型出力環境での情報セキュリティリスクについても、以下のような警鐘を鳴らす。

「たとえば、複数のユーザーで大型複合機を共有する出力環境では、機密性の高い文書の印刷には細心の注意を払わなければなりません。同じ企業内でも出力者以外のユーザーに機密内容が漏洩する可能性が高いということは、企業コンプライアンスを脅かす危険性と背中合わせです。分散型出力環境の構築はワークグループやユーザー単位に出力環境を細分化し、機密文書が当事者以外にわたるリスクを低減する一つの解なのです。デルは、日本市場への参入以来A4レーザープリンタによる分散出力環境の構築を提唱し続けており、コスト削減とコンプライアンス保護双方の観点からお客様の課題を解決する効果的なソリューションを提供しています」

分散化出力環境のイメージ図。左のように大型複合機を複数部門・複数ユーザーで共有し、すべての文書を集中出力すると、機密文書が当事者以外に流出しかねない。一方、ワークグループやユーザー単位に出力を分散させることで、機密文書は分散プリンタで、一般文書の大量印刷は大型複合機やA3プリンタへと振り分け、機密情報の漏えいリスクは低減できる