我々の食文化と密接な関係にある「卵」と向き合い続けて約半世紀。愛知県に拠点を構え、育雛・養鶏から加工までの工程を一貫して手がけてきた三州食品は、あらゆる角度から卵の魅力を世の中に広めている。常に卵ビジネスにおける未踏領域を模索し挑戦を絶やさない同社。代表の岩月顕司氏はこう語る。「もっと卵の可能性を追求したい」と。その果敢な姿勢の裏側に三州食品そのものの可能性を垣間見た。

--三州食品の取扱商品と御社独自の強みを聞かせてください--

液卵加工(※)を主軸に安心・安全な卵加工製品をご提供しています。『FARM TO TABLE』をキャッチフレーズとする当社では、直営農場を持ち自前で育雛・養鶏分野を手がける『FARM』と、菓子製造業や乳製品製造業、外食産業を通じ食卓で当社加工製品が消費されていく『TABLE』の、この2つをトータルに展開し、事業を進めています。

実は、この『FARM』から『TABLE』までを一貫して経営する会社は極めて稀な存在。工場や養鶏などのインフラが集中整備されたこの中部圏で、卵に特化した事業を一貫して行う――いわば、「垂直統合」と「集中化戦略」という2軸での事業展開が、当社ならではの強みだと考えています。

(※)鶏卵を割り液状の中身を抽出したもの。全卵、卵黄、卵白などユーザーの使用目的に応じ提供される。三州食品では毎分500~1350個におよぶ国内最大の割卵能力を持つ割卵ラインを所有し、大規模かつ高品質な製品づくりを追求している。

--これまでの歩みの中で印象的なエピソードを教えてください--

主力事業である液卵加工がまだ世間に認知されていなかった設立当初は、とても苦労しました。

養鶏場への支払いが卵の入荷から約2週間後であるのに対し、お客様からお代を頂くのは納品してから平均45日後、差し引き約1ヶ月のタイムラグが発生し、非常に苦しいキャッシュフローが続きました。資金繰りは銀行の与信にも関わってきます。この状況下での収支構築が当時大きな課題でした。 この課題を克服すべく取組んできたのが、当社製品における「簡便かつ高い有用性」の追求です。

ゆで卵は家庭で誰でも作れます。でも大量生産は出来ない。衛生的で一定の品質を保ったゆで卵を工業製品として大量に提供出来ればきっと大きな商機を見出せる――そこで、QCD(品質・価格・納期)の観点を通じ、工業的にビジネスとして定着させることへ全力を注ぎました。

勿論、製品として成立させることがゴールではありません。簡便で有用性のある、社会のニーズにお応え出来る製品であることを四半世紀に渡り訴え続けてきました。

そうして少しずつこの事業への認知が高まり経営が安定に向かう中、追い風になった出来事がありました。「コンビニエンスストアの普及」と「中食ビジネスの浸透」です。

限られた敷地面積の中、需要の高い商品だけに絞り込む販売でコンビニエンスストアは瞬く間に拡大。それに伴い今や定番商品となったおでんの需要も一気に急増し、そのおでんダネ用として当社の味付け卵が脚光を浴びるようになりました。

その後、お惣菜をはじめとする「外で買って来て家で食べる」スタイルの中食ビジネスが浸透し始めると、惣菜弁当のトッピング素材として、ゆで卵の需要が高まり、ボイル・冷却ラインを備えた鶏卵加工設備を持ち大量生産が可能な当社には、多くのオファーが舞い込むようになりました。

こういった時流に乗れたことが転機となる一方、あらゆるニーズに応えうる製品開発にも力を注いできました。商品サイクルが非常に早いコンビニエンスストアにも対応出来るよう、卵そのものの特性・機能を研究し、素材から加工方法までを厳選、一社一社異なる要求に対し丁寧にお応えし続けてきた結果が実績となり、今日の三州食品の基盤を築いています。

--苦難を乗り越え今に至る御社。今後の未来像を聞かせてください--

日本の食文化は和洋中など、様々な食を取り入れている珍しい国ですが、それぞれのジャンルで卵は多種多様に活用されています。だからこそ追求したいのは、「卵の機能の可能性」です。一般家庭やコンビニ、レストランなど様々なシーンの中で、どういった機能を開発すれば卵の更なる消費に貢献出来るか。また消費者に対して、いかに新しい卵の美味しさ、可能性を届けられるか。卵という素材を応用し、これからも技術開発に邁進して行きたいですね。

--最後に、次代を担う人材への思いを聞かせてください--

事業基盤として「ひとづくり」、「ものづくり」、「仕組みづくり」を三本柱と位置づける中、最も注力しているのが「ひと」を軸に据えた経営です。

だからこそ、素直で明るく素朴で誠実な、人間味のある人材を大切にしたいと考えています。また仕事だけに全力を注ぐのではなく、好奇心をもって幅広い知識や様々な体験を得ようとする方にはとても惹かれますね。成功すれば喜びや達成感が自然と芽生えますし、失敗をすることで苦しみや痛みを知ることが出来ます。そういった体験が人間としての懐の深さ、器の大きさに反映されるのではないでしょうか。

そんな人間味を持ち、自立し失敗を恐れず思い切った挑戦をしていける方と共にこれからの三州食品を創っていきたいですね。 このような方の魅力を醸成するためにも、今後さらなる人事制度の整備に力を注いでいきたいと思います。

会社概要
社名:三州食品株式会社
設立:昭和39年4月
資本金:9,000万円
代表者:代表取締役/岩月顕司
事業内容:液卵加工品の製造・販売、鶏卵加工品(ゆで卵・温泉卵・卵殻カルシウム・クレープ)の製造・販売および育雛・養鶏農場の経営
事業所:本社/本社/愛知県小牧市大字大草字檀ノ上5447-6