その道を極めた研究者ならば、きっと愛してやまないお気に入りのものがあるはず――。本連載ではさまざまな分野で活躍されている研究者の方々に、ご自身の研究にまつわる“好きなもの”を3つ、理由とともにあげていただいています。
今回は、カラスの音声コミュニケーションや"カラス食"に関する研究を行っているカラス研究者 塚原直樹さんの「好きなカラス料理のレシピ」をご紹介いたします。
研究者プロフィール
塚原直樹 (Naoki TSUKAHARA)
1979年群馬生まれ。宇都宮大学にてカラスの音声コミュニケーションや視覚に関する研究などに携わった。現在は総合研究大学院大学にて異分野連繋型研究や専攻横断型教育の支援業務を行うかたわら、カラス研究を続けている。鳴き声等でカラスの行動をコントロールし、追い払う装置の開発も行う。最近、カラスに似せたドローンやカラスの剥製ロボを使ってカラスを騙し、対話することを試みている。また、有害鳥獣として捕獲され、ただ処分されるカラスを有効利用できないかと、カラス肉の安全性や栄養機能、市場性、受容性の調査を行っている。ちなみにカラスの肉は、高タンパクで低カロリー、そして、鉄分とタウリンが豊富であり、食材としての価値は高い。料理や居酒屋巡りが趣味。いずれは居酒屋を開きたいと思っている。
1. カラスの麻婆豆腐
味でいったらこれ! カラス料理のレシピ開発会にて、素直に美味しいと思ったレシピ。本場の麻婆豆腐はひき肉を最初にしっかり炒め、パラパラの食感を出しますよね。カラスの肉には硬さがありますが、それが本場の麻婆豆腐と同様に歯ごたえを感じる仕上がりになります。包丁で肉を叩いて粗びきに仕上げれば、豚ひき肉では味わえない深みのあるカラス肉の味を堪能できます。ニンニクと生姜で臭みも消えますので、ジビエ初心者でも抵抗なく挑戦できるカラス料理でしょう。甜麺醤や豆板醤でコクと辛味を加え、本場の四川のレシピ同様、山椒をたっぷり効かせるのがオススメです。
2. カラスの燻製
カラス料理を市場に出すことを考えたとき、味、保存性、簡便さを考慮すると一番現実的なレシピは燻製かと思います。燻製の前に肉に下味をつけますが、塩コショウ味、クレイジーソルト味、カレー味、ジャーキー風味などいくつか試したところ、甘味があるジャーキー風味の味付けが、一番人気がありました。ジャーキー風味のレシピは、まず赤ワインやしょうゆ、砂糖などでタレを作り、そこに薄切りにしたカラスの胸肉を一晩漬けます。その後、脱水シートで水分を抜き、桜のチップで30分くらい燻製させて完成です。ビーフジャーキーっぽいけど、表現しにくいカラス独特の風味があります。ビールやウイスキーのおつまみに最高ですよ。お土産コーナーでカラスジャーキーが並ぶ日も近いか!?
3. ローストクロウ
インパクトでいったら、丸鶏ならぬ丸カラスをそのままローストしたローストクロウでしょう。塩、コショウ、ニンニク、ハーブ、レモン、ハチミツ、オリーブオイルでしっかりマリネ。ハチミツの甘さを効かせるのがポイントです。130℃くらいに温めたオーブンで、低温で長時間かけてじっくり焼きます。ときどき、ハチミツとオリーブオイルを混ぜたものを刷毛で塗り、照りを出します。ローストクロウを食べるときは豪快にかぶりついてほしいです。皮が若干固めではありますが、肉は深い旨みを感じます。ターキーや地鶏のような比較的淡白なモモ肉と、カモのように野性味あふれるジビエらしさを感じる胸肉の味の違いを楽しんでいただきたいです。重めの赤ワインとカラスの胸肉はまさにマリアージュ!