携帯キャリア各社から2010年秋冬の携帯端末新機種が発表されましたが、みなさんもうご覧になりましたか? 特に注目されているのは、やはりiPhoneの対抗馬としてKDDI(以下、au)、NTTドコモ(以下、ドコモ)からそれぞれ発売が予定されている新しいスマートフォン(Android端末)でしょう。これまで、日本国内で「スマートフォン」と言えば「iPhone」というくらい市場で圧倒的な人気を集めてきたアップル(ソフトバンクモバイル(以下、ソフトバンク))のiPhoneですが、他キャリアによるAndroid端末の参入で市場に変化が起こるのでは? と期待が集まっています。今回は有識者に対して実施した調査結果をもとに、その行方を予測してみました。

秋冬に発売予定のAndroid端末とiPhoneの違いは?

ケータイユーザーにも魅力的な機能が満載の「IS03(au)」(シャープ製)。2010年11月下旬以降発売予定

この秋冬にau、ドコモから新たに発売されるAndroid端末には、そもそもiPhoneとどのような違いがあるのでしょうか?

OSなどの技術的なスペックはさておきAndroidには、スマートフォンに詳しくないケータイユーザーにも魅力的な以下のような特徴があります。

・SDカード (microSD) が使える
・バッテリーの取り外しができる
・FlashのWebサイトを見ることができる
・赤外線通信機能がある (※au/IS03)
・ワンセグが視聴できる (※au/IS03)
・おサイフケータイに対応している (※au/IS03)
・赤外線通信機能がある (※au/IS03)
・957万画素のメガピクセルカメラを搭載している (※au/IS03)

などなど、これまで「使い慣れたケータイ端末の機能がない」ことを理由にスマートフォンを買い控えていたユーザーが興味を示しそうな機能を実装しています。

それに、何よりソフトバンクに携帯キャリアを変更することに躊躇していたau、ドコモユーザーには魅力的な端末であることは間違いなさそうです。

今後のスマートフォン市場の行方は?

もちろん、これらのAndroid端末も、実際に店頭に実機が並び、ユーザーが手に取ってみるまで評価のほどはわかりません。しかし、携帯電話端末の機能を引き継いだAndroid端末がこれから国内メーカーから続々と投入されるであろうことを考えると、いずれ大きな市場となることは予想されます。

現在盛り上がりをみせているスマートフォンアプリ市場も、これまでは国内スマートフォン市場で最大シェアを持つiPhone向けのアプリが話題の中心でしたが、相次ぐAndroid端末の発売で、いよいよ先行きがわからなくなってきました。

ということで当研究所では今回、これらの疑問をスマートフォン事情に詳しい、IT・モバイルジャーナリスト、IT関連メディア、スマートフォン関連書籍関係者、IT・情報・工学専攻の大学教授といった有識者の方々20人にご協力いただきインタビューによる調査を行いました。

その結果は以下の通りです。

  • 95%の有識者が2015年までに日本市場でAndroidがiPhoneの販売シェアを追い抜くと予測
  • 75%の有識者が2015年までにスマートフォンの販売台数が携帯端末の販売台数を追い抜くと予測
  • Androidの魅力は「カスタマイズやキャリア選択の自由度、拡張性」
  • iPhoneの魅力は「完成度の高いユーザーインタフェース」

まず、回答者のほとんどが「2015年までにはAndroidがiPhoneのシェアを追い抜く」と予測しています。またそのうち、2013年までにシェアが逆転すると予測した回答者は6割にのぼり、世界に続いて日本でもAndroid端末のシェアが急伸するという予測が多数を占めました。

有識者のほとんどが「2015年までにAndroidがiPhoneのシェアを追い抜く」と予測 (資料: MMD研究所)

「向こう5年間の日本国内市場におけるスマートフォンとフィーチャーフォンの販売台数比率を予想してください」という質問に対しては、回答者の約7割が「5年以内にスマートフォンの販売台数がフィーチャーフォンの販売台数を上回る」と予測しています。

有識者の約7割が、「5年以内にスマートフォンの販売台数がケータイを上回る」と予測 (資料: MMD研究所)

また、これら有識者の方々が分析するiPhone、Androidそれぞれの魅力としては、以下のような回答が得られました。

  • Androidは「自由度」、iPhoneは「デザイン」(フリーライター 清水理史氏)
  • Androidは「画面レイアウトの自由度が高い」、iPhoneは「使いやすい」(ITジャーナリスト 一条真人氏)
  • Androidは「機種の多様性、ガラパゴス携帯との融合の可能性」、iPhoneは「コンテンツ(アプリ)の充実」(株式会社フロンティア・B.I. 代表取締役 藤井伸輔氏)
  • Androidは「Googleの各種サービスとの連携による小型ネット端末であること」、iPhoneは「Appleというブランド力に支えられたスタイリッシュな端末であること」(株式会社BCN 森英二氏)

Androidが普及するために必要なポイントは?

また、「日本のスマートフォン市場において、Androidがトップシェアを獲得するための今後のポイントは?」という質問に対しては、「端末のバリエーション」「従来型ケータイ機能の移植」「国内メーカーの参入」という意見が多数を占めています。

具体的には、「従来型ケータイのエコシステムを、いかにAndroidに移植できるか。その際に、Androidならではの魅力を損なわないことは必須。UIなどは、Androidに合わせて全面的に作り変える必要がある。フルタッチ端末だけでなく形状のさらなる多様化もポイントになる」(ケータイジャーナリスト 石野純也氏)、「ケータイっぽい使いやすさ。特にデコメ・着うたなど若年層に受ける機能を重視すること。スマートフォンとケータイの線引きをなくすこと」(BestGear編集部 デスク 中馬幹弘氏)、「教育(電子教科書、学習アプリ)、ビジネス・アプリ(販促ツール、セールス支援ツール、進捗管理など)の普及」(デジタルハリウッド大学院 専任教授 三淵啓自氏)などのご意見をいただきました。

筆者も、Androidだけでなく、iPhoneを含むスマートフォン普及のカギは、「いかに日本国内のユーザーのケータイ文化に最適化するか」という点が大きなポイントになってくると考えており、同時に、多機能になり過ぎた各種機能の引き算も必要になってくるのではないかと感じています。

Androidなのか、iPhoneなのかはさておき、携帯端末(フィーチャーフォン)とスマートフォンという定義の境界線も、来年にはなくなっていそうですね。

今回の調査は、あくまで有識者のみなさんへのインタビューという形を取っていますので、正確な市場予測ではありません。また、これら発売前のAndroid端末を、消費者がどのように見ているのか、どのくらいのケータイユーザーが買い替えを検討しているのかといった点については現在調査中ですので、次回お伝えしたいと思います。

なお、今回紹介した調査データは当研究所のWebサイトで公開しています。

日本国内のスマートフォン市場に関する有識者アンケート調査 - MMD研究所

<本稿執筆担当: 田川悟郎>

著者紹介

MMD研究所

MMD研究所(モバイル・マーケティング・データ研究所)は、モバイルユーザーマーケットのリアルな動向を調査・分析し、社会へ提供することを目的として2006年9月に設立されたマーケティングリサーチ機関(運営は株式会社アップデイト)。本コラムでは、同研究所による調査データをもとに、ヒットにつながる効果的なマーケティング手法について考察していきます。