2025年11月、GoogleがAIエディタ「Antigravity」を公開しました。Antigravityを使うと、AIエージェントが自律的に、プログラムを作成したり、ブラウザを操作したりと、さまざまなタスクを実行させることができます。今回は、Antigravityを利用して、簡単なノイズジェネレーターを作ってみましょう。
Antigravityとは?
Google Antigravityとは、AIエージェントを主体とした次世代型の統合開発環境(IDE)です。人がプログラムを書いて、AIがそれを補助するのではなく、「AIエージェント」が主体となるツールです。
Antigravityを利用すると、AIエージェントがアプリ開発の流れ(設計・実装・テスト)を自律的に実行してくれます。その過程で、エージェントは、アプリ開発で必要となる「エディタ」「ターミナル」「ブラウザ」といったツールを自在に操作して、開発を進めてくれます。つまり、単なるコード補助ではなく、アイデアを形にするまでの流れをAIに任せることができるのが、メリットとなっています。
また、アプリを開発するまでの過程を全て記録してくれるのも、Antigravityのメリットです。次の画面は、今回作成したノイズジェネレーターの作成過程を確認しているところですが、ユーザーがどんなプロンプトを書いたのか、そして、それを受けてAIエージェントがどんな実行計画書を書いて、そこからどのようなプログラムを作ったのか、また、実行画面はどのようなものになったのかまで、記録してくれます。
特に、ブラウザの実行画面をキャプチャして、実行画面のビデオを作ってくれる機能があるのは興味深いです。また、現在開発されるアプリの多くが、ブラウザベースであることを考えると、ブラウザを自動操作する機能があるのは、大きなメリットと言えます。
Antigravityのダウンロード
最初に、「Antigravity」のダウンロードとインストール、初期設定の方法を確認してみましょう。「Antigravity」は、こちらからダウンロードできます。OSを選んでインストーラーをダウンロードしましょう。
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AntigravityのWebサイト
Antigravityのインストール
Antigravityは、MicrosoftのVisual Studio Code(通称VSCode)をフォークしたものです。そのため、VSCodeに慣れた人であれば操作に困ることはないでしょう。ダウンロードしたインストーラーを実行して、Antigravityをインストールしましょう。
設定は、初回起動時に行われます。次のような画面が出るので、右下の「Next」ボタンを押して、項目を確認しつつ設定を完了させましょう。エディタの色などの選択が可能です。好きなデザインを選びましょう。選択したら、右下の「Next」ボタンを押していきます。
設定で迷いそうなのは、AIエージェント機能の設定です。次のような画面が出ます。基本的にはオススメの設定(RECOMMENDED)の「Agent-assisted development」を指定しましょう。この設定は後からでも変更できます。設定が一通り終わると、Googleアカウントでログインするボタンが出てくるので、ログインしましょう。
Antigravityを日本語化しよう
基本設定が終わったら、エディタの日本語化を行いましょう。VSCodeと同じで、日本語化をするには、「Japanese Language Pack」というExtension(拡張)をインストールします。画面左側(一番下)にある「Extensions」のボタンをクリックして、「japanese」と検索すると、「Japanese Language Pack」が見つかるので、「Install」のボタンを押しましょう。実際に日本語化するためには、Antigravityを再起動する必要があります。
ブラウザ拡張をインストールしよう
Antigravityでは、ブラウザを自動操作できるのもメリットの一つとなっています。Chrome拡張の「Antigravity Browser Extension」を、こちらからインストールしましょう。
新規プロジェクトを作成しよう
Antigravityをインストールしたら、さっそくアプリを開発してみましょう。Antigravityは、1つのフォルダを1つのプロジェクトと見なします。
そこで、画面上部のメニューから「ターミナル > 新しいターミナル」を選んでクリックして、ターミナルパネルを表示します。ターミナルが起動したら、プロジェクト用の新規フォルダを作成しましょう。
