前編に続き、後編では、ブログ/SNSウィジェットパートでの核心ともいえる

  • ブログパーツ・マーケティング成功の秘訣と課題
  • 2009年のトレンド: 解禁間近の「mixiアプリ」とは?

について詳しく説明していきます。

ブログパーツ・マーケティングが抱える課題と成功の秘訣

それでは、現状のブログパーツ・マーケティングが抱える課題と解決策に関して、有識者であるデジタル・アドバタイジング・コンソーシアム(DAC) メディア本部 第二メディア局 第一メディア部 CGMチームリーダー 佐藤允氏にコメントをいただきました。


――ブログパーツ・マーケティングにおいて、現状、課題はありますか?

デジタル・アドバタイジング・コンソーシアムの佐藤允氏

企業ブログパーツの供給数の増加にともない、一つひとつのブログパーツが目立たなくなっていることが最大の課題です。黎明期と違って、次々と新しいブログパーツがリリースされることで、ユーザーの選択肢も増え、結果として、各々のパーツの露出の減少とともに、目標貼付け数を獲得することが難しくなっています。

――具体的な解決策については、どのようにお考えですか?

「ブログパーツを配布するためのキャンペーン設計」を全体のプロモーション構成の中で企画することが必要だと考えております。ブロガーの特性を把握し、ブログパーツを貼ることで、ブロガーがどう楽しめるのか? またどういったメリットがあるのか? を分かり易く明示し、ストレスなくブログパーツを利用してもらうことができます。さらに、プロモーションの評価軸(貼付け数やimp数やClick数等)を事前に設定し、認知調査や効果検証を行うことで、どの導線でブログパーツを配布していくことが最も効果的なのか? といった解析結果を把握、ノウハウを蓄積していくことも重要です。


毎月多くのブログパーツがリリースされる背景のひとつに「比較的、低コストで制作できる」という点が挙げられます。ところが、リリースはしたものの、目標の貼付け数に満たないケースが多くなっています。課題解決のためには、ブログパーツの細かなコンテンツ企画に入る前段階で「ポジショニングとターゲット」を設定することが必要です。

その「ポジショニングとターゲット」ですが、大きく(A)タイプ(B)タイプに分類できます(下図参照)。

ブログパーツの「ポジショニングとターゲット

(A)タイプとは、「ブログパーツの機能やコンテンツをユニークなものにすることで、コンテンツそのものを話題にして一気に広げるタイプ」です。例えば、期間を決めてPRを行う、新作映画や消費財の新商品のPR等、継続性よりも、瞬間的なピークを重視するPRに適したものです。

(B)タイプとは、「Royalty(忠誠心)の高い既存顧客を保有している企業が、"ファン"ブロガーをパートナー化することで、新たな情報発信チャネル(タッチポイント)を構築するタイプ」です。例えば、アーティストや、ブランド力の高い企業/商品のPR等、最新情報と公式素材(画像や動画)をもとにブランディングと情報提供を行うことに適したものです。

現状(A)タイプが主流となっているのは事実ですが、昨今、自社顧客と手軽につながるツールとして(B)タイプの事例も増加しつつあります。さらに、2009年においては、ブログパーツ・マーケティングが進化していく中で、新しいタイプが増加すると考えております。それは「(A→B)進化/成長タイプ」です。

世界三大広告賞を全て受賞した「UNIQLOCK」(ユニクロ)

「(A→B)進化/成長タイプ」とは、コンテンツをベースに新規顧客にリーチ(=Aタイプ)し、ブロガー間で自律的に拡大することで、ブログパーツ(/コンテンツ)へのstickiness(執着性)が高まり、新たに"ファン"を獲得する(=Bタイプ)というものです。このタイプの代表的な事例に、世界三大広告賞を全て受賞した「UNIQLOCK」(ユニクロ)が挙げられます。 「UNIQLOCK」は、世界時計とダンス動画を組み合わせたユニークなコンテンツをもとに、自社サイトや店舗を利用する等、クロスメディアプロモーションを展開。さらに、コンテンツに変化を加えることで、利用者を飽きさせずに継続的な利用を促進させました。瞬く間に全世界で多くのブロガーにリーチすると同時に、メディアでの露出機会を増やし、最終的には「UNIQLOCK」というコンテンツそのもののブランド化とともに、"ファン"の醸成を実現しました。そういった意味でこのタイプの理想形であると言えます。

さらに、成功の背景で重要なことは「ブログパーツ・プロモーション設計」の存在です。

「ブログパーツ・プロモーションの設計」ではコンテンツ/配布パス/メディア露出の3項目での施策が重要

具体的には、<コンテンツ/配布パス/メディア露出>といった3つの項目において、プロモーションの目的に基づき、必要な要素が設定されているというものです。

つまり、前述の「ポジショニングとターゲット」の設定と、この「ブログパーツ・プロモーション設計」を組み合わせ、総合的なマーケティング・シナリオを描くことこそが、企業がブログパーツ・マーケティングを成功させるためのエッセンス(秘訣)なのです。

2009年のトレンド : 解禁間近の「mixiアプリ」とは?

