5GでIoT向けの通信を実現する「RedCap」(Reduced Capability)の導入に向けた議論が、国内でも進みつつあるようです。RedCapの導入によって、4Gよりも高速大容量な通信を可能にしながらも、IoT向けらしい低消費電力を実現できるようになると見られていますが、国内での導入・普及に向けては、4Gの存在が非常に大きな壁となる可能性がありそうです。→過去の「次世代移動通信システム『5G』とは」の回はこちらを参照。
5Gの「多数同時接続」に向けた取り組み
5Gのサービスが始まった当初、5Gは「高速大容量通信」「低遅延」「多数同時接続」という3つの特徴を備えていることが大きな特徴とされていました。
そのうち高速大容量通信はサブ6やミリ波など高い周波数帯の活用で、低遅延はMEC(Multi-access Edge Computing)などでその実現が進められてきました。
しかし、多数同時接続、より具体的に言えば5GのIoT向け通信に関しては、技術標準化の面でも後回しされてきた経緯があります。ですがここ最近、そのIoTに向けた5Gの仕様となる「RedCap」に関する取り組みが国内外で大きく動いているようです。
RedCapは「Reduced Capability」で、直訳すれば能力の低下となるのですが、その言葉が示す通りRedCapは、低速度かつ低消費電力の通信が要求されるIoT機器のニーズに合わせ、非常に高い性能を持つ5Gの通信規格「5G NR」の性能を抑えた仕様ということになるでしょう。
4Gでも同様に、LTEの「カテゴリーM1」(Cat.M1)や「NB-IoT」など、性能を抑えてIoTのニーズに応える仕様が標準化されていたことから、5Gでも同様の動きが進んでいると捉えれば分かりやすいのではないでしょうか。
ただ、RedCapは5Gの通信技術を活用した仕組みということもあって、4Gよりも高速大容量通信が可能な点が大きな特徴となっています。
例えば、LTE Cat.M1はダウンロード・アップロードの通信速度が共に300kbps~1Mbps、NB-IoTは20~250kbpsとされていますが、RedCapでは最大通信速度がダウンロードで150Mbps、アップロードで50Mbpsとされています。
少量のデータを扱う「eRedCap」という仕様でも、最大通信速度は10Mbps程度とされており、やはりNB-IoTなどと比べると通信速度が非常に高速になっていることが分かります。
IoT機器も年々高度化が進んでおり、例えばIoTでニーズが大きい監視カメラなどは映像の高精細化が進んでいることから、今後4Gをベースとしたサービスの通信速度ではスムーズなデータのやり取りが難しくなることも想定されるだけに、5GをベースとしたRedCapの環境整備は今後非常に重要になってくるでしょう。