今回は、ノイズジェネレーターを作ろうと思いますので、「noise_generator」というフォルダを作成します。なお、ノイズジェネレーターとは、「ザー」とか「ガー」といった機械的な雑音を作成するツールです。自宅などで、集中して作業したい時に、環境音として流すことができます。
それでは、作業を開始しましょう。ターミナル上で以下のコマンドを実行しましょう。すると、新規でAntigravityが起動し、「noise_generator」のプロジェクトを開きます。
# プロジェクトのフォルダを作成
mkdir noise_generator
# Antigravityで作成したフォルダを開く
antigravity noise_generator
なお、初回起動時には、このフォルダを開いて良いかどうか確認画面が出るので、「作成者を信頼します」のボタンをクリックします。
エージェントマネージャーから指示をしよう
Antigravityの最上部・右側にある「Open Agent Manager」のボタンを押すと、エージェントマネージャーが起動します。それで、マネージャーの左側にある「Start conversation」をクリックして、何を行いたいかを入力します。
ここでは、次のようなプロンプト(指示)を入力してみましょう。
ブラウザで動作する環境音(ノイズ)ジェネレーターを作りたいです。
いろいろなノイズを作成するボタンやスライダーを配置して、
パラメーターを調節できる機能が欲しいです。
プロンプトを与えると、エージェントがアプリ開発の計画を作成し、計画に沿ってプログラムを作成してくれます。なお、全部英語になってしまったので「日本語で教えて」とタイプすると、ポイントを日本語にして教えてくれます。
ここまでの部分で、ブラウザで動作するアプリが完成しました。先ほど作成したフォルダ内に作成されたHTMLが保存されます。筆者の環境では「index.html」というファイルが作成されていました。これを、ブラウザにドラッグ&ドロップして、ブラウザで開くと、次のようなアプリが表示されました。
スライダーを適当に動かして、再生ボタンを押すと、いろいろなノイズが再生されます。このように、わずか3行の指示で簡単なアプリが完成できます。
アプリを改良してみよう
とは言え、もうちょっと複雑なノイズが欲しいところです。そこで、改めて「Start conversation」をクリックして、次のようなプロンプトを指定してみましょう。
もっと波形を自由に合成できるようなものにしてください。
オシレーターやフィルターの機能を追加してください。
追加の要望を送信すると、計画を立てて、アプリの開発をはじめてくれます。
そして、次のようなアプリが完成しました。作成されたHTMLファイルをブラウザにドラッグ&ドロップして、作成されたアプリを試してみましょう。実行すると、次のように、パラメーターが増えて、作成できるノイズの幅が増えました。
なお、今回作成したノイズジェネレーターは、こちらで見ることができます。
まとめ - Antigravityの良い所
本連載では、これまで、Gemini CLIなどコマンドラインから使えるAIエージェントを使って、いろいろなツールを作ってきました。もちろん、これらのコマンドラインツールは手軽で便利なのですが、Antigravityを使うと、エージェントがどんな作業をして、どんなプログラムを作ったのかを、すべて確認できます。

エージェントが作成したり編集したりするソースコードはもちろんのこと、どのような開発計画を立てたのかも記録されるので、エージェントの動きを把握しやすいのがメリットです。
このように、AntigravityはAI統合開発環境として強力なツールです。今後も、Antigravityの使い方を紹介していきますので、お楽しみに。
自由型プログラマー。くじらはんどにて、プログラミングの楽しさを伝える活動をしている。代表作に、日本語プログラミング言語「なでしこ」 、テキスト音楽「サクラ」など。2001年オンラインソフト大賞入賞、2004年度未踏ユース スーパークリエータ認定、2010年 OSS貢献者章受賞。これまで50冊以上の技術書を執筆した。直近では、「大規模言語モデルを使いこなすためのプロンプトエンジニアリングの教科書(マイナビ出版)」「Pythonでつくるデスクトップアプリ(ソシム)」「実践力を身につける Pythonの教科書 第2版」「シゴトがはかどる Python自動処理の教科書(マイナビ出版)」など。









