Microsoft Edgeに実験的に搭載されたAI検索機能は、使われている技術はChatGPTでと同じだ。だが、使用しているデータも設計思想も異なるため、検索結果は同じものにはならない。今回はその辺りの違いを取り上げる。
→連載「意外と知らないMicrosoft Edgeの便利な使い方」の過去回はこちらを参照。
ChatGPTと新しいBingの最大の違い
ChatGPTやChatGPT PLUSを使ったことがある方であれば、その質問の意図の汲み取り具合の正確性と、返ってくる回答文の自然さ、網羅している範囲の広さなどに舌を巻いたのではないかと思う。ChatGPTはかなり多彩な使い方が可能で、作業時間を大幅に短縮できる可能性を秘めた画期的なツールだ。
新しいMicrosoft Bingで使われている大規模言語モデル(LLM:Large Language Model)は基本的にはChatGPTと同じものだが、根本となる部分がいくつか異なっている。まず、現在のChatGPTは2021年9月のデータまでをベースにしている。
一方、新しいBingはほかの検索エンジンと同様、基本的にリアルタイムなインターネットのデータを検索の対象としている。ChatGPTほど突っ込んだ質問に対する返答は今のところ期待できないものの、2021年10月以降のデータも検索対象とすることができる点は、ChatGPTと大きく異なる点だ。
つまり、2021年9月までのデータで済む場合にはChatGPTを使った検索が効果的であり、2021年10月以降のデータも調査対象に含めるならば新しいBingが有効ということになる。そして、Microsoft EdgeのAI検索機能は、この新しいMicrosoft Bingを使うUI/UXとなっている。
新しいMicrosoft Bingを使って今の情報を検索
「今、インターネット上にある情報を調査対象にできる」というのが新しいMicrosoft Bingの最大の強みとなる。例えば、次のように何らかのWebページを閲覧しているとする。
ここでサイドバーから「(b)」のアイコンをクリックして「チャット」を開き、「ページの要約を教えてください」と入力する。
すると、次のように閲覧しているWebページの要約が表示される。
ChatGPTでは、このように新しいWebページを指定して要約を生成するといったことはできない。
製品情報などもそうだ。例えば「現在販売されているiPhoneとその価格について教えてください」と入力すると、次のように現在販売されているiPhoneの価格データをざっくりと知ることができる。
「15インチ以上のノートパソコンで、重量が1kg未満のものを教えてください」のような質問だと次のような結果になる。
もちろんあまり時代性が関係ない質問も使用できる。次の例では「ローファットな夕食のレシピを考えてください」と入力している。
ただし、検索対象はリアルタイムなインターネットのデータがベースになっているので、以前から存在しているデータであってもより新しく有効性の高いと判断されたデータがある場合にはそちらの結果が表示されるようになる。このあたりがChatGPTとの大きな違いだ。
Microsoft BingとChatGPTは使い分けるもの
今のところ新しいMicrosoft Bingの検索と、ChatGPTの検索には大きな違いがある。どちらか一方を使うというよりも、状況に応じて使い分けるものだ。
ChatGPTの検索と比べると、新しいMicrosoft Bingの検索結果はちょっとばかり物足りないところがある。執筆時点であれば、ChatGPTでこなせる検索はChatGPTでこなし、ChatGPTにはできない新しいデータに関する検索が必要な場合には新しいMicrosoft Bingを使う、というのが一つのポイントになると思う。
そしてMicrosoft Edgeのサイドバーに統合された「(b)」ボタンは、この新しいAI検索への手軽な窓口だ。Microsoftはこのサイドバーの開発に力を注いでいるように見え、今後さらに多くのAI関連機能がサイドバーに統合されていくものと考えられる。開発の速度も早いため、今後の展開に注目しておく必要がある部分だ。