高い管理性を支える4つの主要機能

Hinemosには、企業における複雑なサーバ環境の運用管理に対応可能な機能が数多く実装されています(表1)。しかもそれらの多くは、運用対象にエージェントをインストールすることなく実行することが可能です。まずは、基盤となる4つの管理機能について説明しましょう。

リポジトリ機能

リポジトリ機能は、IPアドレスやホスト名といった運用対象ノードに関する情報とスコープの情報を一元的に管理する基盤機能です。複数存在する運用対象ノードを任意のスコープに登録することで、スコープ単位による運用管理を実現します。運用対象ノードは、業務やOS、設置場所といった異なる観点から作成した複数のスコープに登録でき、運用管理の効率化を図ることが可能です。

Hinemosでは、リポジトリ機能で管理されているノードとスコープ情報を、すべての機能において共通情報として利用します。そのため、ここで作成したスコープ構成が運用管理の作業効率に大きな影響を与えることになるので、計画的に作業を行う必要があります。

アクセス管理機能

Hinemosでは、ユーザーごとに各機能の操作権限を設定することが可能であり、アクセス管理機能はその権限を管理する機能です。例えば、ユーザーAにはジョブ管理機能の設定と実行の権限を、ユーザーBにはジョブ管理機能の画面を参照する権限のみを与えるといった設定を行うことができます。このようにユーザーに応じて権限を設定することで、許可されていない機能の誤用を防止します。

監視管理機能

Hinemosは、pingによる基本的な死活監視から、syslog-ngによるログ監視、SQL監視、SNMP監視に至るまで、サーバを監視するうえで不可欠な監視機能を漏れなく提供しています。もっとも、これらの機能はサーバ監視の基本機能であるため、他の運用管理ツールにも装備されています。ですが、Hinemosは提供している機能の種類が豊富である上、初心者でも容易に設定が行えるよう、すべてGUIを通じて設定できるようになっています。

また、スコープをドリルダウンすれば、最終的にスコープを構成する運用対象ノードごとの監視結果が表示されます。そのため、スコープ単位での障害の有無からノード単位での障害の詳細までをスムーズに把握できます。

ジョブ管理機能

ジョブ管理機能では、複数の運用対象ノードで連携して実行するジョブやジョブネットを定義し、定義したジョブの開始や停止、中断、再開などを制御します。その際、きめ細かな条件を指定できるのがHinemosの長所です。

まず、ジョブで実行するコマンドは引数付きで指定可能で、実行ユーザーも指定できます。ジョブを開始する条件に時刻や先行するジョブの処理結果の値を指定して、それらによって後続するジョブの起動を制御できます。また、1つのジョブの終了時に複数のジョブが開始するといった設定も可能です。実行中、および実行済みのジョブについては、進捗状況や結果を確認する画面が提供されています。

なお、ジョブで実行するコマンドとしてシェルスクリプトなどにも対応しているため、任意の処理内容を記述して運用管理環境に適した処理を行うことができます。この機能を活用すれば、繰り返し行われる処理や定型作業の自動化を実現できます。

表1 Hinemos ver.2.3の機能一覧

機能

管理対象サーバOS

Linux

Solaris

Windows

ベースとなる機能群

リポジトリ管理機能

アクセス管理機能

カレンダー機能

一括制御機能

-

監視管理機能

syslog-ng監視

◎※1

◎※1

エージェント監視

HTTP監視

ping監視

プロセス監視

SNMP監視

SQL監視

リソース監視

◎※2

◎※2

○※3

SNMPトラップ監視

アプリケーションログ監視

性能管理機能

リアルタイム

◎※2

◎※2

○※3

実績収集

◎※2

◎※2

○※3

ジョブ管理機能

コマンド実行

ファイル転送

-

◎:Hinemosエージェントをインストールすることなく実現
○:Hinemosエージェントのインストールにより実現
-:機能なし

※1:Hinemosエージェントをインストールしない場合でも監視対象のsyslogの設定により監視が可能
※2:Hinemosエージェントをインストールしない場合でもNet-SNMPなどSNMPエージェントの設定により監視が可能
※3:Windows版エージェントをインストールしない場合でもネットワークI/Oの監視が可能

執筆者プロフィール

中西康貴(Koki Nakanishi)
株式会社NTTデータ 基盤システム事業本部 オープンソース開発センタ 技術開発担当。

『出典:システム開発ジャーナル Vol.1(2007年11月発刊)
本稿は原稿執筆時点での内容に基づいているため、現在の状況とは異なる場合があります。ご了承ください。