米国などで5月5日に出荷開始されるMicrosoftの新しいWindows 8.1搭載2-in-1「Surface 3」。米国では4月からMicrosoft Storeで体験できるようになっているので早速、空いている平日の午前中に行って、気になっていたところをじっくりとチェックしてきた。

Windows RTを搭載したタブレットだった「Surface RT」「Surface 2」の失敗、そしてWindows 8搭載2-in-1「Surface Pro 3」の成功を踏まえて、Surface Pro 3の小型モデルという位置付けで登場したのがSurface 3である。

以下は、Surface Pro 3との主なスペックの比較だ(かっこ内がSurface Pro 3)。

  • ディスプレイ: 10.8型 1920×1280 (12型 2160×1440)
  • サイズ: 267×187×8.7ミリ、622グラム (292.1×201.4×9.1ミリ、800グラム)
  • プロセッサ: Intel Atom x7 (Intel Core i3/i5/i7)
  • メモリ: 2GB/4GB (4GB/8GB)
  • ストレージ: eMMC 64GB/128GB (SSD 64GB/128GB/256GB/512GB)
  • キックスタンド: 3段階調整 (無段階調整)
  • 価格: 499ドルから (799ドルから)

Surface Pro 3のコンセプトを受け継ぎつつ、コンパクトかつ軽量に、そして安価になった。ただ、プロセッサがAtom x7であり、ストレージもeMMCになっていることから、パフォーマンスに不安を抱いている人が多い。実際ここ数日、Geekbench Browserに上がってくるベンチマーク結果を見ても、Surface Pro 3やMacBook Airとは大きな開きがあり、シングルコアスコアはiPad Air(iPad Air 2ではない)も下回っている。Surface Pro 3の良さの1つである快適な動作が損なわれているようで、Surface Pro 3の弟分とは呼びがたい。

Surface 3とSurface Pro 3

結論から言うと、そんな心配は無用だった。"体験"を訴えるようになった近年のMicrosoftの姿勢に偽りはなく、Surface 3はもっさり感をみじんも感じさせない。もちろん、Surface Pro 3と同等ではないが、知らずに触れていたら、おそらくAtomで動いていると思わなかったのではないか……というぐらいレスポンスよく動作する。

これは表現に困るデバイスだ。Geekbench 3の結果で判断したら「非力」としか言いようがない。ところが、使ってみるときびきびと動作する。そんな時、私たちはとても便利なフレーズを使う。「Webページを閲覧したり、書類を扱ったりするには十分」。こう言っておけば、誤りではないが、Surface 3の体験を言い表せてはいない。

例えば、長時間の動画をエンコーディングするような作業にSurface 3は向かない。だから「動画編集もできる」とは書きにくいのだが、簡単な動画編集なら可能である。むしろ撮影したビデオをそのまま整えてオンラインで共有するなら、とても使いやすそうなデバイスである。スペックを求めるPCユーザーにとってSurface 3のプロセッサは明らかに非力である。でも、スマホ/タブレット世代にとっては十分なパフォーマンスであり、むしろエネルギー効率に優れたプロセッサを採用することで実現したファンレスのスリムなデザインを歓迎するだろう。

「モバイル優先、クラウド優先」を掲げるMicrosoftの関心がどちらを向いているかは明らかだ。その点において、Surface 3はパフォーマンス、デザイン、機能のバランスに優れている。

Core Mを搭載した新しい「MacBook」もパフォーマンスが犠牲になっていると言われているが、問題はどのように使うかだ。従来のPCのように使うなら、MacBook Proや高性能なWindows PCを選ぶべきである。Surface 3とMacBookはスタイルが違えど、どちらもスマホ/タブレット世代のニーズ、スマホ/タブレット世代の利用スタイルに応えるデバイスである。

Surface 3 Type Coverでトラックパッドがさらに小さくなって操作しづらくなった。ただ、本体がコンパクトになったから、キーボードを付けたまま本体を寝かして置いてもSurface Pro 3ほど邪魔にならず、トラックパッドを使わずに画面のタッチ操作とキーボードでずっと操作していた

個人的には、パフォーマンスよりも10.8型というサイズのほうが悩みどころになると思った。Surfaceシリーズの特長の1つであるSurfaceペンを活用する場合、ノートパッドのように使って手書きでOneNoteにメモするならコンパクトで使いやすいが、ペンの使い方によっては画面が狭く感じる時があった。

例えば、イラストを描いたり、写真を加工したり、Surfaceペンを活用できる例として話題になったばかりの楽譜アプリ「StaffPad」を使ったりする時などもSurface Pro 3のほうが快適に作業できそうだ。

2つのSurfaceを使い比べてみて、Surfaceペンを使ううえでSurface Pro 3の12型は、よく考えられたサイズだと改めて実感した。Surfaceペンに魅力を感じて、色んなことを試してみたいと思っているなら、Surface Pro 3が適したデバイスかもしれない。

Surface 3は価格が499ドルからだが、64GB/2GBメモリでは余裕がないので、599ドル(128GB/4GBメモリ)を標準モデルと見なすべきだろう。それでも十分に魅力的であり、Surface Pro 3のコンセプトをマスに広げるモデルとして売れそうな予感がする。

StaffPadの共同設立者のDavid William Hearn氏は「iPadは好きだが、このアプリに適したデバイスではなかった」と述べている。手書きの認識やパフォーマンスなど、手書きでデジタル楽譜を作成するのに十分な体験をiPadでは作り出せなかった。だから、Windowsアプリを選んだ。

個人的には、SurfaceペンにSurfaceシリーズの魅力を感じている。ただ、Microsoftはユニバーサルアプリ戦略を進めており、Windows向けソフトの開発者の多くはWindowsプラットフォーム全体を1つの市場と見なしてWindows 10の登場に期待しているのが現状だ。手書きでも使えるアプリは多いが、StaffPadのようにデジタルインクで使うために作られたアプリは豊富とは言いがたい。

でも、Surfaceを意識して開発されたアプリをSurfaceで使うのは楽しいし、それを必要としている人たちにとって特別なアプリになっている。Surfaceペンを活用するのに10.8型は小さいかもしれないという感想と矛盾するが、Surface 3が売れることでデジタルペンをフル活用できるアプリがもっと増えてほしいとも思っている。