キャリアショップや量販店だけでなく、複数のキャリアの端末を扱っている、街の携帯電話ショップでスマートフォンを購入したことがあるという人も多いのではないだろうか。1つのキャリアの商品しか扱っていないショップと、複数キャリアの商品を扱っているショップとでは、一体何が違うのだろうか。

代理店の中には「専売店」と「併売店」がある

スマートフォンを購入する際、最近ではオンラインショップを利用する人も増えているだろうが、やはり店頭で端末を購入するという人の方が多いだろう。その際多くの人が訪れるのは、「ドコモショップ」「auショップ」「ソフトバンクショップ」などの、いわゆるキャリアショップだけとは限らない。

キャリアショップでは当然のことながら、そのキャリアの商品しか扱っていない。それゆえ複数キャリアの商品を見比べるため、家電量販店の携帯電話コーナーを訪れたり、あるいは繁華街や郊外などにある、複数キャリアの商品を扱う「街の携帯屋さん」に訪れたりする人も、意外と多いのではないだろうか。

  • 量販店や街の携帯ショップのように、複数のキャリアの商品を扱うショップも多く存在する

こうした複数キャリアの商品を扱うお店も、基本的には携帯電話会社や、他の代理店などから委託を受けた、携帯電話の販売代理店であることに変わりはない。それゆえ携帯電話業界では一般的に、特定キャリアの商品しか扱わないお店を「専売店」、複数キャリアの商品を扱うお店を「併売店」と呼んで区別している。

専売店と併売店の最大の違いは、扱う商品とサービスにある。専売店は特定キャリアのブランドを冠しているため、そのキャリアの商品しか扱えない。だがその分、キャリア商材の充実度は高く、販売以外のサービスやサポートの領域も広いことから、困った時の「駆け込み寺」として利用されることも多い。

一方で併売店は複数キャリアの商品を扱っており、キャリアを問わないことから商材の幅が広いのが大きな特徴となる。また中には、自社でMVNOとして通信サービスを提供するなど、独自のサービスを提供するショップもある。だが基本的には販売が主体であるため、キャリア独自のサービスやサポートなどは提供できない場合が多く、そうした面では弱みがある。

  • キャリアショップのような「専売店」は、特定キャリアの商品やサービスだけを扱うが、併売店は複数キャリアの商品を扱っており自由度が高い

時代の変化とともに併売店と専売店が一体に

過去を振り返ってみれば、90年代後半から~2000年代前半頃にかけては、併売店が積極的なテレビCMを展開するなど、専売店より目立っている印象が強かった。だが現在、量販店を除けば併売店を見かける機会はかなり減っているし、その量販店でも大規模な所であれば、専売店が直接入っているケースも多く見られる。

併売店が減少した背景には、携帯電話市場の変化がある。併売店が活発だった90年代頃は、携帯電話の普及率がまだ低く、これから携帯電話を新規で契約するという人が多かった時期でもある。そうした時期に重視されたのは新規加入者の獲得であるため、商材の幅が広く販売に強みを持つ併売店が強みを発揮していたのだ。

だが携帯電話市場が成熟し、新規加入者自体が減少していくとともに、併売店の強みであった販売力よりも、専売店の強みであるサービスやサポートが求められるようになってきた。そうしたことから併売店を運営していた企業も徐々に専売店へのシフトを進め、併売店より専売店が多いという現在の状況が生まれたといえる。

そうしたこともあってか、実は併売店を運営する企業の多くは、同時に専売店も運営していることが多い。具体例を挙げると、「テルル」を運営するピーアップは3キャリアの専売店を、「モバワン」を運営するアルファグループはauショップやソフトバンクショップを、「日本一名前が長い社名」としても注目された、「もしもしモンキー」を運営する「あなたの幸せが私の幸せ」(略称)は、ドコモショップやauショップなどを運営している。

それゆえ現在は、併売店と専売店が競合している訳ではない。代理店が専売店を運営しながらも、キャリアに左右されない自社独自のビジネスやサービスを提供するため、併売店を運営しているという状況なのだ。最近では携帯電話市場自体が飽和傾向にあること、そして大手3キャリアだけでなく、そのサブブランドやMVNOなどが台頭し、商材の幅も広がっていることから、今後併売店の形で、独自のビジネス進める代理店がより多く出てくる可能性もあるかもしれない。