Google Readerの提供が終了になった時に、「情報収集はソーシャルで間に合っているからRSSリーダーなんて不要」とドヤ顔で言う人たちのコメントに「ピンと来んな~」と感じた人がいると思う。

筆者のTwitterのタイムラインにもいろいろなニュースや情報が流れてくるけど、RSSリーダーの代わりになるほどではない。筆者の趣味に偏った情報、ローカルな情報で埋め尽くされている。工夫したら、Twitterでもっと効果的に情報を収集できるようになってFeedlyなどいらなくなるのかもしれないが、そこに達するまでの試行錯誤に時間も手間もかかりそうだ。

Twitterに参加していない人たちの中には情報を発信するのではなく、情報収集のツールとしてTwitterを使いたいと思っている人もいるだろう。でも、マイクロブログだから、ブログを始めるような意気込みが必要だと思ってためらってしまう。1文字もツイートすることなく、ただ情報収集のためのツールとして使うことも可能なのだが、初心者には少々難しい。

一見簡単なようでいて使いこなすのに苦労が伴うのが、Twitterの近年のユーザーの伸び悩みの原因の1つではないだろうか。積極的にツイートして情報を提供する人たちは、すぐに情報を収集するツールとしてもTwitterを使いこなせるようになるが、情報を収集するためのツールから入ろうとすると少々マスターしにくい。だから、積極的にツイートするパワーユーザーはものすごい勢いで増加したが、それが落ち着き、次に情報を消費することを中心とした一般ユーザーが増加すべきフェーズを迎えてTwitterのユーザー増は減速した。

これを何とかしないと、Twitterの次の飛躍は望めない。共同創業者のJack Dorsey氏が正式にTwitterの新CEOに就任した際に「これからわれわれが成すべきことは、Twitterを世界中の人が簡単に理解できるものにし、Twitterを好んで毎日使用してくれる人々により大きな価値を提供することだ」と述べたのは、そういうことではないと思う。

他のニュースサービスと一線を画す「Moments」

Jack Dorsey氏がCEO就任を公表した2日後、Twitterは「Moments」という新機能の提供を米国で始めた。モバイルアプリではメニューバーの真ん中にMomentsのボタンが配置され、タップすると「Today」というタブが開き、今日の話題を次々にチェックできる。さらに「News」「Sports」「Entertainment」「Fun」といったカテゴリーに切り替えられる。それぞれのMomentにはテキストのツイートだけではなく、写真やVineビデオ、リンクなどがふんだんに盛り込まれていて雑誌のページを見るようだ。Todayを開くと、今日そして今なにが起こっているのかを簡単に把握できる。

MomentsはTwitterのスタッフが作成しており、Bleacher Report、BuzzFeed、Fox News、Getty Images、Mashable、MLB、NASA、New York Times、Vogue、Washington Postなどが媒体パートナーになっている。Twitterスタッフがキュレーションするニュース/情報サービスと表現して間違いではないだろう。

メニューバーの真ん中にMomentsのボタン

ただ、ニュースやキュレーションが旬とはいえ、オープンに情報が飛び交い、大量の情報がごった煮のようになっているのがTwitterの魅力であり、その一部を抽出したり、Twitter自身が特定の情報にユーザーを導いたりすると、Twitterの魅力が薄れるというようなキビしい意見も目にする。

筆者もTwitterにニュースサービスは望まないと思いながら試してみたのだが、使ってみると意外と面白いし、iOSのニュース・アプリと併用しても情報が重なっているような感じがしない。普通のニュースサービスとはずいぶん異なる。

Momentsは今年1月に行われたTwitterのハックウィークから誕生した。ニューイングランド・ペイトリオッツの大ファンであるAlli Dryer氏が、アメフトの試合のコンパニオンとしていかにTwitterが役に立つかを示した#GameTimeというプロジェクトが評判になり、Project Lightningへと進化、製品化にたどり着いたのがMomentsである。

ざっくり説明すると、特定のイベントがあると、たくさんのツイートが飛び交う。#GameTimeはペイトリオッツのプレイオフ・ゲームであり、NFLファンのタイムラインには必ずプレイオフの情報が流れてくる。しかし、それがイベント中に拡散されている中で最高の情報であるとは限らない。最も役立つツイートや最も面白いツイートをタイムラインに表示させたいけど、それを入手するのが容易ではないのがTwitterユーザーの大きな不満の1つになっていた。それを解決するのがProject Lightningであり、Momentsである。

Momentsの編集チームの最大の武器はTwitterのリアルタイムデータにアクセスでき、口コミで猛スピードで広がっている情報をすくい取ることが可能な点にある。例えば、今年の春にボルティモアで暴動が起こった際、iPhoneを持って飛び出し、Periscopeを使って暴動の中から生放送したジャーナリストが話題になったが、Twitterなら数時間の生放送をすぐにMomentsのトップに持ってくることができる。それによって、これまでよりも世界中のたくさんの人たちが数時間の暴動をリアルに体験できるだろう。

TwitterにはTwitterならではのキュレーションが可能であり、それを実践し続けたらMomentsは面白い存在になりそうだ。大事なのは、Momentsはパワーユーザー向けの機能ではなく、Twitterから効率的に情報を集めたい人たちや、軽い気持ちでTwitterをやってみようと思っている人たち、言い換えるとこれからTwitterが開拓すべき人たちのためのサービスである。そうしたターゲットにMomentsを気づかせる方法をどのようにするのか……という疑問は残るが、Twitterのあり方を大きく変える可能性を秘めている。

Web版TwitterのMoments、13日のトップは民主党のCNN討論会だった。共和党のドナルド・トランプ候補の「とんでもなくつまらない2時間になりそうだけど、たくさんの人が望むからライブツイートするよ」というツイートなど、他のメディアからは得られない面白い情報であふれていた

13日にTwitterが最大8%の人員削減を行うことが明らかになり、7-9月期決算もキビしい内容になりそうだという見方が広がっている。停滞感が強まる一方だが、日が昇る寸前にこそ闇は深くなるものだ。Twiiterにとって今がその時期であると期待したい。