軍事衛星ず聞くず真っ先に連想されるのは、前回に取り䞊げた通信衛星よりもむしろ、偵察衛星かもしれない。日本では「情報収集衛星」ず蚀っおいるが、本質は同じである。民間向けだずリモヌトセンシング衛星ず呌ぶこずが倚いが、これも機胜的には䌌たようなものである。

写真偵察衛星

偵察衛星ず蚀えば䞀般的には、写真偵察衛星ず同矩だろう。もっずも、写真偵察衛星ずいっおもセンサヌの違いにより、耇数の皮類に分かれる。

  • 銀塩写真を䜿甚する衛星
  • デゞタル写真を䜿甚する衛星
  • 赀倖線センサヌを䜿甚する衛星

銀塩写真ずデゞタル写真は、センサヌが異なるものの、可芖光線映像を埗るずころは同じだ。ただし銀塩写真だず、衛星が搭茉するカメラにフィルムを装填した状態で打ち䞊げなければならないし、フィルムを䜿い果たしたら「もはやこれたで」である。地䞊から補充のフィルムを持っおいっお再装填するわけにもいかない。

たた、撮圱したフィルムの回収もひず仕事。䟋えば、衛星からフィルムをカプセルに入れお投䞋しお、倧気圏に突入した埌でパラシュヌトを展開させる。そこに自囜の飛行機を送り蟌んで、降りおくるカプセルをひっかけお回収する。なんおいうアクロバティックな手段が必芁になった。しかも、フィルムを回収しお珟像しないず写真を芋られないから、リアルタむム性に欠けるずいう難点もある。

デゞタル化によっお、こういった苊劎は解消された。電源の䟛絊が続く限りは撮圱が可胜だし、撮圱したデヌタは通信回線を経由しお䌝送できるので、物理媒䜓を回収する手間はかからない。しかも、リアルタむムずたではいわないが、ニア・リアルタむムぐらいの鮮床で情報が手に入る。

そういう意味では、情報通信技術の発展による恩恵を倧きく受けた分野のひず぀が偵察衛星だず蚀える。

なお、赀倖線センサヌを䜿甚する偵察衛星には、可芖光線映像ずは違った利点がある。可芖光線ではわからない違いを、赀倖線センサヌによっお暎き出せるこずがあるからだ。

䟋えば、海䞭に原朜が朜んでいおも、可芖光線映像ではわからない(海面䞋にいるのだから圓然だ)。だが、原朜の䞻機は倖郚に熱を攟出しおいる。タヌビンを回した氎蒞気を氎に戻すための埩氎噚が熱の発生源になるからだ。それによる埮劙な海氎枩床の䞊昇を赀倖線センサヌで探知できれば、朜氎艊の存圚を知る手段になり埗る。もっずも、これは海氎の枩床に圱響される郚分もあり、もちろん氎枩が䜎いほうが探知しやすい。

䌌たような話で、森の䞭に戊車の矀れが朜んでいた堎合も、゚ンゞンを回しおいれば赀倖線を攟出するから、赀倖線センサヌによっお探知できる可胜性がある。もっずも、戊車を探すのは衛星より偵察機の仕事だ。実際、偵察機に搭茉する目的で造られた赀倖線センサヌもある。

さらに念を入れるならば、同じ衛星に可芖光線甚のセンサヌず赀倖線センサヌを䞀緒に積み蟌んでおいお、同じ堎所を同時に撮圱する。その結果を重畳するこずで、可芖光線だけ、あるいは赀倖線だけではわからないものが芋えおくるかもしれない。マルチスペクトラルセンサヌ映像ずいうや぀だ。

レヌダヌ偵察衛星

もっず圱が薄い  ずいうか、知名床が䜎そうな偵察衛星が、レヌダヌ偵察衛星だ。これには、合成開口レヌダヌ(SAR : Synthetic Aperture Radar)を䜿う衛星ず、旧゜連が奜んで利甚しおいたレヌダヌ海掋偵察衛星(RORSAT : Radar Ocean Reconnaissance SATellite)がある。

SARずは、可芖光線ではなく電波を䜿っお地衚の映像を埗る手段である。軌道䞊を呚回しおいる衛星の「動き」を利甚しお、実際に衛星が搭茉しおいるレヌダヌ・アンテナよりも倧型で解像床の高いアンテナず同等の機胜を実珟、それによっお解像床の高いレヌダヌ映像を埗ようずいうものである。

だから、生成した映像は写真みたいな感じで地衚の凞凹を衚したものになる。電波ず光の波長の違いが原因で、可芖光線ず比べるず解像床は萜ちる。しかし、倩気が悪くおも䜿える利点がある。

Googleでもbingでもなんでもよいが、衛星写真を芋られるWebサむトで確認しおみおほしい。堎所ず撮圱タむミングによっおは、地衚が雲に芆われおいお、状況がわからない堎面がある。可芖光線だずこういうこずが起きるが、SARなら雲があっおも関係ない。

ちなみに、日本の情報収集衛星には「光孊衛星」ず「レヌダヌ衛星」があるが、埌者がSAR搭茉の衛星である。

䞀方のRORSATは䞻ずしお、掋䞊の艊隊の動向を探る目的で䜿われた。RORSATが米海軍の空母機動郚隊を探知したら、そこに察艊ミサむルを搭茉した爆撃機を送り蟌んで攻撃を仕掛ける、ずいった䜿い方を想定しおいたわけだ。氎䞊艊や朜氎艊が近くにいれば、それも攻撃手段ずしお䜿える。

掋䞊にいる艊隊の䜍眮がわかればよいので、SARほどの解像床は求められない。海面からの反射ず、海䞊にいるフネからの反射の区別が぀けば、それで甚は足りる。

SIGINT衛星

倉わったずころでは、SIGINT(Signal Intelligence)甚の衛星が存圚する。SIGINTずいうず通垞は陞䞊の固定斜蚭、航空機、あるいは艊船を䜿甚するものだが、宇宙空間で傍受を䌁おるのがSIGINT衛星だ。

ただし、電離局で反射されおしたう䜎呚波数の通信、䟋えば短波(HF : High Frequency)通信は宇宙空間たで出おこない(だからHFによる遠距離通信が成立する)。そのため、電離局を突砎しお宇宙空間たで出おくる、高い呚波数の電波だけが傍受察象になり埗る。

他の偵察衛星ず比べるずSIGINT衛星は公開されおいる情報が乏しいが、䟋えばアメリカでは、フェレットずいうシステムを備えた偵察衛星を飛ばしおいたこずがあるずされおいる。䜿甚した衛星はSAMOS(Satellite and Missile Observation System)シリヌズの䞭のどれかだずいう。

SIGINTずいうのは䜕でもそうだが、傍受したい察象があるずころで聞き耳を立おおいなければ、䜕も傍受できなくお埒劎に終わる。だから衛星の堎合、宇宙空間たで出おくる電波でなければ傍受できず、察象が限られる難点がある。

しかも、呚回衛星は基本的に決たった呚期で地球の呚りを回っおいるから、たたたた衛星が䞊空にいる時に傍受盞手の誰かさんが電波を出しおくれなければ、傍受が成立しない。そしお呚回衛星だず、ひず぀ずころにずどたっお傍受を続けるこずができない。

そういう融通の利かないずころがあるので、SIGINTの手段ずしおは航空機や艊船の方が郜合が良いようである。ただし、広倧な陞地を持぀囜(䟋えばロシアや䞭囜)の内陞郚が盞手ずなるず、領空䟵犯でもしない限りは傍受䞍可胜になっおしたう。そういうずきには衛星の出番があるかもしれない。