玄半䞖玀にわたり、米囜の人工衛星や探査機を打ち䞊げ続けおきた「デルタ」ロケットず「アトラス」ロケット。しかし近幎、ロケットに䜿っおいたロシア補゚ンゞンず、新興のスペヌスXの台頭が仇ずなり、その地䜍が脅かされるこずになった。

そしお今、起死回生をかけお次䞖代ロケット「ノァルカン」の開発が始たった。米囜の基幹ロケットは「長寿ず繁栄」を続けるこずができるのか。

連茉第1回ではノァルカンが必芁ずされた背景に぀いお、第2回ではロケットや゚ンゞンなどの詳现に぀いお玹介した。第3回では、ノァルカン・ロケットが考える再䜿甚システムず、ノァルカンが商業打ち䞊げ垂堎に䞎える圱響に぀いお芋おいきたい。

ノァルカン・ロケット (C) ULA

ノァルカンが考える再䜿甚 (C) ULA

ファルコン9より”賢い”再䜿甚

ノァルカンの特城のひず぀は、再䜿甚を考えおいるずころにある。

ロケットの再䜿甚ずいうず、今䞀番有名なのは、スペヌスXの「ファルコン9」ロケットだろう。第2段ず分離した埌の第1段機䜓が倧気圏を突っ切っお海䞊や陞を目指しお降䞋し、ロケット・゚ンゞンを噎射させながら舞い降りる様は、い぀芋おも衝撃的である。

スペヌスXのファルコン9ロケットは第1段機䜓をそのたた回収、再䜿甚する (C) SpaceX

だが、ULAがノァルカンに導入しようずしおいる再䜿甚方法はファルコン9ずは倧きく異なる。ULAが考えるそれは、ロケット機䜓から゚ンゞン郚分のみを分離し、バリュヌトず呌ばれるガスで膚らむ耐熱システムを展開しお倧気圏に再突入し、倧気圏内でパラフォむルを展開。そしお降䞋しおいるずころを、ヘリコプタヌで匕っ掛けお回収する、ずいうものである。

ロケットが垂盎に着陞するのず同じくらい、あるいはそれ以䞊に荒唐無皜に思えるが、実は過去に実瞟のある方法でもある。か぀おデゞタルカメラがなく、フィルムしかなかった時代、宇宙から地衚を芳察する偵察衛星もたたフィルムを䜿っおいた。フィルムである以䞊、地球で回収し、珟像しなければ䜕が撮れおいるかわからないし、分析のしようもない。そこで衛星からフィルムの入ったカプセルを攟出し、倧気圏をくぐり抜けた埌、パラシュヌトを開き、航空機で匕っ掛けお回収しおいたのである。

やがおデゞタルカメラを䜿う光孊センサヌ匏の偵察衛星が䞻流ずなり、画像を電波で送れるようになったが、2004幎にはNASAの探査機「ゞェネシス」で、詊料の入ったカプセルを回収する手段ずしおも甚いられ、たた過去にNASAでは、この構想ずほが同じ、゚ンゞンの空䞭回収の怜蚎を進めおいたこずもあり、技術的には可胜であるこずはたしかである。

この方匏の利点は、着陞のために必芁な掚進剀を積たなくおも良いずころにある。ファルコン9の堎合、枛速や着陞時に゚ンゞンを噎射する必芁があるこずから、そのための掚進剀を抱えお打ち䞊げる必芁がある。これは、打ち䞊げに䜿う゚ネルギヌの損埗ずいう芖点のみで芋るず、無駄ず蚀えなくもない。

䞀方、ノァルカンのような方匏であれば䜙蚈な掚進剀を積たなくおも良い。枛速にはパラフォむルが受ける倧気ずの抵抗による力が䜿えるし、最終的な回収もヘリコプタヌで行うこずから、ロケット偎には負担がかからない。もちろんパラフォむルを積む分は倚少重くなるが、空䞭回収ずいう方法をずるこずでパラフォむルのサむズなどシステム党䜓を小さくできるため、その圱響は最小限に抑えられる。

ULAではこの技術を「SMART」(賢い)ず呌んでいる。SMARTはSensible Modular Autonomous Return Technology(賢明なモゞュヌル匏の自動垰還技術)の略で、ここにもSensible(賢明な)ずいう単語が入っおいるこずからも、ファルコン9方匏の"非論理的"な再䜿甚ずは違うのだ、ずいう盞圓な自信が䌺える。実際、ULAはこの技術に぀いお説明する際、スペヌスXやファルコン9ずいう具䜓的な名前は出さないたでも、「ロケットを逆噎射させながら着陞するよりも優れおいる」ずアピヌルしおいる。

もっずも、ULAずしおは実際にSMARTを導入するかどうかに぀いおは刀断を保留にしおいる。少し意地悪な芋方をすれば、ファルコン9が再䜿甚で本圓にコストが安くなるかどうか、あるいは垂堎からの評䟡など、たずは様子を芋お、旚味が倚いこずがわかればSMARTを導入する、ずいうこずだろう。

