ここ数日、タブレットは先月末にGoogleが発表した2013年版の「Nexus 7」を使っている。

7.02インチのディスプレイが1920x1200 (323ppi)に高解像度化され、プロセッサにQualcomm Snapdragon S4 Pro (1.5GHz)を搭載。最新と呼べる性能を備えながら、114ミリ×200ミリ×8.65ミリ (290グラム)と初代モデルよりも薄く軽量になった。しかも、バッテリー駆動時間が初代モデルよりも1時間ほど長いという。

実際、新Nexus 7は片手になじむようにフィットし、軽く、そしてきびきびと動作する。初代Nexus 7は、iPad mini購入後にほったらかしにしていたせいで充電できなくなってしまった (正規アダプタで1時間だけ充電し、ケーブルを抜いて10秒以内にもう一度すばやく接続……というような儀式で復活する)。そんな筆者でも新Nexus 7は日常使いにしたくなる。おすすめできる7インチ・タブレットだ。

2013年版Nexus 7(左)と初代Nexus 7。新モデルはディスプレが鮮やかだが……

ただ、残念だった点が一つ。初代モデルよりも1時間長いというバッテリーの持ちが、それほど良くないのだ。Wi-Fi経由でインターネットに接続したままの普段使いで、バッテリー切れまでの時間はiPad miniより明らかに短く、1年以上使った初代Nexus 7を上回っているかも微妙な感じ。粘り強くなったという印象を持てない。

初期不良かと思って返品・交換を考えていたら、同じような不満をネットのあちこちで見かけるようになった。Wall Street Journalの「Google's New Nexus 7: The Budget Tablet to Beat」という記事によると、Googleがアピールする9時間という数字は機内モード(通信機能オフ)でディスプレイの明るさを44%にセットした状態なのだという。でも、新Nexus 7に搭載されているような高解像度ディスプレイを快適に使おうとしたら明るさは高めになる。それが普段の使用でバッテリー駆動時間の伸びを感じられない原因なのかもしれない。

粘り強くないと言っても、7インチ・タブレットとして短すぎるということではなく、これが初めてのNexusタブレットだったら気にしなかっただろう。だが、初代Nexus 7やiPad miniを使ってきて、iPad miniに肩を並べるぐらいにバッテリーの持ちが向上して欲しかった。初代Nexus 7のディスプレイ密度は216ppi。もしディスプレイが影響しているのなら、個人的には高解像度化よりもバッテリーの持ちを優先して欲しかった。だからこそ、最近噂が広がっているiPad miniのRetina化にも引っかかるものを感じる。薄さと軽さ、バッテリーの持ちを損なわずに高解像度化できるのだろうか……。

Moto Xの地味なスペックの価値

8月1日に米MotorolaがGoogleと開発したスマートフォン「Moto X」を発表した。ディスプレイは、4.7インチ、1280×720で312ppiだ。ピクセル密度は、HTC One (469ppi)、iPhone 5 (326ppi)、Nexus 4 (318ppi)よりも低い。開発者インタビューなどを読むと、Motorolaはディスプレイのサイズと解像度について試行錯誤を繰り返し、現時点で最も優れた"ユーザー体験"を提供できる解として4.7インチ (1280×720)に決めた。

ユーザー体験を最大限化するためのこだわりはディスプレイだけではなく、端末開発の全てに徹底されている。アプリが快適に動作し、コンテンツは美しく表示され、本体は片手にフィットする薄型・軽量サイズで、1日中使えるほどバッテリーは持つ。それら全てをバランス良く引き出すことを重視した結果、Moto Xのハードウエア仕様は地味なものになってしまった。おかげで、発表後の盛り上がりは今ひとつ。Motorolaの技術の粋を集めた機種なのに、ぱっとしないハードウエア仕様から「ミッドレンジ製品のようだ」と言われてしまっている。

"1080p、フルHD"というような分かりやすいスペックは、たとえそれがスマートフォンには過度なスペックだったとしても消費者の関心を引きやすい。それに比べて、MotorolaがMoto Xでアピールする「優れたユーザー体験」は実際に使い込んでみないと分からない。その価値をどのように消費者に伝えていくか、MotorolaとGoogleのお手並み拝見である。

Google傘下となったMotorolaが満を持して投入した「Moto X」。使ってみないと、その良さが分からないのが弱点

Nexusシリーズは、開発者向けの端末として次代を先取りするような性能や機能、パーツを備えてきた。素のままのAndroidを搭載し、シンプルで高性能だから、OSの数世代にわたって使い続けられる。開発者の道具に適した端末だ。

ところが、そのNexusシリーズが最高のエンドユーザー向け端末であるような評価も受けている。そんな現状をGoogleはMotorolaを通じて変えたいのだろう。素のままのAndroidが最高のユーザー体験を提供するAndroidではない。端末ベンダーのアイディアと努力で、Androidプラットフォームはさらに豊かなものになるはずだ。それなのに、このまま端末ベンダーが工夫を凝らさず、ただAndroid端末をより低価格で提供する競争に進んでしまえば、これから手頃な価格帯のスマートフォンの市場が拡大しても、「安かろう…」以上の魅力を示せなかったかつてのネットブック・ブームのような結末なってしまいかねない。

現在のAndroid端末市場でMoto Xをヒットさせるのは容易ではない。しかし、手をこまねいていたら、MacBook AirとiPadがネットブック市場を席巻したようなことが起こりかねない。