スタイリッシュなハイブリッドタイプ
職種によっては、スマートウォッチ然とした腕時計の使用が禁止されていることがある。明文化されていないとしても、職場の雰囲気としてこの手のガジェットが許されない現場というものもあるのだ。フォーマルなシーンでも、スマートウォッチ然としたガジェットの着用が好ましく思われないことがある。スマートフォンの普及やApple Watchによる知名度の向上によって、状況は変わりつつあるが、そうした職種もあるのだ。
では、そうした職種ではスマートウォッチの恩恵に預かることができないかといえば、そんなことはない。従来型フォーマルな腕時計が求められる場合、「ハイブリッドタイプ」のスマートウォッチを選択するという方法がある。
「ハイブリッドタイプ」とは、見た目が従来の物理的なアナログ腕時計であり、かつ、中身がスマートウォッチになっているものを指す。特徴的なのは、アナログ腕時計の針が液晶を使ったディスプレイ表示ではなく、物理的な針を伴うアナログ腕時計ということだ。一見すると、通常のアナログ腕時計と区別がつかない。
しかし、中身はスマートウォッチそのものだ。心拍計が搭載されており、24時間ライフログを取り続けることができる。針は物理的なものだが、文字盤はその全部または一部が液晶や電子ペーパーになっており、ステータス表示なども行われる。アナログとデジタルが混在したようなデザインだ。このように、ハイブリッドタイプなら、スタイリッシュでありつつも、スマートウォッチの恩恵に預かることができる。バッテリーの持ちもスポーツタイプより長い。これらがハイブリッドタイプの強みだ。
また、ハイブリッドタイプはこんな方にもお薦めできる。職場にスマートウォッチ禁止のルールがないとしても、これまでアナログ腕時計を使ってきたため、スマートウォッチ然とした腕時計に抵抗がある方もいるだろう。そうした人にうってつけなのがハイブリッドタイプだ。デザインは無理なく受け入れることができるんじゃないかと思う。
こう書くといいこと尽くめのように思えるハイブリッドタイプだが、いいことばかりではない。ハイブリッドタイプはスポーツタイプやスマートフォン型のスマートウォッチと比べると機能が少ないのだ。搭載されているセンサーが少なく、収集できるデータにも限りがある。腕時計から得られる視覚情報もかなり限られる。スマートフォンタイプやスポーツタイプならデバイスのみで生活できるが、ハイブリッドタイプはスマートフォンの併用が必須だ。ワークアウトやアクティビティの記録も明示的にはできないものが多い。ハイブリッドタイプは、あくまでも着け続けてライフログを取る腕時計と考えておきたい。
もちろん、ハイブリッドタイプの中には、スポーツタイプに近い機能を備えているものもある。ただし、その場合はバッテリーの持ちが短いことが多い。機能を増やせばバッテリーの持ちは悪くなり、機能が限られればバッテリーの持ちが伸びる。これはどのスマートウォッチにも共通している特徴だ。
スマートウォッチには興味があるがスマートウォッチ然とした腕時計は使いたくない、ライフログの記録は行いたいが積極的に運動や活動をするつもりはなく、生活データを記録して時々見返せればよい、スマートウォッチを使いたいが職場的にデジタル腕時計は使うことができずアナログ腕時計が必要、そんな方にはハイブリッドタイプがお薦めだ。
Fossil HYBRID SMARTWATCH HR
ハイブリッドタイプのスマートウォッチを提供しているメーカーはそれほど多くないが、いくつかのメーカーが代表的なプロダクトを提供している。そうしたメーカーのひとつがFossilだ。HYBRID SMARTWATCH HRというベースラインから、さまざまなデザインのハイブリッドスマートウォッチが提供されている。
ハイブリッドタイプはスマートフォンタイプやスポーツタイプのスマートウォッチよりも低価格帯であることが多い。スマートウォッチとしては値段的にも購入しやすいタイプといえる。
モデル | メーカー価格(税別) |
---|---|
HYBRID SMARTWATCH HR COLLIDER スモークステンレススチール | 31,900円 |
HYBRID SMARTWATCH HR COLLIDER ダークブラウンレザー | 29,150円 |
HYBRID SMARTWATCH HR CARLIE ローズゴールドトーンステンレススチール | 27,500円 |
HYBRID SMARTWATCH HR NEUTRA アンバーレザー | 23,100円 |
Fossil HYBRID SMARTWATCH HRシリーズが提供している主な機能は次のとおり。
- 心拍計
- 加速度計
- 耐水性 (3気圧)
- アクティビティトラッカー
- 友人にワークアウトの挑戦を挑む
- 視覚化されたワークアウトルート
- バッテリー2週間以上(使用状況により異なる)
- バッテリー充電時間 80%まで50分間
機能面ではスポーツタイプのスマートウォッチが優秀だ。ハイブリッドタイプが提供する機能は最低限のものに限られている。また、GPSを搭載していないものが多く、基本的にスマートフォンと連動してGPSを使用する仕組みになっていることが多い。ほとんどのビジネスマンにとってスマートフォンを持ち歩かないことはないと思うので、この点は特に問題にならないだろう。
Withings ScanWatch HR