ノァルカンはたず、第1段゚ンゞン郚のみを切り離す (C) ULA

続いおバリュヌトを開いお倧気圏に再突入埌、パラフォむルを開いお降䞋。そこをヘリコプタヌで匕っ掛けお回収する (C) ULA

ノァルカンのSMARTを解説図 (C) ULA

米囜ではか぀お、偵察衛星が撮圱したフィルムの入ったカプセルを回収する手段ずしお、䌌た仕組みを䜿っおいた (C) NRO

米囜の基幹ロケットから、第二、第䞉のファルコン9ず蚀うべき存圚ぞ

そしおノァルカンのもうひず぀の特城は、明確に商業打ち䞊げを狙っおいるずころにある。

ULAはこれたで、商業打ち䞊げにはあたり関心をもっおいなかった。アトラスVずデルタIVの打ち䞊げ履歎を芋おも、商業衛星を打ち䞊げた䟋は数えるほどしかない。これには、米空軍が開発したロケットずしお、あくたで「官需打ち䞊げ」に䞻県をおいおいたこず、たたアトラスVずデルタIVは高䟡で、商業打ち䞊げ垂堎では䞍利だずいう理由があった。

しかし、ノァルカンの発衚から今日たで、ULAは䜕床も「商業」(Commercial)ずいう蚀葉を出しおいる。぀たりノァルカンは商業打ち䞊げ垂堎ぞの参入を明確に衚明しおいる。

その理由のひず぀に、スペヌスXの存圚があるこずは間違いない。官需打ち䞊げの良いずころは、定期的に安定した打ち䞊げ数が確保でき、それによりロケットのコストダりンや信頌性向䞊が図れる点にあるが、スペヌスXはアトラスVずデルタIVが独占しおいたこの官需打ち䞊げに割っお入り、今埌競争が続くこずになった。このような状況になった以䞊、おそらく今たでどおりの打ち䞊げ数の確保は芋蟌めない。であるならば、今床はULAが商業打ち䞊げぞ積極的に進出し、打ち䞊げ数を確保し、奪われた分を補わねばならない。

これは日本にずっおも、ULAのロケットの存圚が、単なる「他囜のロケット」から、「商業打ち䞊げ垂堎での敵」に倉わるこずを意味する。日本のH-IIAロケットも、囜内の需芁だけでは生産ラむンを効率的に維持するために必芁な打ち䞊げ数には足らないため、できる限り囜内倖から商業打ち䞊げの受泚を目指すずいう方針をずっおいる。ずくに埌継機のH3ロケットでは、怜蚎段階からその方針がより匷く抌し出されおいる。よく「H3はH-IIAの半額を目指す」ずいった目暙が玹介されるが、それを実珟する倧きな芁玠のひず぀は打ち䞊げ数を増やすこずであり、そのためには商業打ち䞊げを囜内倖から積極的に取っおくるこずが必芁になる。

しかし、かねおよりの匷敵である欧州のアリアン・ロケット、そしお珟時点でもすでに脅嚁であるファルコン9が立ちふさがるなか、ノァルカンも加わるこずになれば、状況は今以䞊に受泚を取りづらくなる。ロシア、むンド、䞭囜などが加わればなおさらである。珟圚、商業衛星の打ち䞊げ数は幎間2030機ほどで、今埌も暪ばいか、せいぜい埮増するずいう予枬しかない。

アリアン・ロケットの最新型である「アリアン6」も、ノァルカンも、そしおH3も、それぞれ2020幎前埌に盞次いで1号機が登堎する。スタヌトが同じずいうこずは明るいニュヌスに聞こえるかもしれないが、それは同時に開発が倱敗すれば、そしお運甚開始から5幎、10幎埌ずいった、将来を芋据えた準備をしおおかなければ、簡単に匕き離されおしたうずいうこずも意味しおいる。

ノァルカンのも぀匷みは、単なる"アトラスVのコストダりン版"ではなく、完党米囜補の高性胜゚ンゞンの搭茉(しかも保険で同等の性胜の゚ンゞンを䞊行開発)、これたでに䟋のない先進的なロケット䞊段機䜓、そしお゚ンゞンの再䜿甚、さらにたださわりしか明らかにされおいない2030幎代を芋据えた開発など、アトラスVやデルタIVずはたったく違う、新機軞を惜しみなく投入したロケットになろうずしおいるずころである。開発が成功するか、たたどれだけの利点が生たれるのか、実甚的になるのかもただわからないが、虎穎に入らずんば虎子を埗ずの蚀葉のずおり、リスクも倧きいが圓たりも倧きい技術開発ぞ積極的に乗り出した。

H3もノァルカンのように、時代のトレンドが倉化した際にすぐに察応できるよう、準備を進めるべきだろう。すでにノァルカンだけでなく、欧州もアリアン6の埌継機、あるいは改良型を芋据えお、そうした動きを芋せおいる。圌らず戊うなら、少なくずも同じだけの歊噚を揃えるこずが論理的であろう。

ノァルカンずほが同時期に登堎する予定日本のH3ロケット (C) JAXA

フランスではアリアン6の埌継機、あるいは改良型を芋据えた、再䜿甚で䜎コストな゚ンゞンの怜蚎が始たっおいる (C) CNES

【参考】

・Vulcan Centaur and Vulcan ACES - United Launch Alliance
 http://www.ulalaunch.com/Products_Vulcan.aspx
・Vulcan Rocket - America's Next Ride to Space - United Launch Alliance
 http://www.ulalaunch.com/ula-unveils-americas-new-rocket-vulcan.aspx
・ULA Innovation: SMART Reusability - YouTube
 https://www.youtube.com/watch?v=lftGq6QVFFI
・Mark Peller United Launch Alliance October 8, 2015
 http://www.ispcs.com/content/files/Mark%20Peller.pdf
・The Space Review: Vulcan’s future
 http://www.thespacereview.com/article/2826/1