大型のパーツを設計するにあたって、そのサイズ、形状、樹脂の種類などバランスを考えて検討することが非常に重要です。パーツが大きくなるにしたがって肉厚はより厚くなる傾向にありますが、必要以上に厚くしすぎると外観上の問題や構造上の整合性を損なうなどのリスクが高まります。そのリスクを軽減するためには均一の肉厚、抜き勾配、角Rをつけるなどの射出成形パーツの設計において守るべきルールに従った設計が重要性を増します。

まずはサイズについて取り上げましょう。弊社で製造できるパーツの最外形(横 x 縦)サイズは、約530mm x 330mmで、最大の体積は約350,000mm3です。なお、パーツの深さが増すと、深さ25mmごとに、最外形(横 x 縦)のサイズが、それぞれ50mmずつ減少します。

  • 深さ25mmの場合、480mm x 280mm
  • 深さ50mmの場合、430mm x 230mm
  • 深さ75mmの場合、380mm x 180mm

図1:ABS樹脂で成形した500mm x 300mm x 10mmのパーツ

パーツの深さはパーティングラインから最大で75mm、パーティングラインがパーツの中心にある場合には、金型固定側(キャビ側)、金型可動側(コア側)それぞれ75mm、合わせて150mmまで対応可能です。実際のパーツに例えると、深さが75mmのカップ形状や、高さが150mmで中心にパーティングラインのあるH鋼のような形状になります。

図2:対応できる最大の深さはパーティングラインから75mm、パーツの中心にパーティングラインがあればトータルで150mmです

抜き勾配はどのようなパーツを射出成形する場合にも重要ですが、大きさ、深さが増すほど、側面やリブに対して大きな抜き勾配をつけることが、金型からのスムーズな離型を実現するにあたって重要になります。Protomoldの場合には、深さ25mmごとに、約1度の抜き勾配を推奨します。抜き勾配の付け方がよく分からない場合は、弊社の無料解析をご活用ください。パーツの3Dデータをアップロードしていただければ、抜き勾配の向きや最小限必要な勾配の大きさについて3Dでご案内します。製品機能上、抜き勾配を適用できない場合は金型構造を見直したり、3Dモデルの変更が難しい場合はプロトラブズにてモデル変更を行うこともできます。

肉厚も非常に重要な要素で、大きくて重量のあるパーツの品質を向上させるうえでも考慮する必要があります。射出成形において推奨される肉厚は使用する樹脂によって異なり、1~3mm程度が理想ですが、プロトラブズの最大パーツサイズであれば肉厚3mmもあれば樹脂の流動(充填)面では特に支障はありません。もし、肉厚が薄い場合や形状が複雑な場合は、Protoflow 流動解析にて検討を行い、結果を見積り画面上でご確認できます。逆に過度な厚肉の場合は、外観のヒケやボイド、過度な収縮による変形や寸法不良をきたす可能性があります。肉厚をより均一に設計することが、パーツの変形や品質の向上につながるのです。

鋭角の角よりも、滑らかなカーブに沿った形状のほうが樹脂の流れもスムーズになります。したがって、直角に曲がる箇所に対しては角Rをつけることが推奨されます。適切な角Rをつけることは応力集中を低減し、パーツの変形を低減することにもつながりますが、だからと言ってむやみに大きなRをつけると、肉厚が厚くなってしまいパーツの外側でヒケが発生する原因にもなり得ます。

パーツの大きさに関わらず、どのような樹脂を選択するかは、バランスが取れた設計を行ううえで欠かすことのできない大事な要素です。ポリカーボネートやガラス繊維を含有した流動性の低い樹脂を使う場合には、その性質を考慮した設計やゲートの数を増やしてショートショットのリスクを減らす必要があります。樹脂の充填について大きな懸念がある場合には、Protoflow流動解析結果を見積り上で確認できるようにします。これによって、修正の必要性がある問題個所を特定しやすくなります。

3D CADモデルがアップロードされると、弊社の見積りシステムが、他に考慮すべき点、外観や材料の流れなどに影響を与える可能性のあるエジェクタピンやゲートの配置などについてご提案します。弊社が製作できる最大のサイズを超えてしまった場合でも、パーツ形状や金型構造によっては製作できる場合がありますのでぜひご相談ください。

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ご参考:

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本コラムは、プロトラブズ合同会社から毎月配信されているメールマガジン「Protomold Design Tips」より転載したものです。