今年もStack Overflowから年次開発者調査が発表されました。これは筆者も毎年楽しみにしているアンケートです。プログラミング言語の人気投票や言語別の給与調査、今後学びたい技術が分かりやすく視覚化されており、IT業界の勢力図の確認に役立ちます。過去の本連載を振り返りつつ結果を見てみましょう。

  • 2023年Stack Overflow年次開発者調査

    2023年Stack Overflow年次開発者調査

最も人気のある言語は11年連続であの言語

そもそも、Stack Overflowの年次開発者調査(Developer Survey)とは、プログラマーのためのコミュニティサイトであるStack Overflowが、2011年より毎年行っているアンケートです。今年は、世界中(185カ国)のIT技術者9万人が投票しました。日本人の回答率は0.41%と低いものの、世界的な情勢が日本にも大きな影響を与えるため参考になることでしょう。

それでは、早速「最も人気のあるプログラミング言語」の結果を見てみましょう。次のグラフは「プログラミング言語・スクリプト言語・マークアップ言語」部門の結果(上位の抜粋)です。実際には50以上の言語が列挙されています。

  • 2023年最も人気のあるプログラミング言語のグラフから抜粋

    2023年最も人気のあるプログラミング言語のグラフから抜粋

今年、最も人気のあったプログラミング言語の第1位はJavaScriptでした。JavaScriptは11年連続で最もよく使われるプログラミング言語であり人気の言語でした。JavaScriptはブラウザに標準搭載されているだけでなくバックエンドでも人気の言語です。

本連載でも6回目「JavaScript」を紹介した上で、8回目「TypeScript」、34回目「Deno」と関連技術やランタイムについて取り上げています。実際に幅広く使われており、人気があるだけでなく、今でも欠かすことのできないプログラミング言語であることが確認できました。

人気言語の第2位はHTML/CSSであり、第3位は大人気のプログラミング言語Pythonです。PythonはAIに強い言語であり、昨今のAIブームを牽引したプログラミング言語です。本連載の第2回で紹介しました。AIに強い言語と聞くと難しそうなイメージを持つ人もいるかもしれませんが、Pythonはプログラミング初心者にとって学びやすい言語でもあります。

次いで人気第4位は、SQLです。SQLはデータベースを操作するのに欠かせない問い合わせ言語です。本連載の15回目で紹介しています。

続いて、TypeScript、シェルスクリプト、Java、C#、C++、C、PHPと続きます。いずれも、多くのプログラム開発の現場で使われている重要な言語です。

なお、去年と比較すると、Lua、Elixir、Lisp、Bash/Shell、C、Ruby、Perl、Erlangが順位を上げました。特に、組み込み用途で使われるスクリプト言語のLuaは7つも順位を上げました。

なお、Luaの躍進については、連載の45回目「2022年に飛躍した3大言語はどれ?」でも取り上げました。海外で人気のゲームプラットフォームであるRobloxがLuaをメインのプログラミング言語として採用していたことから評価されています。Luaは筆者も大好きな言語の一つで、連載の24回目で取り上げています。

開発者から最も称賛されている言語は?

ちなみに、去年までのDeveloper Surveyでは、開発者から最も愛されている言語の部門があり、Rustが連続で一位を獲得していましたが、今年から指標が変わりました。去年は「Loved vs. Dread」(愛され言語 vs 恐怖の言語)でしたが、今年は「Desired + Admired」(求められる言語 + 賞賛される言語)という指標になりました。次のグラフが集計結果です。この指標により、テクノジーに対する過剰な期待と現実を可視化したいという狙いがあるようです。

  • 2023年求められ称賛されるプログラミング言語のグラフから抜粋

    2023年求められ称賛されるプログラミング言語のグラフから抜粋

グラフの青い点が「使ったことがないけど使いたい(Desired)」という人の割合であり、赤い点が「実際に使ってみて今後も使いたい(Admired)」という人の割合を表しています。つまり、青い点と赤い点の「幅が広い」ということは、期待以上の良い言語であることを示し、その逆に幅が狭いということは、宣伝通り(または噂通り)であることを表しています。

例えば、最も人気のある言語であるJavaScriptは幅が比較的狭い言語です。これは、ある意味で期待通りの言語であることを表しています。これに対して、Rustは幅が広く、一度使い始めたら、もっと使いたいという欲求をかきたてる良い言語であることを示しています。なんと、Rustを使った84.66%の開発者が使い続けたいと述べています。

それで、このグラフから、今年、最も賞賛されている言語がRustであることが分かります。他にも、ElixirやZig、Clojure、Rakuなども幅が広く中毒性のある言語であることが分かります。

なお、Rustについては本連載の1回目で紹介しています。

給与の高いプログラミング言語

また、Developer Surveyで気になるグラフの一つに、給与の高いプログラミング言語があります。やはり専門性の高い言語や新しくて習得者の少ない言語での給与が高くなっています。今年最も稼げるプログラミング言語は、Zig、Erlang、F#となっています。

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