ガートナー ジャパンは3月15~16日、「エンタプライズ・アプリケーション戦略 & アプリケーション・アーキテクチャ サミット」を開催。初日のゲスト基調講演には、ハウステンボス取締役CTOでhapi-robo st 代表取締役社長の富田直美氏が登壇。「AI、ロボット、IoTを社会に活かす。~人がより幸せになるような未来を創る会社の使命とは?~」と題して講演した。

今に通ずる「原体験」

1,300万球に上るLEDを敷き詰めたイルミネーションや、自動走行一輪車「Airwheel」で園内を散策できるツアー、フロントも案内係も全てロボットの「変なホテル」の開業など、奇抜なアイデアと演出で人気のハウステンボス。

赤字続きで2003年に会社更生法の適用を申請した同社だが、2010年にエイチ・アイ・エスの澤田秀雄氏が社長に就任すると創業以来となる黒字を達成。それ以来、新しいテクノロジーとサービスを融合させた演出で、客足を増やし続けている。

昨年実施した開業25周年記念企画では、LEDを搭載した300機のドローンを使った「ドローン・ライトショー」を実施し、大きな話題になった。そんなハウステンボスの演出の仕掛け人が富田氏だ。

ハウステンボス 取締役 CTO/hapi-robo st 代表取締役社長の富田直美氏

日本アシュトンテイトやピクチャーテルジャパン、パラレルスなどのIT企業で社長を歴任してきたことで知られる同氏は、無類の機械好きでもある。”ラジコンの神様”を自認し、セグウェイやドローンといった新しい機器を、まだ規制が十分に整わない初期段階から自身で利用し、ビジネスへの活用も探ってきた。

ハウステンボスでのAirwheelツアーやドローン・ライトショーもそんな自身の経験を生かした企画だ。富田氏の講演は、同氏の原体験の紹介から始まった。

「牧師の家に生まれ、人より早くクリスマスプレゼントをもらっていました。プレゼントとして飛行機を組み立てる素材をそのまま渡されるような環境で、何かをしたいと思ったら自分で工夫しなければなりませんでした。また、ずっとフォークとナイフで食事していて箸の使い方を教わらなかった。そのため、大人になっても箸が使えなかったのです」

そうした教育を受けていない自分は、どうすればいいか。そこで富田氏が実践してきたのが「うまくいっている方法をまねる、誰かに助けてもらう、恥をかきながらやれるようになるまで失敗する」ことだという。

「好奇心と欲望を満たすために、そういったことを繰り返してきた人生です。だから、自分で体験できるものが好きなんです。概念を考えるよりも、実があって『これは何だろう』というところから概念を考えるほうが好きです」

ラジコンやセグウェイ、ドローンもその延長線上にあるものだ。すると、富田氏はおもむろに壇上をセグウェイに乗って移動し始め「実は、これ中国製のセグウェイのニセモノです。ニセモノですが、セグウェイです」と続ける。

「アクセルもブレーキもなく直感的に動かせます。初めての人でも5分で乗ることができる。自転車に5分で乗れるようになった人はいないでしょう。その場で回転する、直角に曲がるといった普通の人間にはできないよう動作もできます。人間が生まれて歩きだすまでには10カ月ほどかかります。(セグウェイでの移動は)人間が歩き方を覚えるよりも早く習得できるわけです。なぜこんなに素晴らしいものが日本の公道で走ることができないでしょうか。これに乗っていると、よく人から『中国製なのに大丈夫ですか』と聞かれます。大丈夫です。セグウェイなんですから」

富田氏が乗っていたのは中国シャオミ(Xiaomi)グループの企業ナインボット(Ninebot)の製品だ。ナインボットはセグウェイが保有していた特許に構わず類似品を展開していたが、2015年にセグウェイ社自身を買収した。そのため、セグウェイは「Ninebot Segway」として展開されるようになった。つまり、ニセモノであり、ホンモノのセグウェイなのだ。

「今や中国は特許出願件数で世界一の国です。日本企業はロボティクスが得意と言いますが、産業用ロボットで世界一とされるドイツのKUKAという企業の95%の株は中国が持っています。このセグウェイに搭載されているセンサーやモーター、制御技術も中国が開発した技術です。それなのに日本人は『中国製』というだけで『大丈夫なの』と上から目線でモノを言ってくる。大丈夫じゃないのはむしろ日本です。まず日本だからどうといった基準で物を考えないことが必要です」