3月1日、マイクロソフトの新しいサーバOS、Windows Server 2008が発売になった。現時点ではまだ、ボリュームライセンスを利用しているユーザーなど、限定的な範囲にしか出回っていないが、4月には一般向けの販売も始まる予定となっている。

Windows Server 2008が掲げる改良点は多岐にわたるが、本連載ではまず、サーバ管理者にとってもっとも身近な存在である管理ツール関連の改良点について取り上げよう。

何が変わったのか?

Windows 2000 Serverでは、さまざまなサーバ機能を提供するコンポーネントの組み込みにはコントロールパネルを使い、そのサーバ機能の管理には[スタート]-[プログラム]-[管理ツール]以下にある各種の管理ツールを個別に呼び出す方式をとっていた。

続くWindows Server 2003では[サーバーの役割管理]ツールが加わり、主要なサーバ機能の追加、削除を行う窓口となっていた。また、[サーバーの役割管理]ツールには、組み込んだ機能を対象とする管理ツールの呼び出しや、ヘルプ画面などへのリンクも用意してある。

しかし、すべてのサーバ機能を[サーバーの役割管理]で扱っているわけではなく、ものによっては従来と同様にコントロールパネルを使って追加、削除を行っていた。管理ツールについては、[スタート]メニューの直下に[管理ツール]を表示させることで呼び出しを容易にしているが、これも[サーバーの役割管理]が対象にしている機能では[サーバーの役割管理]から呼び出せるため、手順が複数存在していたことに変わりはない。つまり、利用するサーバ機能によって操作方法が異なるため、ユーザーにとっては煩雑な状況になっていたといえるだろう。

役割の追加や削除を行うWindows Server 2003の「サーバー構成ウィザード」

Windows Server 2003の[サーバーの役割管理]ツールは、対象とする機能に限りがあった。一覧にない機能については、Windows 2000 Serverと同様にコントロールパネルを使う。Windows Server 2008では、こうした問題点を整理した点が特徴といえる。そこで登場したのが、今回のテーマである[サーバーマネージャ]だ。

Windows Server 2008では、ログオンすると自動的にこの[サーバーマネージャ]を起動するようになっている。ただし、セットアップ直後のログオンでは[初期構成タスク]が起動する。初期構成タスクを次回以降のログオンで表示しないように設定すると、ログオン直後に[サーバーマネージャ]が起動する。また、初期構成タスクを終了させたときにも[サーバーマネージャ]が起動する。もちろん、[スタート]メニューからの起動も可能だ。

サーバーマネージャの画面構成(1)

[サーバー マネージャ]の画面は、左右に2分割した構成になっている。左側には[役割][機能][診断][構成][記憶域]と5種類のツリーがあり、そこで選択した内容に合わせて、右側に表示する内容が変化する。

役割とは、Active Directoryのドメインコントローラ、DNSサーバ、DHCPサーバなど、複数の機能を組み合わせて構成する主要サーバ機能を指している。それに対して機能とは、WINSサーバ、telnetクライアント、telnetサーバ、SMTP(Simple Mail Transfer Protocol)サーバなど、単独の機能として完結しているものを指す。

次回に詳しく取り上げる予定だが、Windows Server 2008では「不要な機能は組み込まない」という考え方をWindows Server 2003よりも徹底しており、何らかのサーバ機能を利用する場合にはそのほとんどで役割、あるいは機能の追加を行う必要がある。そして、役割や機能の追加を行うと、それに対応するMMC(Microsoft Management Console)管理ツールのスナップインも組み込まれて、それが[サーバーマネージャ]に現れる仕組みだ。

以下に示したのは、役割[Active Directoryドメインサービス]を追加してActive Directoryのドメインコントローラとして構成した状態の[サーバーマネージャ]だ。

[サーバーマネージャ]の画面表示例(ドメインコントローラの場合

上の画面例では、ツリー最上階層の[サーバー マネージャ]を選択している。この場合、コンピュータ名、ドメイン名、IPアドレスなどのコンピュータ情報と、ファイアウォールやWindows Updateなどのセキュリティ情報で構成される[サーバーの概要]、インストールした役割の一覧の[役割の概要]、インストールした機能の一覧の[機能の概要]、エラー報告、TechCenterやコミュニティへのリンク、フィードバック送信などの[リソースとサポート]といった内容を表示する。

サーバーマネージャの画面構成(2)

一方、左側のツリー画面で[役割]以下のツリーを展開すると、ドメインコントローラであれば、Active Directory関連の管理ツールが加わっているのが分かる。具体的には[Active Directoryユーザーとコンピュータ]、それと[Active Directoryサイトとサービス]だ。ただし、[Active Directoryドメインと信頼関係]は加わっていない([スタート]-[管理ツール]以下から呼び出せる)。

初めて[サーバーマネージャ]に接した際にまごつく可能性があるのは、左側のツリー画面で選択した場所によって、画面右側の表示内容が変わる点だろう。今度は、[役割]を選択したときと[Active Directoryユーザーとコンピュータ]を選択したときの、画面表示内容の違いを見てみよう。

[サーバーマネージャ]左側のツリー画面で、[役割]を選択したときの画面例

[サーバーマネージャ]左側のツリー画面で、[Active Directoryユーザーとコンピュータ]以下のドメイン名を選択したときの画面例

このように、[役割]を選択したときには、組み込み済みとなっているすべての役割に関する情報が、画面右側に現れる。インストール済みの役割や機能の一覧、役割や機能の動作状況、管理ツールやヘルプの呼び出しといった内容になる。

さらにツリーを展開して、[役割]や[機能]の下にある各種の管理ツールを選択したときには、管理ツールの画面が現れる。これは、管理ツールに対応するMMCスナップインを[サーバーマネージャ]に組み込んで動作させているためだ。管理作業は、この状態で実施することになる。

こうして管理ツールにアクセスすると、Windows Server 2003と共通する管理ツールについては、画面の内容に大きな違いはないことが分かる。だから、従来と同じ機能であれば、管理ツールそのものの使い方を覚え直す必要はない。呼び出し方が変わるだけだ。

もっとも、従来と同様に[スタート]-[管理ツール]メニューも用意してあるので、そちらを使っても支障はない。とはいえ、管理ツール以外のさまざまな情報にもアクセスできる[サーバーマネージャ]の方が便利だろう。

サーバーマネージャへの集約

Windows Server 2008では、従来はそれぞれ独立した管理ツールになっていた[イベントビューア]や[コンピュータの管理]、[タスクマネージャ]などの機能も、[サーバーマネージャ]にまとめられた。これらは[役割]や[機能]とは別のツリーになっている。

[診断]以下には、イベントビューア、信頼性とパフォーマンス、デバイスマネージャといった、機器の構成管理やトラブル診断に使用するツールが現れる。その下の[構成]には、タスクスケジューラ、Windowsファイアウォール、サービス、WMIコントロールといった、サーバに対して何らかの設定を行うツールが現れる。下端の[記憶域]には、バックアップとディスクの管理を行うツールが現れる。

つまり、従来はいちいち個別の管理ツールを呼び出していたものを、Windows Server 2008では[サーバーマネージャ]に集約して、基本的な作業はすべてこれだけで対応できるようにしていることになる。一種のポータルサイトと考えればよいだろう。

次回は、役割と機能の追加、削除を行う手順について解説する。