前述のように、ブログパーツ・マーケティングが抱える課題のひとつに、いかに個人間でウィジェットを自律的に広げていけるか? ということが挙げられます。そういった中で、昨年末に、SNS「mixi」を運営するミクシィより、新たな事業戦略のひとつとして「mixi Platform」の開放が発表されました。

2009年のトレンドとして、より多くのユーザーにリーチが可能なmixi上でのウィジェット展開に対する期待は一気に高まっています。

そこで、mixi連携ウィジェット=新サービス「mixiアプリ」について、同社 mixi事業本部 企画部パートナーサービス企画グループ リーダー 真弓貴博氏に、サービス概要と今後の展開について、直接ご説明をいただきました。


――「mixiアプリ」とは、どのようなサービスですか?

mixiの真弓貴博氏

簡単に言うと「mixiアプリ」とは、外部のパートナー(個人も含む)がmixi上に、アプリケーションを提供でき、mixiユーザーがそれを自由に使えるサービスです。外部パートナーは「mixi内のデータ」を利用したソーシャルアプリケーションを制作することが可能です。

――「mixiアプリ」は、どこに表示されるのですか?

表示箇所は、「mixiのトップページ」(※自分が見る)、「プロフィールページ」(※訪問者が見る)、「mixiアプリ専用ページ」の3個所を予定しております。

――ユーザーは、「mixiアプリ」をどのようにして設定できるのですか?

ヘッダ部分に新たに「アプリ」メニューが追加される予定です。ここから「アプリ紹介ページ」にリンクされ、新着やオススメ、検索機能等でお好みのアプリを探すことができます。

――「mixiアプリ」を制作する際に利用できる、mixi内のデータとは?

現状では、次のデータを利用できるように準備を進めています。「ユーザープロフィール」「マイミクシィリスト」「参加コミュニティ」「足あと」「アプリの更新情報」「フォトアルバム」といった情報を予定しています。これ以外に、アプリごとのデータ保存機能や外部API通信機能等もご利用いただけます。

――「mixiアプリ」を導入した狙いとは?

外部のパートナーと協力してたくさんの新しいサービスを提供することで、1,500万人以上に上るmixiユーザーの、個々のニーズに合ったサービスを実現するためです。また、気に入った「mixiアプリ」を「プロフィールページ」に設定することで、マイミクシィとのゲーム対戦を楽しんだり、自分のページをパーソナライズしたりなど、コミュニケーションの活性化や利便性の向上にもつながると考えております。

――企業が「mixiアプリ」を提供するメリットとは?

mixiのソーシャルグラフを利用したソーシャルアプリケーションを提供するこで、「mixiアプリ」という新しい市場での収益化やマーケティングチャネルとしての利用が可能です。アプリの利用情報や更新情報が、利用者のマイミクシィにお知らせされる機能もあり、短期間で多くのユーザーにリーチすることも不可能ではありません。現状、1ユーザー当たりの平均マイミクシィ数は24人です。ひとりがアプリを使い始め、マイミクシィ24人にアプリが広がり、さらにそれぞれ×24人のマイミクシィに広がっていくと、第4世代ですでに33万人以上にアプリが広がるという計算になります。

――企業が「mixiアプリ」上で広告情報を表示することは可能ですか?

原則として、可能です。ただし、「mixiアプリ」ごとに画面いっぱいに展開できる「mixiアプリ専用ページ」での表示のみを想定しています。

――最後に今後の展開(/スケジュール)を教えてください。

すでに、「mixiアプリ」の仕様公開およびパートナー向けβ版利用のための申請受付を開始しており、当初の予想を上回り、すでに約200社の企業様よりお申込みをいただいております(※近々、説明会の開催も予定)。また、サービス公開のタイミングとしては、今春にオープンβ版の公開・正式サービスの提供開始を目指し、現在準備を進めております。


といったように、いよいよ今春には「mixiアプリ」を利用したウィジェットマーケティングが解禁となります。

日本人の国民性や米国との文化の違いから、ウィジェット普及に米国との違いが出るようにも思いますが、本質的にはSNSの特性を活かしたウィジェットが増えれば、一気にユーザーへの普及は促進すると考えています。すでに多くの企業が申込を行っているということからも期待の大きさが表れており、2009年の新たなトレンドとなることは間違いないと確信しています。

以上、前編・後編に渡り、「先行するブログ/SNSにおけるウィジェットマーケティングの現在と未来」について紹介して参りました。

次回のテーマは「本格化するPC常駐型ウィジェット・マーケティングの現在と未来」です。

著者プロフィール : 竹下直孝

2001年 ソニー株式会社に入社。インターネットサービスを手掛ける部門に属し、利用したコミュニティサービスに関する事業企画を担当する。2005年に有志で「新しいネットメディアの開発」をコンセプトに、ウィジェットサービス「FLO:Q(フローク)」プロジェクトを発足。06年10月にブログパーツサービスを、07年11月にはPCデスクトップ・ウィジェットサービスをリリース。2009年1月現在、ブログパーツはサービス全体で月間1.8億インプレッションを保有、独自の広告モデルを展開中。デスクトップウィジェットについても、昨年末に10万ダウンロードを突破し、本格的にビジネスメニューの提供を開始。さらに、1月から国内で発売されるパーソナルコンピューター「VAIO」の新機種に管理ソフト「FLO:Q Widget Manager」のプリインストールを開始した(※一部、機種を除く)。