大企業ならともかく、中小企業でLANを構築してサーバを導入するという場面では、サーバ専用機ではなく、クライアント用のデスクトップPCを使っている場合が少なくないかもしれない。しかし、中小企業ではネットワークの運用・管理のために割くことができる人手が少ないことが多いため、そうした場面でこそサーバ専用機を使って「安心」を買うべきだと力説したい。その理由について、そして、サーバ専用機で動作するWindowsサーバによって安心・安全なサーバ環境を実現するためのノウハウについて、何回かに分けて解説することにしよう。

サーバ専用機の利点

サーバ専用機というと、「値段が高そう」あるいは「敷居が高そう」と感じられるかもしれないが、実際にはそれほど突出して価格が高い訳ではないし、いわゆるPCサーバであれば、基本的なハードウェアの構成は馴染み深いクライアントPCに近い。装備しているインタフェースも同じような内容だ。

たとえば、富士通が販売しているPCサーバ「PRIMERGY」、タワー型の匡体を使用している「PRIMERGY ECONEL 100 S2」の場合、背面パネルにはPS/2のキーボードとマウス、アナログ方式のディスプレイ、USB(6個)、ギガビットイーサネット、といったコネクタが並んでいる。拡張スロットはフルハイトのPCIスロットが4基ある。

一方、薄型の筐体を使用している「PRIMERGY TX120」では、USBコネクタの数が2個に減っているほか、拡張スロットがPCIハーフハイトになっている。このように、小型のサーバ専用機ではインタフェースの内容が違ってくるため、製品選択に際しては注意したいポイントとなる。

「PRIMERGY ECONEL 100 S2」の背面パネル。PS/2のキーボードとマウス、アナログ方式のディスプレイ、USB(6個)、ギガビットイーサネット、といったコネクタが並んでいる

「PRIMERGY TX120」の背面パネル。匡体が小型になっている分だけコネクタの数が少ない。イーサネットのRJ-45コネクタが2個あるのは、10BASE-TX/100BASE-TX兼用のものと、10BASE-T/100BASE-TX/1000BASE-T兼用のものが別々にあるため

ハードウェア面におけるサーバ専用機の特徴は、長時間の連続運転を前提にして設計している点にある。そのため、筐体の内部に熱がこもらないように、匡体の前面・背面には多くの通気孔が開いている。さらに、内部を見ると前面に吸気用、背面に排気用のファンを設置しており、それらを結ぶ空気の流路上にマザーボードやハードディスクといった熱発生源を配置して、冷えやすくしてある。

「PRIMERGY ECONEL 100 S2」の筐体内部。前面パネルの裏側に、大型の冷却ファンを取り付けてある様子が分かる

内蔵するHDDの数が多く、しかも冷却ファンまで複数装備しているとなると、気になるのは騒音だろう。サーバルームに収容していれば問題にならないが、オフィスの片隅にサーバを設置するときには騒音が大きいと困る。しかし、PRIMERGY ECONEL 100 S2もPRIMERGY TX120も、実際に運転してみると意外なほど静かだ。よほど台数があれば別だが、台数が少なければ騒音はまったく問題にならないだろう。

バックアップ機能とRAID

また、サーバではバックアップ機能を無視することはできない。最近では情報漏洩防止の観点からサーバに情報を集中する傾向が強まっているから、そのサーバに置かれたデータをきちんとバックアップしておかなければ、万一の際の損失は途方もないものになってしまう。

もちろん、サーバ専用機ではRAID(Redundant Arrays of Inexpensive Disks)を用いてハードディスクの故障に対応できるようにしている場合が多いのだが、RAIDはあくまで、ハードディスクの故障が発生してもデータの損失が発生しないようにするためのものであり、サーバ本体の故障、あるいはRAIDコントローラの故障には対応できない。だから、RAIDを使用していたとしてもバックアップは必要だ。

PRIMERGY ECONEL 100 S2やPRIMERGY TX120の場合、DATテープドライブあるいは内蔵データカートリッジドライブユニットをドライブベイに内蔵できるため、これとWindowsサーバのバックアップツール(OSがWindows Server 2008の場合を除く)、あるいは市販のバックアップ用ソフトウェアを組み合わせることで、データのバックアップ体制を実現できる。 DATドライブ付き、あるいは内蔵データカートリッジドライブユニット付のサーバが1台あれば、ネットワーク経由で他のサーバのデータをバックアップすることもできる。また、ほかにもさまざまなオプションが用意されている。

「PRIMERGY ECONEL 100 S2」の前面パネル。DVD-ROMドライブと並んでDATテープドライブあるいは内蔵データカートリッジドライブユニットを組み込むことができる

「PRIMERGY TX120」の前面パネルを開けると、DVD-ROMドライブやDATテープドライブとともに、2.5インチHDD×2台分のドライブベイが現れる

サーバ専用機ならではの安心を

このほか、サーバ専用機ではメーカーのサポート体制が充実しており、導入・据え付けだけでなく、故障発生時の修理対応などについても一般的なクライアントPCより手厚い体制を敷いているのが普通だ。

IT抜きでビジネスが成り立たなくなっている昨今では、サーバの停止はビジネスの停止につながる。そうした事態を避けるために、サポート体制が充実したサーバ専用機の導入には大きな意味があるといえるだろう。トラブルが発生してから対応のために費用をかけるよりも、トラブルを未然に防止するために費用をかける方が、トータルでは得になるからだ。

本連載で使用している富士通のPCサーバ「PRIMERGY ECONEL 100 S2」「PRIMERGY TX120」の詳細は、同社のWebを参照してほしい。また、高鹿陽介氏による開発責任者へのインタビュー記事「サーバの信頼性はハードで決まる!!」も掲載中だ。