アースディ (4月22日)に「Impossible Burger 2.0」を食べてきた。ハンバーガーに抱いていたイメージが変わる、噂通りのうまさだった。
Impossible Burgerは、大豆タンパクを用いて肉を一切使用していない牛肉の代替食品だ。サンフランシスコを拠点とするImpossible Foodsが開発している。そうした肉を使用していないハンバーガーパテは、トーフハンバーグなどすでにいくつも存在する。ただ、従来の牛肉代替のパテは、ベジタリアンやビーガンでもでも安心して食べられるベジーバーガーのためのパテだった。味は二の次で、ハンバーガーらしいうま味に欠け、肉を食べる一般の人達が好んで食べるようなものではなかった。
肉を全く使っていないのでImpossible Burgerもベジタリアンやビーガンが食べられるハンバーガーパテなのだが、ベジタリアンやビーガンのみをターゲットにした製品ではない。肉を食べる人達から選ばれる"肉から作られていない肉"を目指している。
3年ほど前に「Impossible Burger 1.0」を一般の人達が食べられるようになった時に、本物の赤身肉のような風味と食べごたえが話題になり、そして多くの人達がImpossible Burgerにハンバーガーのパテとして合格点を出した。
そして今年1月、ラスベガスで開催された家電・テクノロジー見本市「CES」で「Impossible Burger 2.0」がお披露目された。1.0のImpossible Burgerは、それまでのベジーバーガーとは全く異なる肉の風味を実現していたとはいえ、ファストフードチェーンやファミリーレストランの牛肉ハンバーガーと競争するレベルだった。赤身肉のうま味を向上させた上に食感にもこだわった2.0は、味にこだわるバーガーショップのハンバーガーにも使えるレベルに達したという。例えば、CNETの記者は「1.0がSizzler (ファミレスチェーン)のOKレベルのステーキだとしたら、2.0は神戸牛のリブアイのような味」と表現している。
そこで今回は「Umami Burger」でImpossible Burger 2.0を体験した。Umami Burgerはグルメバーガーショップの1つで、素材とうま味にこだわる。だから、基本メニューのUmami burgerでも13.50ドル(約1,500円)である。ハンバーガーとしてはちょっと高い。看板にある通りのうま味、価格相応以上の満足感を提供できてこそUmami Burgerだ。そんな店だから、素材を納める業者を選ぶ基準は厳しい。ただ「肉を使っていない」というだけでメニューに加えることはない、Umamiが求める味があってこそ同社は採用する。
結論から言うと、これまでに食べたUmami Burgerの他の牛肉を使ったメニューと変わらない満足感だった。でも、「神戸牛のリブアイのような~」という感じではない。ハンバーガーのパテは、ソフトな食感のものから赤身肉を叩いただけのような粗いものまで様々で、おいしさも多様だ。だから、Impossible Burgerを表現するとしたら「Impossible Burger」というしかないのだが、1つ言えるのはハンバーガーパテとして「美味しい」ということ。
だから、Umami BurgerはImpossible Burgerを使ったハンバーガーをベジタリアン用やビーガン用とアピールせず、他の肉のハンバーガーと同じようにメニューに並べて全ての人にすすめている。
ベジーバーガー用のハンバーガーパテというと、ベジタリアン向け食品に力を入れる食料品店で冷凍したパテが販売されているのが一般的だった。現在Impossible FoodsはレストランのみでImpossible Burgerを提供し、一般向けには販売していない。素材の味に自信があっても、ちゃんと調理してもらえなかったら台無しになる。だから、まずはImpossible Burgerの良さを引き出せるレストランで、Impossible Burgerという素材の良さを確認してもらう。味を犠牲にした牛肉の代替ではないことを多くの人達に体験してもらった上で、年内には一般向けの販売も開始する計画だ。4月にImpossible FoodsはファストフードチェーンのBurger Kingと契約し、一部のBurger Kingでの試験的な提供が始まった。ウチの近くのBurger Kingでは食べられないが、ファストフードの調理システムでも素材の良さが引き出されるのか、「安くて美味い」で競争力を発揮できるか、うまいハンバーガーとして一般のファストフード好きに受け入れられるか、Burger Kingの利用者の反応が楽しみだ。
今回、なぜ アースディ (自然や環境について考える日)にImpossible Burgerを食べに行ったのかというと、現在の食用肉を生産するシステムが大量の温室効果ガス排出の原因になっているからだ。Oxford Martin Schoolが今年の世界経済フォーラム (WEF)で公表された研究レポートによると、タンパク質源としての食用の牛肉を別のものに置き換えることで、自然環境にも、人の健康にも大きなプラス効果となり、数百万人規模の命が救える可能性がある。
肉のような食べごたえと風味を求め、牛肉と同じように脂肪も入っている代替の食べ物を食べるなら「牛肉でいいじゃないか!」という人が少なくない。私だって、特に肉好きというわけではないけど、肉を食べる食生活を変えるつもりはないし、普段から環境破壊を意識して肉の代替食品を試すこともない。今回は アースディだったからCESの報道を読んで気になっていたImpossible Burger 2.0を試してみたのだが、食べてみて良かった。食の可能性の1つを実感できる体験になった。