4月19日~21日に都内にて開催された「ヘルスケアIT 2017」のセミナーでは、多摩大学 大学院 教授 真野俊樹氏が登壇。「医療ICTの状況:海外事例を踏まえて ~『患者』『アクセス改善』という視点で考える~」と題した講演を行った。

表裏一体!? 医療の「充実」と「無駄」

真野氏はまず、日本の医療を取り巻く状況について「日本の医療はかなり優れています。ただ、全てが優れているわけではありません。例えば、高額な医療費の問題があります。そうした課題を解決する方法論の1つとして、ICT活用が有力です」と指摘した。

真野氏は、臨床医、製薬企業のマネジメント、大和総研主任研究員などを経て、多摩大学 医療・介護ソリューション研究所教授に就任。東京都病院経営評価委員や、厚生労働省独立行政法人評価有識者委員などを兼務し、医療・介護業界に向けてマネジメントやイノベーションの視点から改革を訴えている。

多摩大学 大学院 教授 真野俊樹氏

「国民皆保険が整備され、がんの生存率などの数字を見てもかなりいい。医師の数は世界的に見て多く、身近には相談に乗ってくれる医者もいる。問題は、医療費が上昇を続けるなか、こうした状態をこれまで通り続けられるかどうかです。ムダを省いたり、過剰を改善したりする必要があります。そこに、ITを活用する余地があるのです」(真野氏)

平均在院日数やCT/MRIの数を調査すると、日本は極端に数が多く、いずれもダントツで世界1位だ。これは「医療が充実している」という見方ができる一方、世界的に見てムダが多いと言うこともできる。

そもそも、日本は病院数は多いが規模は小さく、設備や機器にかけられる予算は相対的に少ない。例えば、米国の大規模病院が売上高1兆円規模であるのに対し、日本は有名大学病院でも300億円規模だ。今後、医療技術が進み、設備や機器、薬価が高額になると、それらがさらに医療費をつり上げる。

そんななか、医療改革のアプローチとして注目されているのが「患者のアクセスを改善する」ものだ。これは、医療の課題に対し、病院の数や医師の数といった側面だけから対応するのではなく、患者自身が医療に積極的に参加しながら、必要な医療を必要なときに受けられるようにしていくアプローチだ。

例えば、ITを活用して診療前に問診を行っておくことで、診療をスムーズに行えるようにしたり、CTやMRIを病院ごとに撮影するのではなく、画像センターのような施設で一括でデータを管理することで、病院はセンターから情報だけを取り出せるようにしたりといった具合だ。

「日本の課題は、医療が身近すぎることです。医師が身近にいて、すぐに診療を受けられるため、逆にIT化が進みにくかったと言えます。この身近さ、つまり『アクセス』の部分には、ITを活用する余地があると考えています。例えば、事前に患者が問診を入力しておくことで、ムダを省けるだけでなく、データを共有して地域医療の充実につなげられます。将来的には、海外からの患者への対応や海外への医療の展開にも活用できるでしょう。また、CT/MRIをセンターに集約する方法は、実際に米国で行われているものです。患者にとっては不便さもありますが、高額な機器を減価償却していく病院側の負担を減らすことができるようになります」(真野氏)