ソフトバンクは2023年12月22日に、同社初となる5Gに対応したレノボ・グループ製のChromebook「Lenovo 14e Chromebook Gen 3」を発売しました。→過去の「次世代移動通信システム『5G』とは」の回はこちらを参照。
ソフトバンクは2022年にも4Gに対応したChromebook「Lenovo 300e Chromebook Gen3」を発売していますが、5Gに対応したChromebookはどのような部分が変化しているのでしょうか。実際に使って確認してみました。
通信機能付きChromebookの第2段は5G対応に
5G時代に入り、スマートフォンやタブレットだけでなく、ノートパソコンにモバイル通信機能を直接搭載するケースが徐々に増えてきました。
近年、パソコンでもクラウドに直接接続し、メールやWeb会議などのコミュニケーションだけでなく、仕事に関するデータを扱う機会も増えていることから、テザリングなどを用いる必要なく、いつでもどこでも高速大容量通信が利用できるモバイル通信機能を標準で備えていることが、メリットに働くことは確かでしょう。
ノートパソコンへの通信機能搭載を積極的に進めているメーカーの1つに挙げられるのが、レノボ・グループです。
同社はOSに「Windows」を搭載した機種だけでなく、グーグルの「Chrome OS」を搭載したノートパソコン「Chromebook」にも通信機能を搭載するケースが増えています。実際、同社は2022年に、4Gによる通信機能を搭載した「Lenovo 300e Chromebook Gen3」をソフトバンクから販売しています。
そして、2023年12月22日、レノボ・グループはソフトバンクから、5Gを搭載したChromebook「Lenovo 14e Chromebook Gen 3」を発売し、国内でも5Gの通信機能を備えたChrobookが利用しやすくなったといえます。
今回、Lenovo 14e Chromebook Gen 3を発売前にお借りすることができたことから、実際に使ってその実力を確認してみました。
Lenovo 14e Chromebook Gen 3これは14インチディスプレイを搭載したChromebookで、実物を見るとノートパソコンとしては標準的なサイズ感。CPUには小型デスクトップパソコンや低価格ノートパソコンなどで人気となっている、インテル製の「Intel N100」を採用していますが、一方でRAMは4GB、ストレージは64GBです。
とりわけRAMに関しては、常時快適な操作を実現する上では8GBが欲しいところですが、コストとの兼ね合いでRAMを抑えるに至ったといえそうです。
-
Lenovo 300e Chromebook Gen3は14インチディスプレイを搭載したスタンダードなノートパソコンのサイズで、CPUには「Intel N100」を採用することで低価格と性能の両立を実現している
インタフェースを確認するとUSB Type-A端子が2つとHDMI端子、3.5mmのイヤホン端子が備わっています。パソコンとしてはやや少な目ですが、有線マウスや外部ディスプレイなどを接続できるので出先でのプレゼンテーションなどには活用できそうです。
常時通信はメリットだが高速通信の活用に限界も
Lenovo 14e Chromebook Gen 3はパソコンと言ってもOSはChrome OSですので、セットアップはAndroidスマートフォンに近く、Googleアカウントでログインして簡単な操作をするだけ。
起動から使い始めるまでの時間も非常に短く、それに加えて5Gによる通信機能を備えていることから、Wi-Fiを探すなどの手間も不要で場所を選ばず「Chrome」「Gmail」「Googleドキュメント」などグーグル関連のアプリを利用することが可能です。
加えてChromebookでは「Google Play」が利用でき、Android向けのアプリをインストールして使うことも可能。アプリによってはうまく動作しなかったり、快適に利用するにはやや設定が必要だったりすることもありますが、グーグルが提供するアプリ以外を使いたいときは非常に役立ちます。
-
Chrome OSにプリインストールされている「Chrome」などのアプリに加え、「Google Play」からAndroidアプリを追加して利用することも可能。写真ではChromeと、Android向けのテキストエディタ「Jota+」を同時に動かしている
通信機能に関しては、5Gの対応バンドはn3(1.7GHz帯)やn28(700MHz帯)など4Gから転用したもののほか、高速通信が可能なn77(3.7GHz帯)、そしてソフトバンクが免許を持たないn79(4.5GHz帯)にも対応。ミリ波のn257(28GHz帯)には対応しないものの、かなり広い帯域をカバーしているといえます。
対応するSIMはナノSIMで、SIMロックはかかっていないものの、ソフトバンクから販売されることを考えると、基本的にはソフトバンクの料金プランで利用する人が多いと考えられます。
すでにスマートフォンでソフトバンクの料金プランを契約しているのであれば、その容量をシェアできる「データシェアプラン」(月額1078円)を利用するのが便利ですが、そうでない場合は通信量に応じた「データ通信専用50GBプラン」(月額5280円)「データ通信専用3GBプラン」(月額1408円)を使う形になるのではないでしょうか。
Chromebookのスピーディーな操作感に加え、通信機能を備えたことで場所を選ばず快適に利用できる非常に使いやすいLenovo 14e Chromebook Gen 3ですが、弱点もいくつかあります。1つは重量が約1450gと重いこと。
自宅やオフィス内で持ち運ぶ分には問題ない重量ですが、モバイル用のノートパソコンは1kgを切るものが多いだけに、外に頻繁に持ち運ぶにはやや厳しい重量と感じてしまうのも確かです。
また、もう1つは実質的な前機種のLenovo 300e Chromebook Gen3にはあったタッチパネルによる操作、そして2-1n-1で利用できる仕組みがなくなっていること。
5Gの通信モジュールを搭載しながら7万1280円という価格を実現する上で、軽量化やタッチパネルの搭載などは難しかったのかもしれませんが、通信機能を備え外出先で利用しやすいことを考慮すると残念な点といえます。
さらに、通信機能に関してもローカルであまりデータを扱わず、ダウンロードやアップロードの必要性が薄いChrome OSであるが故に、5Gをフルに生かしにくい印象も受けます。
Chromebookは基本的にGoogle Workspace関連のアプリを利用することが主なので、インターネットに常時接続することが重要ではあるのですが、クラウド上での操作やり取りが多く通信速度をそこまで必要としないのです。
「Google Meet」や「YouTube」など映像を扱うサービスでは通信速度が求められますが、それ以外のアプリを使う際に5Gの高速通信を生かしづらいというのは惜しい点だといえるでしょう。Chromebookで5Gの活用を広げる上では、そのパフォーマンスを生かせるアプリやサービスの充実も求められるかもしれません。