JQAがISO13482の認証スキーム設計する上で参考にした国際規格として先程紹介したのが、ISO/IEC17067の「適合性評価-製品認証の基礎および製品認証スキームのための指針」だ。適用範囲、引用規格、定義、製品認証の概念、製品認証の目的など、その詳細をまとめたのが画像79・80である。ISO/IEC17067は2013年に策定され、それに対応する国内規格「JIS Q 17067」は2014年に策定された。なお、製品認証を行って認証機関が証明書を発行することはリスクテーク(危険を承知で実行すること)の一部になるので、JQAのような認証機関、メーカー共にPL対応と共に、保険に加入しているという。
画像81は、ISO/IEC17067もしくはJIS Q 17067における製品認証システムの構築をまとめたものだ。6つのアクティビティ(段階)に分けられており、その内容は、「選択」、「特性の確定」、「レビュー」、「認証の決定」、「証明・ライセンスの授与」、「サーベイランス」となっている。スキームのタイプは8種類あり、どのアクティビティを扱うかが異なる形だ。この中で、JQAが採用したのはフルオプションの「システム5」(選択欄の数値が5の列)ということである。
すでに製品市場が形成されていて、事故事例やデータなどがあり、明示された要求事項が規格として存在しているような家電や自動車などの場合は、このようなフルオプションである必要はないそうだが、いうまでもなくサービスロボットはその対極の状況なので、日本が国際的に先陣を切るという戦略も含め、また安全な製品を世界に供給していくという観点からもシステム5が採用されたというわけだ。
今の説明をもう少し詳しく展開したのが画像82「サービスロボットの認証スキームについて」だ。左側は、前述した6つのアクティビティを表したもので、各アクティビティにおける詳細が右にまとめられている。まず選択(モデル単位のサンプリング)だが、これは適応規格と評価の対象における選択のことだ。適用規格はもちろんISO13482で、評価の対象は設計管理体制、リスクアセスメント、製品の安全性評価となる。
評価対象をもう少し具体的にいうと、これは産業技術総合研究所(産総研)の比留川部門長の講演の中で説明したが、ISO13482の構成(画像83)の中にある、5項目目の「安全要求事項と保護方策」、6項目目の「安全関連制御システム要求事項」、7項目目の「検証と妥当性確認」などだ。
次の特性の確定(評価)は、「評価手法と評価基準の確定+評価活動」として2つのフェーズがあり、フェーズ1は、設計管理体制の評価、設計コンセプト検証、設計検証などとなる。フェーズ2は、製造現場の品質管理体制評価+製品試験だ。フェーズが2つに分けられているのは、ここが重要であることが理由だ。ここでしっかりしておかないと、製品実現のステージに入ってからNGが出てしまうと、手直しが利かなくなってしまう。よって、まずはここをしっかり固めてもらうということで2つに分け、特にフェーズ1を重視しているのである。フェーズ1をクリアして初めて実際に製品を作り、量産のための生産ラインの品質管理、製品そのものの妥当性などのフェーズ2に移れる仕組みになっているのだ。
続いて、得られた評価活動の結果(評価結果)の検証を行うのがレビューのアクティビティである。さらに、それが間違いなく規定事項を満たしているのが確認されたら、その次のアクティビティである認証の決定となり、そして認証契約の締結、つまりはライセンスの授与となるというわけだ。これにより、製品にISO13482の安全規格を満たしている認証マーク(画像84・85)を貼れるようになるのである。ちなみにマークの右側は何を意味しているのかというと、四角がロボットで丸が人を表す。要は、人とロボットの共存を意味し、JQAの社内公募で決まったという。ただ、左側のいかにも規格のロゴシールらしいデザインのみを貼る場合もあるそうである。
アクティビティ最後のサーベイランスは、ライセンス授与(認証)後の話で、認証されたことが維持されているかどうか、市場に出ている量産製品の中からランダムに抜き取りして評価を行うというものだ。これを行うことで、間違いなく量産製品が安全な状態が維持されていることが確認できるというわけである。
画像84(左):JQAのISO13482の認証マーク。画像85(右):HALが認証を受けた時点では正式版ではなくDIS番のため、左下の書き込みがISO/DIS 13482となっている |