7月15日: 冥王星探査機ニュー・ホライズンズが冥王星に接近
ニュー・ホライズンズは2006年1月19日に打ち上げられたNASAの探査機で、冥王星の観測を行うことを目的としている。同年6月13日に小惑星APLを通過、2007年2月28日には木星を通過し、一路冥王星に向けて航行を続けている。
多くの惑星探査機は、その目的地の星の周回軌道に入るが、ニュー・ホライズンズは探査機の持つ能力の都合で、冥王星の周回軌道には入れず、傍を通り過ぎるだけだ。しかし、これまで冥王星は望遠鏡による観測が行われただけで、探査機が接近して観測を行うのは史上初のことだ。太陽系外縁天体がどのような姿かたちをしているのか、人類は初めて目にすることになる。
冥王星の姿冥王星通過後は、エッジワース・カイパーベルト内の別の太陽系外縁天体を探査することが計画されている。
7月: 宇宙重力波望遠鏡LISAパスファインダーの打ち上げ
LISAは、NASAのジェット推進研究所(JPL)と欧州宇宙機関(ESA)が共同で開発を進めている重力波を観測するための宇宙望遠鏡で、LISAパスファインダーはその技術実証機として開発されている。ヴェガ・ロケットによって打ち上げられた後、イオン・エンジンで太陽・地球系のラグランジュ1に移動し、観測を実施する計画だ。
LISAパスファインダーの成果は、本番のLISAの開発に生かされる他、LISAパスファインダー自身も科学的な成果を得ることを目指している。
8月: 彗星探査機ロゼッタ、彗星と共に太陽に最接近
彗星探査機ロゼッタと、小型の着陸機フィラエによるチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星の探査は、2014年の宇宙探査でもっとも大きな話題となった。フィラエはすでに活動を終えて休眠状態にあるが、ロゼッタは現在も探査活動を続けており、これから今年8月にかけて、彗星と共に太陽へと近付いていく。
彗星が太陽に近付くと、その熱を受けて彗星活動は活発になるが、ロゼッタによってその活動や、変化の様子が捉えられることが期待されている。また太陽に近付くことで、フィラエの太陽電池が受ける光の量も多くなることから、休眠しているフィラエが再起動できる可能性もある。
第3四半期: ファルコン・ヘヴィ・ロケットの試験打ち上げ
ファルコン・ヘヴィはスペースX社が開発している超大型ロケットで、ファルコン9ロケットの第1段を3基束ねた、力強い格好をしている。またファルコン9の第1段は9基のロケットエンジンを持っており、つまり打ち上げ時には、計27基ものエンジンが一斉に咆えることになる。
打ち上げ能力は地球低軌道に53tと強大なもので、この数値はかつて人類を月に送ったサターンVロケットや、ソ連のN1、エネールギヤに次いで大きく、大型の衛星の静止軌道への直接投入や、有人火星探査などに使われることが計画されている。
発射台は、かつてスペースシャトルが打ち上げられていた、ケネディ宇宙センターの39A発射台が使用される予定だ。
10月26日: プログレースMS補給船、デビュー
プログレース補給船は1978年に登場して以来、たびたび改良を重ねつつ、ソ連やロシアの宇宙ステーション、そして国際宇宙ステーションに向けた補給物資の運搬を担ってきた。現在使われているのはプログレースM-Mと呼ばれるヴァージョンだが、その次の世代となるプログレースMSの開発が進められている。
プログレースMSでは、クールスNAと呼ばれる新しいランデヴー・ドッキング・システムや、ASN-Kと呼ばれる新しい航法システムが搭載され、また太陽電池やスラスターも新しくなり、船体の構造も大きく見直されることになっている。外見に大した変化はないだろうが、その実はまったく新しい宇宙船といっても差し支えないほどだ。これにより性能が向上する他、何よりウクライナなどから部品を購入することなく、完全にロシアだけの力で建造することができるようになる。
またプログレースMSの運用がうまくいけば、同様の改良が施された、ソユースMSが開発される予定となっている。
11月: X線天文衛星ASTRO-Hの打ち上げ
ASTRO-Hは日本の宇宙航空研究開発機構(JAXA)が中心となり、米欧などとの国際協力で開発を進めているX線天文衛星で、ブラックホールの周辺や超新星爆発など、高エネルギーの現象に満ちた極限宇宙の探査・高温プラズマに満たされた銀河団の観測を行い、宇宙の構造やその進化を探ることを目的としている。
全長14m、打ち上げ時の質量は2.4tと、これまでにJAXA宇宙科学研究所が手がけた科学衛星の中で、最も大型の機体でもある。
打ち上げは種子島宇宙センターから、H-IIAロケットで行われる予定だ。
第4四半期: アトラスVロケットによるシグナス補給船運用4号機の打ち上げ
シグナス補給船は米国のオービタル・サイエンシズ社によって開発された、国際宇宙ステーションへの物資補給を行う無人の貨物船で、同じくオービタル社によって開発されたアンタリーズ・ロケットを使い、これまでに計3機が打ち上げられている。しかし、2014年10月29日にアンタリーズが打ち上げに失敗し、4機目のシグナスと共に失われる結果になった。
その後オービタル社では、アンタリーズの運用を2015年いっぱい停止し、改良を行うことを決め、さらにその間のシグナスの打ち上げを、ユナイテッド・ローンチ・アライアンス社が運用しているアトラスVロケットに委託することになった。
改良型アンタリーズの打ち上げは2016年に予定されているが、もし間に合わない場合などには、追加でもう1回、アトラスVを使ったシグナスの打ち上げを行うことも予定されている。
冬: 金星探査機「あかつき」、金星軌道投入再挑戦
「あかつき」はJAXAが開発した金星探査機で、2010年5月21日にH-IIAロケットで打ち上げられた後、同年12月7日に金星を回る軌道に入る予定だった。しかし、金星軌道投入時にスラスターが故障し、軌道に入ることができなかった。
その後の調査で、加圧用のヘリウムタンクから燃料タンクへつながっている配管に取り付けられた、逆流防止用の弁が詰まってしまったこと、またその結果、スラスターが破損した可能性が高いことなどが明らかになっている。それらのノウハウは、「はやぶさ2」などの他の機体の開発で活かされることになった。
「あかつき」は金星を素通りした後、太陽の周りを回っている。また現在、姿勢制御用に使うための小さなスラスターを使って、金星の周回軌道への投入に再挑戦することが検討されている。今のところ今年の冬に実施される計画とのことである。
未定: 長征六号ロケット、デビュー
中国は現在、長征二号、三号、四号というロケットを運用しているが、一方で長征五号、六号、七号、九号、十一号という、まったく新しい次世代ロケットの開発も進めている。そのうち長征五号、六号、七号は、第1段機体やブースターなどを共通化しており、大型ロケットの長征五号に使われるブースターを組み合わせることで、中型ロケットの長征七号、小型ロケットの長征六号が造られる仕組みになっている。
今年はその中で、長征六号が先駆けて初打ち上げを迎える予定だ。また2016年には長征五号と七号の打ち上げも実施される予定となっている。
参考
・http://spaceflightnow.com/launch-schedule/
・http://www.spaceflightinsider.com/launch-schedule/
・http://www.russianspaceweb.com/2015.html