アマゾン ウェブ サービス ジャパンは6月1日~3日、年次イベント「AWS Summit Tokyo 2016」を開催した。2日目のキーノートには、ゲオホールディングス 業務システム部ゼネラルマネージャー 末延寛和氏、日本電産 常務執行役員 CIOの佐藤年成氏、freee代表取締役の佐々木大輔氏がゲストスピーカーとして登壇。AWSクラウド活用の背景やポイントを紹介した。

今、AWS導入が加速する理由 - クラウドだからできること

アマゾン ウェブ サービス ジャパン代表取締役社長の長崎忠雄氏

アマゾン ウェブ サービス ジャパン代表取締役社長の長崎忠雄氏

「2011年3月2日に東京リージョンが開設されて5年。クラウドはもう特別なものではなくなりました。変化することが当たり前の”ニューノーマル”になったのです」 ――講演の冒頭、アマゾン ウェブ サービス ジャパン代表取締役社長の長崎忠雄氏はAWSの置かれた状況をこう説明し、クラウドが新規アプリケーションの構築基盤として、また既存アプリケーションの移行先としても企業に欠かせないものになったことを強調した。

AWSは、もともと米Amazonが提唱する顧客中心主義と薄利多売を実現するシステムとして開発されたものだ。スケールメリットの追求と徹底したコスト削減でAmazonの成長を支え、今ではAmazonの物流センター内でロボット管理を行うほか、大量のデータを分析するプラットフォームとしても用いられている。

「Amazonでは、AWSが生み出され、さまざまな制約から解放されたことで、事業の成長と顧客満足度向上に力を注ぐことができるようになりました」(長崎氏)

今では、アクティブカスタマーが100万人を突破。売上高は95億ドル(2015年4Q)に到達し、年率70%以上の成長を続けているという。顧客は、スタートアップ企業からエンタープライズ企業、教育・公共など多岐にわたり、コミュニティやパートナーとのエコシステムが良好に機能している。

長崎氏はこうしたAWSの実績を紹介したうえで、今、AWSの導入が加速している理由として、「初期費用ゼロで低価格であること」「継続的な値下げが行われていること」などを挙げる。

クラウド導入が加速している理由

氏は、「クラウドなら、今までできなかったことができるようになります。企業のデジタルトランスフォーメーションもその1つです。国内外の多くの顧客がAWSを使って、デジタルトランスフォーメーションを実現しています」と語り、ビジネスのデジタル化が進み、クラウドはその提供基盤として重要性が増している、と力を込める。

「例えば……」と、氏はMLB(メジャーリーグベースボール)が昨年始めた、AWSのサービスを使って映像をリアルタイムに解析し、走塁する選手の速度や歩数、野手の送球速度・角度といった情報を画面に表示するサービスを紹介。また、国内企業のデジタルトランスフォーメーション成功例として、資生堂やマネックス証券、ガリバー、バンダイナムコなどの企業を挙げてみせた。

AWSはどこに向かうのか - クラウドがもたらす6つの自由

今後、AWSは企業に何をもたらそうとしているのか。長崎氏は、新しいサービスや取り組み、機能拡張の方向性を、「クラウドによってもたらされる”6つの自由”」として、紹介した。

1つ目は、「作りたいものが作れる自由」だ。”俊敏な経営”を実現するには、状況に応じた素早いインフラ設定や多様な技術基盤が必要だ。AWSでは、マネジメントコンソールとAPIによって、必要なインフラが数クリックで手に入る。基盤に関しても「70を超えるプラットフォームサービスにより、物理的なインフラからセキュリティ管理までを一貫して提供する」(長崎氏)としている。今後も、顧客から求められる新しいサービスの提供に力を入れていくという。

2つ目は、「顧客ニーズをすぐに手に入れられる自由」だ。例えば、ビッグデータ分析によってニーズを予測することで、顧客が望むものを適切なタイミングで提供することができる。AWSでは、これを実現する基盤からサービスまでを担う。

3つ目は、「最適なデータ移行とデバイスにつながる自由」だ。クラウド移行では、「ペタバイト級のデータをどう転送するか」という問題がある。AWSでは、これを解決するためにセキュアなアプライアンス型ストレージ「AWS Snowball」を開発し、2016年中に全リージョンで展開する予定だという。また、IoT(Internet of Things)でのデータ転送については、ネットワーク、デバイス、セキュリティが懸念点になる。そこで、AWSではIoT機器向けの統合プラットフォームを提供するとしている。

4つ目は、「データベースの制約から解放される自由」だ。AWSでは、新たにエンタープライズレベルのパフォーマンスをオープンソース並の価格で提供するデータベース「Amazon Aurora」の提供を開始した。また、ダウンタイムを最小化しながら、本番環境のデータベースをクラウドに移行するための「AWS Database Migration Service」の提供は既に3月から東京リージョンで開始している。さらに、今後、Amazon RDS for SQL Serverについては、東京リージョンでのマルチアベイラビリティゾーン対応、Amazon S3へのネイティブバックアップ/リストア、ローカルタイムゾーン対応を予定する。

5つ目は、「乗り換える自由」だ。全てをクラウドに移行するのではなく、オンプレミスと組み合わせて利用するケースは多い。「AWSは、そうしたハイブリッド環境でも安全かつ柔軟性を保ったまま運用することができる」(長崎氏)という。既存の投資を保護しつつ、将来的にクラウドへの移行も見据えた運用が可能になるというわけだ。

6つ目は、「スピードとセキュリティを両立する自由」だ。AWSでは、セキュアなアプリケーションを構築するために必須となる機能がサービス化されており、さまざまな第三者認証や運用基準、監査基準に対応している。5月17日からは、電子証明書の発行と管理を自動化できる「AWS Certificate Manager」も東京リージョンで利用可能になった。

長崎氏は「ほとんどのワークロードは今後クラウドへと移るでしょう。我々は、今後も顧客価値を高める取り組みを続けていきます」と強調した。

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