前回、前々回と2回にわたって、UPS(無停電電源装置)とはどのようなものか、どうしてSMBでもUPSを備えなければいけないのか、そしてUPSの種類と選び方のポイントについて解説してきた。

最終回となる今回は、UPSの運用に欠かせない、UPSの動作をコントロールするUPS管理ソフトウェアを中心に、UPS運用時のポイントを解説することにしよう。

UPS管理ソフトで停電時などの動作を設定する

自社のオフィスにUPSを持ってきたら、いよいよ設定を行い稼働することになる。ここで必要となるのがUPS管理ソフトウェアだ。もっとも、製品によっては(例えば、これまで紹介したシュナイダーエレクトリックのSmart-UPSシリーズ)本体にLCDパネルを備えており、管理ソフトを使わなくても基本的な設定ができるものもある。それでも細かい設定についてはやはり管理ソフトを使った方が楽かもしれない。

では、管理ソフトを使うとどのようなことが可能になるのか。ここでは、シュナイダーエレクトリックが提供する業界標準のUPS管理ソフトウェア「PowerChute Business Edition」(以下、PowerChute)を例に説明してみることにしよう。

PowerChute Business Editionの画面

PowerChuteは、小規模、ブランチオフィス向けのサーバー・UPS管理ソフトウェアで、さまざまなOSのIT機器を自動的にシャットダウン(もしくは休止)/再起動することができる。管理できるIT機器は1台に限らない。管理対象のIT機器に「エージェント」と呼ばれるソフトをインストールすれば、1台のコンソールから25台までのエージェントを設定・監視・管理することが可能だ。

最も基本的な設定項目は、停電が発生してからどれぐらいの時間でシャットダウンするのか、そして電源が復旧してからどれぐらいの時間を経た後にUPSを立ち上げるかである。このシャットダウンまでの時間については、接続するコンピュータ機器のシャットダウンに要する時間などを参考にするようにしたい。また、OSのシャットダウンでは、シャットダウンのみの他に、シャットダウンと同時に電源もオフにする、もしくは休止状態にする、といったパターンを選択できる。さらには、OSシャットダウン時に任意の実行ファイルを実行するようことも可能だ。

PowerChuteの基本設定画面

また、オフィスビルでは配電盤など電気系統のメンテナンスのために定期的に停電することが多い。通常こうした停電は休日や深夜に行われるが、このような場合でも何も対処をしていなければサーバーやネットワーク機器が突然落ちてしまいトラブルの原因となりかねない。そこで、PowerChuteでは何月何日の何時何分に自動シャットダウンを行うといったスケジューリングによる電源管理にも対応している。

無駄な電力消費を抑える役割も

UPS管理ソフトの基本機能としては上記が主なものになるが、製品によってはそのほかにも工夫を凝らした便利機能が用意されているケースもある。

例えば、PowerChuteでは「電源イベント分析機能」を備えている。この機能により、頻繁にバッテリーへの切り替わりが生じていたり急激に電圧が下がっていたりといった電源に関する過去のイベントの発生状況を把握し、それらのイベントが周期的なものなのか単発的なものなのかを分析して原因究明や適切な対処の支援を行ってくれるのだ。

具体的には、管理コンソールの「ステータス」画面では、電源およびUPSに関する詳細な情報が表示され、状況に適した推奨する対処方法を提示してくれる。これにより、状況判断やトラブルシューティングにかかる時間を大幅に短縮することが可能だ。

PowerChuteのリスクアセスメント画面

さらにPowerChuteでは、接続するIT機器の電力消費を視覚的に表示する機能も用意されている。そのため、定期的に情報をチェックすれば、電力消費に無駄のある機器を特定して、電力の利用状況の改善にもつなげることができるのである。

PowerChuteの電源イベントサマリ画面

また、同ソフトウェアには、過去のバッテリーの使用状況や温度の変化、バッテリーごとの特性との比較などからバッテリーの寿命を算出する機能もある。管理画面から交換時期を確認することができるので、参考にするといいだろう。

忘れてはいけない、バッテリー交換時のアフターサービス

電源管理ソフトでUPSの動作を設定してしまえば、その後の日々の運用ではそれほど特別な対応は必要ないだろう。しかし長期にわたるUPSの運用で忘れてはならない要素として、バッテリーの交換がある。先に挙げたPowerChuteの管理機能にもバッテリーの交換時期を表示するものがあったが、バッテリーは消耗品なので寿命が来たら交換が必要なのだ。

注意が必要なのは、寿命が尽きたバッテリーは産業廃棄物に分類される点。廃棄するには相応のコストが生じる。しかし、メーカーによっては、バッテリー購入時に古いものを無償で引き取ってくれるサービスを提供しているケースもある。例えば、シュナイダーエレクトリックで新しいバッテリーを購入した際には、そのバッテリーが入っていた箱に古いバッテリーを入れて送り返すことで、シュナイダーエレクトリックが無償で引き取ってくれる仕組みになっている。

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これまでの3回にわたる解説を読んでいただくことで、UPSの必要性やUPSをどのように活用すればいいのかについて基本的なご理解をいただけたことと思う。あらゆる業務にコンピュータとネットワークが使われている現在、業務に伴い発生するデータなどを適切に保護することは会社の規模にかかわらず必須の対策と言えるだろう。日々の業務を安心・安全に遂行するためにも、UPSの効果的な活用に乗り出してみてはいかがだろうか。