人々とロボットが共存するために必要となる安全評価基準
現在進行中のプロジェクトとしては、先程紹介した2つも含めるが、海外における日本製ロボットの現地化および海外展開支援として2012年度から2015年度まで行われている「海外実証実験」があり、2014年度から2018年度までの「インフラの維持管理・更新・マネジメント技術開発(戦略的イノベーション創造プログラム)」および「インフラ維持管理・更新などの社会課題対応システム開発プロジェクト」、ロボット介護機器の標準化および実用化・導入促進を目的として2013年度から行われている「ロボット介護機器開発」などがある。そのほか、すでに終了したが(2012年度~2013年度)、IT化したロボットによる実社会におけるさまざまなサービスの提供を目的とした「IT融合研究開発」なども行われた。
また、これまでの日本におけるロボット開発の流れを表したイメージとして紹介されたのが、「ロボットツリー」(画像15)だ。もともと産業用(FA)ロボットは日本が非常に強いわけだが、それが根っこもしくは地面としてあり、その次に力を入れて開発されたのがヒューマノイドだった。しかし、現状の技術力ではヒューマノイドが我々の生活の中に入って、例えばお年寄りの手を取って歩くといったことができるかというとまだまだ難しい状況で、まだまだ先の技術である。
そこで、今はその先を目指しつつも、そうした研究開発の中で生まれてきた技術を社会に還元していく必要が出てきているので、ヒューマノイド以外の形態も含めて、どのようにしたら実際に我々の生活の中に導入できるかということを進めているのが現在のフェーズというわけだ。さまざまな分野での応用が考えられており、オフィスや物流、病院、移動などにも展開していこうとしている段階でもあるのである。こうして社会に入っていく時にはどれだけ安全かということが重要になり、そのためには評価する手法や基準なども必要というわけだ。
なお弓取部長は、生活支援ロボット実用化プロジェクトとしては、移動作業型ロボット、装着型ロボット、搭乗型ロボットなどを開発し、また安全検証の認証方法についての検討が行われ、特にISO13482が国際基準として正式に発行されたことは非常に大きな成果だとする(画像16)。それだけでなく、安全認証としては認証することを事業として起こして、ロボットを社会に役立てるウィンドウとしての施設の、そしてノウハウを蓄えていくことを目的として安全検証センター(画像2)を設置し、これは世界でも初めての試みとなったというわけだ。
ただし、安全検証センターに関しても、欧米中韓が追随しており、このままにしておいてはいけないという。どんどん使える形にして、人とものとがグローバルに安全検証センターに持ち込まれるようにし、ノウハウや情報が蓄積されるようにして、ロボット業界の世界的な先端の立場を築くことがポイントだとし、NEDOでもこうした環境を今後も支援していくとしている。
この後、冒頭で紹介した4名による講演が行われ、さらにその後は体験会として、セグウェイ(画像17)およびトヨタの立ち乗り型パーソナルモビリティ「Winglet」(画像18)の試乗、ホンダ「歩行アシスト」(画像19)の装着体験が行われ、つくば市役所と同じつくばエクスプレスの研究学園駅が最寄り駅(同駅から徒歩1~2分の線路高架沿いにロボットスーツ「HAL」のサイバーダインもある)である安全検証センターの見学会が行われた。安全検証センターの見学会の模様も個別にお届けする。