SNS(Social networking service)である「MIXI」やスマートフォンアプリ「モンスターストライク(通称:モンスト)」など、友人や家族などと一緒に楽しむコミュニケーションサービスを展開するミクシィは、2020年3月に渋谷スクランブルスクエア(東京都 渋谷区)にオフィスを移転した。
今回は、移転直後から長期化しているコロナ禍を経た、同社の新オフィスに関する取り組みを見学してきたので、その様子をお届けしたい。
新オフィスのデザインコンセプトは「街をつくる」だ。設計当時の同社のミッションである「フォー・コミュニケーション」と、ステートメント「ユーザーサプライズファースト」を融合するとともに、長らく渋谷を拠点とする同社らしく、多種多様な文化が入り混じって成長を続けている同地域のカルチャーを取り入れたという。
さまざまな人が集まり、コミュニケーションが生まれながら一体感を持って働ける街のようなオフィスづくりを目指したとしている。
同社は渋谷スクランブルスクエアの28階から36階にオフィスを構える。28階から34階が執務フロアで、35階と36階には来客スペースや会議室、社員食堂、配信用のスタジオ、マッサージ室などを設けている。すべての階は階段で接続されており、歩いて移動できるのが特徴的だ。
ここからは各フロアの様子を実際に紹介しよう。
36階は「Museum」がテーマ。展示物や映像、インテリアなどを通じて、来客にミクシィの取り組みやイメージを見せる狙いがあるという。受付スペースを備えるため、同社を訪れる来客は一度ここを通ることとなる。
受付スペースに入って最初に目を引くのは、幅20メートル超の大型LEDモニターだ。高精細な画面には、同社の具体的なサービスやプロダクトではなく、企業のプロモーション映像や渋谷区をテーマにした抽象的なアート映像などを投影している。
待合スペースは非常に開放的。晴れた日には渋谷駅周辺エリアを一望できるそうだが、残念ながら取材時は曇っていた。
このフロアでは、ユニークな会議室として、オブザーブ席を設けた部屋を2部屋備えている。部屋の中央には10数名掛けの机と椅子を備え、その周囲にソファ席を置いた造りだ。ソファ席にも電源を引いているため、長時間の利用にも対応する。
会議室中央の天井にはスピーカー兼マイクを設置している。オブザーブ席からの声も拾えるよう数日間かけて機能を調整したようだ。
また、会議室中央の机にはコンセントのほかに、充電ケーブルやHDMIケーブルも収納している。コンセントの周囲に溝を作って堀のような構造とすることで、飲み物をこぼした際の漏電を防ぐ工夫を施している。
35階のテーマは「Bazaar」だ。路地を歩くように、さまざまな場所が混在することによるコミュニケーションの創出を狙う空間となっている。
開放感のあるこのフロアでは、数多くの植物がとても目立つ。これらはイミテーションではなく、本物の草木を植えているという。アウトドアにも利用できるオフィス家具を配置し、来客との軽い打ち合わせや従業員同士のちょっとした会話を促す。
35階にもユニークな会議室が2部屋ある。壁面にLEDモニターを埋め込んであり、壁いっぱいに映像を投影できる会議室だ。投影できる画面は最大4つで、4画面を映した際には縦横比をスマートフォンに合わせられる。そのため、複数人でゲームをマルチプレイで遊ぶような使い方もできるとのことだ。
撮影スタジオは、同社が初めて設計段階から携わった空間だという。以前のオフィスにもスタジオを設けていたが、会議室を改修してスタジオとして利用していたという。同社が配信している、モンストの最新情報を伝えるYouTube動画「モンストニュース」などもこちらのスタジオから届けられているようだ。
28階から34階の執務フロアは、「Town」をテーマとしている。渋谷の街とのつながりを感じる開放的な空間で社員の業務を支える。
デスクは基本的に幅1400ミリメートルの同一サイズで、昇降機能を持つ。現在は社員一人一人に1席ずつ割り当てる完全固定席を採用しているようだが、試験的にグループ単位のアドレス制も検討しているとのことだ。
上司と部下の1on1ミーティング専用の部屋は、両社が相対しないよう半円型の机を置いている。圧迫感を感じない程度の広さとすることで、円滑なコミュニケーションを狙う。
そのほか、防音機能を持つ少人数ブースを1フロアあたり4台ずつ設置している。今後は段階的に増やしていくようだ。
さて、35階で忘れてはいけないのが社員食堂だ。新型コロナウイルス感染症が拡大し始めた当初はパッケージ型の弁当を提供していたとのことだが、2021年頭からは現在のようなビュッフェ形式で食事を提供している。出社している社員の約7割がこの食堂を利用しているという。
料理は日替わりで10以上の中からセルフサービスで選べるデリのほか、麺類やカレーなども提供している。ビュッフェは1g1円と、会計も非常にわかりやすい。白米や揚げ物などを取らずに、ブロッコリーやサラダなどヘルシーだが割と高単価な食事を取る社員もいるそうだ。