景況による市場競争が激化する広告業界にあって50年という歴史を築いてきたDACグループ。その代表である石川和則氏は、冒険家の顔も併せ持つ。2012年1月16日、63歳にして歩いて南極点に到達し、前年4月16日に到達した北極点到達とあわせ「Pole to Pole(極点から極点への到達)」を達成。しかしこれに留まらず、今度はDACグループ社員が七大陸最高峰登頂に挑戦する「セブンサミットプロジェクト」を発表した。

広告会社が何故このような挑戦を続けるのか?石川氏はこう語る。「世界で一番楽しい会社をつくるため」と。

閉塞感漂う社会の中で火勢をあげるDACグループ、その魅力に迫った。

--はじめにDACグループの事業フィールドとその特長についてお聞かせください--

DACグループは、総合広告代理業のデイリースポーツ案内広告社、人材採用ビジネスを担うピーアール・デイリー、観光広告に特化したデイリー・インフォメーションの3業態10拠点で構成されています。デイリースポーツ案内広告社はユニークコンテンツで他社との差別化を図り、ピーアール・デイリーは企業経営と人(求職者)の人生とを両面から支え、そして「観光=感動ビジネス」への転換をはかるデイリー・インフォメーションなど、それぞれ独自のコンセプトをもって事業展開を行っています。

50年の歴史の中には、オイルショックやバブル崩壊、リーマンショックといった幾つもの社会危機がありました。それらを乗り越えることができたのは、事業の多角化と全国展開によるリスク分散があればこそ。ですが、それだけではありません。忘れていけないのは、企業戦略以前に「社員の成長が会社の成長である」という強い信念があったことです。

広告業界は常に時代の流れと共にあります。だからこそ新たな挑戦を常にし続けることが重要。例えば私がデイリースポーツ案内広告社に入社してきた頃、求人広告と言えば、新聞の求人案内欄でしたが、1980年代半ばには求人情報誌全盛時代が訪れ、21世紀に入るとネット広告が主流になりました。既存事業に甘んじていれば、今の会社はなかったでしょう。

経営者として時代の過渡期に明確な方向性を社員に示してきましたが、あくまでも「現場は社員にあり」。社員が汗を流し事業を発展させていくことを決意し、自ら成長しなければ一切の進展はありません。

だからこそ、DACグループは広告会社である前に「人間企業」でありたい。人を育てることを前提とする会社でありたいと考えています。

--50年の歴史の中で、最も印象に残るターニングポイントをお聞かせください--

最も衝撃的だったのは、1977年、デイリースポーツ案内広告社の社長に就任した時のこと。この時会社は現在の貨幣価値に換算すると30億円という多額の負債を抱えており、私のほかにはその引き受け手に立候補する者など誰もいない状態。まさしく倒産寸前でした。でも、社員は絶対に見捨てられない。皆の生活を考え、社長就任を引き受けたのです。ところが1ヵ月後、私の前にあったのは、120名いた全社員のうち104名の退職願でした。

愕然としましたね。正直、人間不信にも陥りました。120名で負債を返済しようと考えていたのにも関わらず、残った社員はわずか16名。さすがに“もはやこれまで”と、全員に再就職を促しました。

でも、皆の答えは違った。「石川さん、あなたを信じてここに残ったんです」と。

胸が熱くなりました。私を信じ、ここに残ってくれた社員が16人もいる。辞めた社員を恨むより、この16人を大事にしようと、その時決意しました。

1年後、事業を縮小したにもかかわらず、売上は落ちませんでした。120名分のクライアントと仕事を、何とか残った社員で維持することが出来たのです。その後11年をかけ、莫大な借金をついに完済――これが、私の経営者としての原体験です。

--代表が描く、次の50年に向けてのビジョンをお聞かせください--

20年前、ソウルで行われたパラリンピックに招待された時に間近で見た車椅子で懸命に走る選手の姿が今も脳裏に焼きついています。深い感動が胸を打ち、涙ながらに選手の皆さんへ拍手を送りました。その晩、朝まで眠ることなく世界中の友人たちへ38通の手紙を夢中で書き、こう結びました。「人には、生きている限りこの感動こそが必要だ」と。これまでひたすら仕事人生を突き進んできた私にとって、まさに啓示でした。

この体験を契機に、21世紀最大のビジネスは、感動事業であると考えるようになりました。「感動をいかに人生や仕事に取り入れていくか」。これこそが今後の広告事業の大きなテーマになるだろうと、確信したのです。

急速な時代の移り変わりに伴い広告事業形態は大きく変化しましたが、「感動事業」というコンセプトには一切ブレがありません。この思いは、今後もずっと、継承していきたい――だからこそ私は、自らそれを実践するため冒険に旅立ったのです。

創立50周年を迎えて補完することがあるとすれば、「社会貢献」というテーマが加わるようになったことでしょうか。これまで私は「社員第一主義」を貫いていきましたが、創立50周年、社員数400名超、上場も射程圏内に入った今、ここまでDACを育ててくれた社会に対し、どうやって恩返ししていくか。それを真剣に考え、実践していく決意です。

--未来のDACグループを築くために不可欠な人材像をお聞かせください--

「日本一の社員教育」と自負するDACグループでは、はじめから良い人材であることを期待していません。目標に向かって前向きに取り組むことが出来、目がキラキラ輝いていればそれで十分。ダイヤの原石であるかどうかは一目見れば分かります。

教育の原点は『諦めないこと』。両親がわが子の成長を一生かけて見届けるように、私たちも長い時間をかけて新しい人材を育みたい。

そうして生まれた仲間と共に、次の50年を創りあげていきたいですね。

会社概要
社名:DACグループ[(株)ピーアール・デイリー、(株)デイリースポーツ案内広告社、(株)デイリー・インフォメーション(東京・北海道・東北・中部・関西・九州)]
設立:1962年10月1日
資本金:1億3,420万円(グループ合計) 代表者:代表取締役/石川 和則
事業内容:総合広告・求人広告・観光広告業全般(Web・新聞・雑誌・電波・SP・屋外・交通その他全てのパブリックリレーション企画および制作)
事業所:本社/東京都台東区東上野4-8-1 TIXTOWER UENO 13F14F
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