スマートフォンアプリ「モンスターストライク(通称:モンスト)」や「共闘ことばRPG コトダマン」、「家族アルバム みてね」など、SNS「mixi」からコミュニケーションを軸としたさまざまなサービスを展開するMIXI。

以前紹介したように、同社は2020年3月にスクランブルスクエア(東京都 渋谷区)へ本社オフィスを移転したが、その直後に新型コロナウイルスの影響を受けることとなった。

コロナ禍での働き方の変化やオフィス利用ニーズの変化を受けて、同社は本社オフィスを一部改装した。「For Communication(フォー・コミュニケーション)」のコンセプトを残しつつ、変化を遂げた新たな空間を見学してきた。

  • オフィスからは渋谷の象徴ともいえる「スクランブル交差点」が見える

    オフィスからは渋谷の象徴ともいえる「スクランブル交差点」が見える

コミュニケーションを生み出すMIXIらしいオフィス

2020年にスクランブルスクエアに移転した新オフィスは、社員同士のコミュニケーション創出をコンセプトとしていた。役員席などは設けず、グループ会社のスタッフも含めて同じ空間内で偶発的なコミュニケーションが生まれる空間をデザインした。

オフィスのエントランスに入ると、大型のモニターに映像が映し出されている。「多様性」や「コミュニケーション」など、さまざまなテーマの映像が代わる代わる投影されるので、眺めているだけでも楽しい。

オフィスエントランスにはユニークな映像が投影される

エントランスから続く内階段を降りると、社内外の人とのコミュニケーションが生まれる「Bazzar」エリアが広がる。コンビニや社員食堂、カフェなどもこのフロアにそろっている。あえて入り組んだ構造としているのは、「渋谷の裏路地っぽさ」を意識しているからだという。

余談となるが、オフィスに入居するコンビニは街中のコンビニと比較して、限定商品などが売り切れにくいため、社員からは人気なのだそう。

  • 「Bazzar」エリア

    「Bazzar」エリア

  • 取材日のランチメニュー

    取材日のランチメニュー、ビュッフェ形式で何を選んでも1グラム1円と分かりやすい

カフェも有人の店舗が入居する。そのため、店員とのコミュニケーションが生まれやすい。

  • カフェ

    カフェ

コロナ禍で進化した2つの新エリア

新型コロナウイルスの影響を受けて出社をはじめ日常の行動が制限され、オフィスのあり方を問われた企業も多いだろう。MIXIも同様にオフィスの価値について再考したという。

同社はそうした中で、事業領域が近い大手IT企業のオフィスを参考にした。そのような企業は従業員の構成比率や導入しているツールなどが似ているため、参考になるそうだ。

執務エリアの構成は比較的シンプル。席替えをしても同じ環境で業務ができるよう、デスクのスペックは統一している。また、座席を碁盤の目のように配置することで、急な人員の増減や組織の変化にも対応できるよう設計した。

オフィスの出社率は月平均で約40%。出社率は制限することなく、個人や部署に応じて自由に選択可能だという。オフィスは縮小せず、オフィスの使い方や設備を多様な働き方に合わせてアップデートすることで、オフィスでしか遂行できない仕事に対応できるようにしている。

オフィス設計の担当者は「家で仕事をするのが普通な時代になる中で、オフィスに来てよかったなと思える空間を作りたい。家ではできないがオフィスだからこそできる仕事があると思うので、こうした時代だからこそオフィスに投資したい」と語っていた。

コロナ禍を経て新設した代表的な空間が、「ファミレスブース」と「DEEP ZONE」の2つ。出社した社員が気軽に集まれるスペースや、出社して1人で集中できる半個室がほしいという要望にそれぞれ対応した。

ファミレスブースはその名の通り、ファミリーレストランのような向かい合わせのソファ席が備えられている。利用時は予約が不要で、食事やリモート会議なども可能だ。お弁当を食べながらちょっと相談、のような使い方ができる。もちろん休憩を目的とした利用も可能。

  • ファミレスブース
  • 気軽なコミュニケーションが生まれる「ファミレスブース」

    気軽なコミュニケーションが生まれる「ファミレスブース」(写真提供:MIXI)

「DEEP ZONE」は薄暗い空間の中で、個人の作業に集中するための席。リモートワークが浸透する中で、「自宅には自分の他にもリモートワークで仕事をする家族がいる」「自宅ではデスクやモニター、ネット環境の整備が難しい」といった要望に対応するエリアだ。

全28席をついたてで仕切り、没入感のある空間とした。4Kモニターや曲面ウルトラワイドモニターなど、席によってさまざまなモニターが備えられている。こちらは休憩や飲食が不可。

  • 集中して作業するための「DEEP ZONE」

    集中して作業するための「DEEP ZONE」(写真提供:MIXI)

DEEP ZONEの隣には、個人が休憩するための「REST ZONE」を構築。半個室型のソファ席などを設け、DEEP ZONEのように薄暗い照明となっている。こうした仕掛けには、メリハリを付けた業務を支援する狙いがあるのだという。

  • ゆっくり休憩できる「REST ZONE」

    ゆっくり休憩できる「REST ZONE」(写真提供:MIXI)

オフィスを一度作って終わりにするのではなく、社員の声を取り入れながら変化を続けるMIXIのオフィス。これまで多くのコミュニケーションを生み出してきた同社は、前身のイー・マーキュリー設立から数えて25周年を迎える。コミュニケーションの創出を意識したオフィス空間から生まれる、また新しいつながりを作り出すサービスが楽しみだ。