2月19~20日に都内で開催されたガートナー ジャパン主催のイベント「カスタマー・エクスペリエンス サミット 2018」では、CRITEO 国内セールス部門統括 コマーシャル・ディレクター 小野良一氏が、「顧客の購買体験を最大化する『データ共有』とは」というテーマで講演を行った。

米国内では年間6,000以上の実店舗が閉鎖、その理由とは?

2015年、仏パリのスタートアップインキュベーターの起業家によって設立されたCRITEOは現在、世界30カ国以上にオフィスを構え、2,800人以上のスタッフを擁し、130カ国以上にサービスを展開するグローバルマーケティング企業となっている。国内においては、2011年に東京に拠点を構え、2012年にヤフーと資本・業務提携を結んでいる。その主たるビジネスであるリターゲティング広告とは、一度サイトから離れたユーザーが、再び訪問するよう後押しをする広告を指す。

今、米国ではショッピングモールやリテーラーの店舗が続々と閉鎖している状況にあり、2017年に閉店した米国内のリテーラーは6,000店舗以上に上るとされる。

このような状況が起きている理由として小野氏は次のような仮説を示した。

「『店舗に行って購入する』というカスタマーエクスペリエンスが、オンライン上のそれとは既にかなりの差がついているからではないでしょうか。店舗に行って、長時間並んだり品切れだったりするという体験は、スマートフォンから好きなだけ比較して購入できるオンラインショッピングのカスタマーエクスペリエンスと比べると、ストレスの塊でしかないと言えるでしょう」

CRITEO 国内セールス部門統括 コマーシャル・ディレクター 小野良一氏

また同氏は、「最高のカスタマーエクスペリエンスとは、自分をよくわかっている『なじみの店』で買い物や飲食をすることではないか」と言う。

アパレルにせよ飲食にせよ、「良い店」の共通項は自分の好みをよくわかっていて、さらに新しい発見を教えてくれるような店舗であることだ。今後のオンラインショッピングにおいても同様に、データを活用した深い消費者理解に基づく快適なカスタマーエクスペリエンスを提供し、最終的にはコンシェルジュやエージェントのような絆で顧客と結ばれることが求められる。

「既に巨大なオンラインショッピングサイトでは、そんなカスタマーエクスペリエンスの提供を実践している」と小野氏は指摘する。

これは言うまでもなく、アマゾンのことだ。同社は米国のEC市場でシェア43%を占めているが、これはオフラインの小売市場では見られない高いシェアだと言える。また、米国の市場調査会社による調査では、同国の成人男性の52%が購買時には最初にアマゾンで調べると回答しており、2位のグーグルの38.8%という数字をも大幅に上回っている。

では、なぜアマゾンは。人々が何かを買おうとした時のエージェントであり、コンシェルジュでもあるような存在になれたのだろうか。

この点について小野氏は、「我々はデータにカギがあると思っています。どういうキーワードで商品を検索して、何をクリックして、どの商品を比べて、最終的に購買に至ったかどうかいった経緯をビッグデータとして活用しているのです。そのビッグデータを全ての顧客についてAIで分析し、パーソナライズされたかたちで活用するところまでできていることが、アマゾンがここまでの存在となれた最大の原因でしょう」と見解を述べた。