ハイブリッドタイプのスマートウォッチの中には、スポーツタイプのフラッグシップモデルが提供しているようなライフログ機能を提供しているものもある。WithingsのScanWatchがその代表例だ。Withings ScanWatchはハイブリッドタイプに分類されるが、提供している機能から見れば高性能ライフログモデルとも言える。
モデル | メーカー価格(税別) |
---|---|
Withings ScanWatch (42mm) | ¥34,981(税別) |
Withings ScanWatch (38mm) | ¥32,945(税別) |
Withings ScanWatchは次のような機能を提供している。
- 心拍計
- 歩数計
- 昇降階数
- 移動距離計測
- 睡眠計測機能(深い睡眠と浅い睡眠の状態、不規則な心拍の検出、睡眠中断検出)
- フィットネスレベル:VO2max推定値を介した評価
- 昇降:昇り降りしたメートルと階数
- 防水性能:最大165フィート(50m、5気圧)
- バッテリー30日間(パワーリザーブモードで50日間)
- バッテリー充電時間 100%まで約2時間
Withings ScanWatchは心拍計に加えて、酸素飽和度計測機能と心電図機能が搭載されている。この2つの機能をハイブリッドモデルでありながら備えている点がユニークだ。Withings ScanWatchはバイタルデータを取得して健康管理に生かす点に注力しており、そのためにこうした機能を備えている。
健康改善に主眼を置き、とにかく自分の体をモニタリングしてみたいという場合に最初のスマートウォッチとして適切なモデルのひとつだ。デザインもシンプルでクセがなく導入しやすい。
Garmin vívomove Luxe / Style
スポーツウォッチのメーカーとして紹介したGarminは、アナログ腕時計を備えたハイブリッドタイプも提供している。最近のモデルではvívomove Luxe、vívomove Style、vívomove 3/3Sが該当モデルだ。Garminが提供するスポーツタイプのスマートウォッチと比べると使用できる機能は少ないが、Garmin ConnectなどGarminのクラウドサービスが利用できるという利点がある。
モデル | メーカー価格(税別) |
---|---|
Garmin vívomove Luxe Milanese | 54,000円 |
Garmin vívomove Luxe Leather | 50,000円 |
Garmin vívomove Style Nylon | 39,000円 |
Garmin vívomove Style | 36,000円 |
Garmin vívomove 3 | 30,000円 |
Garmin vívomove 3S | 28,000円 |
提供されている機能は次のようなものだ。
- 心拍計
- 歩数計
- 気圧高度計
- 加速度計
- 環境光センサー
- 上昇階数
- 移動距離
- Body Batteryエネルギーモニター
- ストレスレベル計測
- VO2 max計測
- バッテリー最大4日間(時計モードで7日間)
Garmin vívomoveはガジェットとしてのおもしろさもある。時計針がメーターとして動くのだ。スマートフォンタイプやスポーツタイプのスマートウォッチであれば、数値やグラフとして文字盤に表示されるデータが、Garmin vívomoveでは時計針が物理的に移動して値を指し示す。これはガジェットとして動きの心地よさがあり、なかなかおもしろい。通常、アナログ腕時計でこのように針が動くことはあまりないので、驚きと新鮮味がある。
スマートウォッチは着け続けることに意味がある。そのモチベーションは役立つ機能に限らず、もっと根本的にはカッコいいかどうか、かわいいかどうか、好みかどうか、という点が大きい。vívomoveのようなギミックが好きなら、このデバイスはずっと着けていたいと思うはずだ。スマートウォッチはそこがとても大切である。
ハイブリッドタイプは生活記録を中心とした活用
ハイブリッドタイプは選択肢がそれほど多くない。アナログ腕時計と比べると、スマートウォッチのラインナップはかなり限られるのだが、その中でもハイブリッドタイプはさらに選択肢が限られる。機能もスマートフォン型やスポーツタイプのスマートウォッチと比べると少ない。スマートウォッチの恩恵を最大限に受けるのが難しいタイプではある。
しかし、ハイブリッドタイプはスマートウォッチの導入に抵抗感のある方が最初に導入するためのガジェットとしては悪くない選択肢だ。見た目はアナログ腕時計なので違和感が少ない。アナログ腕時計から自分のバイタルデータがスマートフォンのアプリに入ってくる様子は見ていて面白いと思う。この感覚を体験してもらえれば、次はもっと機能の多い本格的なスマートウォッチを使ってみようという気にもなるのでははいないだろうか。
スマートウォッチを活用するようになると、ウォーキングやジョギング、筋トレ、スポーツなどのアクティビティを記録するようになる。ハイブリッドタイプにはこうした運動を明示的に記録できないもの、機能が提供されていても操作がスムーズではないものもある。運動を組み合わせるなら、スポーツタイプかスマートウォッチタイプを選んだほうがよいだろう。その辺りもスマートウォッチを選ぶ際の参考にしてもらえればと思う。