TISは6月7日、オンラインでXR技術で創造した空間内でのコミュニケーションを実現するリモートコミュニケーションサービス群「XR Campus(エックスアールキャンパス)」シリーズのバーチャルツアーサービス「XR Campus - ツアー」のトライアルサービスを同下旬から提供することを明らかにした。トライアルサービスの申し込みは、同8日から開始し、9月末まで利用できる。

利用イメージ

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XR Campusについて、TIS テクノロジー&イノベーション本部 インキュベーションセンター 主査の加藤里奈氏は「新型コロナウイルスの感染拡大により、新しい働き方・生活様式にシフトし、次世代イベント体験や次世代購買体験、次世代観光体験など現在のオンライン体験では十分な体験ができているとは言い難く、XR技術の社会実装で社会課題解決に挑戦するため開発した」と説明する。

TIS テクノロジー&イノベーション本部 インキュベーションセンター 主査の加藤里奈氏

TIS テクノロジー&イノベーション本部 インキュベーションセンター 主査の加藤里奈氏

同社のXR事業は「研究・技術開発」「事業化・サービス化」「開発アセット」の3本柱としており、2017年に戦略技術センターでXR技術に関する研究開発を開始。2018~2019年にはVR空間におけるコラボレーションや現実空間にでMRを使用した遠隔コミュニケーションの研究・実証など、多くのPoCや実証実験を実施したほか、東大先端科学技術研究センター 身体情報学分野 稲見研究室と共同研究を開始している。

TIS テクノロジー&イノベーション本部 インキュベーションセンター センター長 鈴木松雄氏は、XR事業の実績に関して「2019年にDataMeshと協業し、Microsoft Mixed Realityのパートナープラグラム認定パートナーとなり、昨年1月には同社との協業で大林組の工事現場にMR技術を活用して生産性向上策の試行を実施した。また、凸版印刷との協業では空間共有型遠隔コミュニケーションサービス『TeleAttend』のの実証実験を2019年11月に東近江市の観光施設で行い、昨年10月には万博記念公園で次世代モビリティサービスの実証に参画した。さらに、HMD(Oculus Quest)を対象としたアプリでVRプロジェクトルーム『Re: Collabo Rooms』は仮想空間上でホワイトボードを共有しながらミーティングを可能とし、2019年から継続的に実証実験を行っている」と、アピールした。

TIS テクノロジー&イノベーション本部 インキュベーションセンター センター長 鈴木松雄氏

TIS テクノロジー&イノベーション本部 インキュベーションセンター センター長 鈴木松雄氏

リモートコミュニケーションに関しては、コロナ禍以前から物理的な距離や身体的な理由で移動が困難な状況を想定し、VR技術をベースとしたバーチャル空間上でのミーティングツールや、AR/VR技術をベースとしたアバターを用いて、リモートから接客や施設案内などを行うためのサービスなどを研究開発し、実証実験を行ってきた。

XR CampusはXR技術により、さまざまな空間を創造し、その空間上で目的に応じたコミュニケーションを可能とするサービス群。XR Campusツアーに加え、会議・オフィス向けの「XR Campus - スペース」、公園・セミナー向けの「XR Campus - イベント」、展示会・大規模イベント向けの「XR Campus - エキシビジョン」で構成。今回、XR Campus ツアーを先行してトライアルサービスを開始する。

XR Campusの概要

XR Campusの概要

同社では昨年からのコロナ禍を背景とし、さらにそのニーズが高まり具体化してきたことから、まずは施設見学や観光ツアー、イベントなどにおいて、リモートでも臨場感のある体験を提供するXR Campusツアーをサービス化した。

同サービスは、バーチャル空間でツアー型イベントを実現する空間共有コミュニケーションサービス。360度動画をベースとした仮想空間上に、ユーザーとホストのアバターが表示されることにより、同じ場所にいる感覚を持ちながらインタラクティブにコミュニケーションすることを可能としている。

ユーザーは、ボイスチャットやテキストチャットでコミュニケーションしたり、リアクションボタンで感情を表現することができるほか、アバターを操作して空間内の移動や視点を変えることもできるという。トライアルサービスでは、正式版の一部機能を制限したパッケージを最短2週間程度でサービスを提供する。

XR Campusツアーの特徴

XR Campusツアーの特徴

パッケージはツアーの長さが1ツアー最長90分程度(データ量1.5G以内)、開催可能回数は1回90分の場合が最大5回(30日間以内)、同時最大利用人数が1回に50人(主催者・参加者アバターの総数)、利用可能デバイスはスマートフォン、Windows PC。

利用シーンは、工場などの施設見学や、ショールーム見学などのリモート開催で参加者が自分の視点で好きなところを見ることが可能とし、奥行きなど空間の様子をわかりやすく伝えることができることに加え、観光地などのプロモーションとして、リッチな表現が可能なバーチャルツアーとしての活用を想定している。

想定利用シーン

想定利用シーン

参加者をアバターで表示することで「その場に存在する感覚」を得られるため、臨場感ある体験を提供できるほか、ユーザーの顔を表示しない状態でもアバターでユーザーとホストは相互の存在を感じながらコミュニケーションをとることを可能としている。

ホスト、参加者用にそれぞれプリセットのアバターを用意

ホスト、参加者用にそれぞれプリセットのアバターを用意

今後、トライアルサービス実施後、2021年10月にβ版、2022年4月に製品版のリリースを予定し、現在並行して検討中のXR Campusイベントサービスについても、2021年末にトライアルサービスのリリースを予定。同社は、今後も決済や5G連携なども視野に入れ、XR技術を活用した新しいコミュニケーションの形を提案し、大学や他企業との共同研究や協業も行いつつ、Withコロナ、アフターコロナの世界の社会課題を解決するサービス開発を進めていく考えだ。

今後のロードマップ

今後のロードマップ

トライアルサービスの価格は99万円(税別、360度動画を自社で用意する場合は45万円~)。