Q

「私にはもうできません」 ある日突然、プロジェクトのリーダーを任せている部下から相談を受けました。確かに、度重なる予算や人員の削減といった要素がプロジェクトに負荷をかけていたのは事実ですが、「できる人材」だと思って仕事を任せていたので……どのように対処すればいいのかわからなくて困っています。(IKさん)

A

仕事ができる人に業務が集中し、過剰な負担がかかるのはどの職場でも同じです。昨今のように、厳しい環境になればなるほどその傾向は顕著になるでしょう。

筆者の周囲でも、景気悪化を嘆く声が、あちらこちらから聞こえてきます。ただ最近は、その影響の現れ方が多岐に渡っていることが特徴的です。

「クライアントの倒産」「業務縮小」「会社の体制変更」……客観的に見てもわかるこのような環境の変化とは別に、一見するとわからない問題が組織内部で発生しているということもたくさんあります。その一つが、今回の相談内容のようなお話です。

表面的には黙々と仕事こなしていても……

このような相談を受けた場合は、「今は大変な時期だから頑張れ」などと場当たり的な対応をするのではなく、「なぜ部下がそのようなことを言うようになってしまったのか?」をきちんと考える必要があります。

そもそも受託の開発プロジェクトには、見積りの段階で「なんとかやりくりして利益を見込んでいる」といった案件が少なくないはずです。そんな状況に追い打ちをかけるように予算や人員の削減といったお達しがあれば、現場に相当のプレッシャーがかかるのは当然です。

相談内容から判断すると、あなたはこの部下を信頼していて、仕事を安心して任せていたことでしょう。もしかすると社内や客先などで「うちのエース」などと言って部下を持ち上げ、「放任」という大義名分のもと、実際には「放置」していたということは考えられないでしょうか?

このような部下は、表面的には「業績が……」「景気が……」といった外的な要因を理解し、時には理不尽とも思える経営陣のメッセージを受け止め、責任感を持って仕事を黙々とこなすことができます。

現場で一緒に働く常駐スタッフや外注先に支払額の減額交渉を行ったり、減った人的リソースの穴を埋めるためにストレスを感じながらもフル回転で働くことでしょう。

しかし、そんな彼の頭の中には常に「こんな状況になったのは果たして自分のせいなのだろうか?」という、消化できない思いが残ったままです。

『出典:システム開発ジャーナル Vol.9(2009年3月発刊)
本稿は原稿執筆時点での内容に基づいているため、現在の状況とは異なる場合があります。ご了承ください。