LIFULL 執行役員/Chief Technology Officerの長沢翼氏にエンジニアの在り方や組織論について話を伺う本連載。今回は、エンジニアのマネジメントをテーマに話を聞いた。

  • LIFULL 執行役員/Chief Technology Officerの長沢翼氏

マネジャーは自チームに一番詳しい人材

――エンジニアをマネジメントしていく上で重要なことについてお聞きしたいと思います。まずは、マネジャーとして組織にどのようにビジョンを浸透させていくべきなのでしょうか。

長沢氏:マネジャー自身が会社のビジョンや戦略をきちんと理解し、自分はそれにどうコミットしていくのかという意見をしっかりと持つことが大切だと考えています。その上で、弊社であれば、グループ長(LIFULLにおける組織の最小単位)は、さまざまなパーソナリティを持つメンバーがいる中で、その人に最も伝わりやすいコミュニケーションの方法を選択し、ビジョンを伝えていかなければいけません。グループ長はメンバーと距離が近く、メンバーに応じた伝え方ができるからです。また、ビジョンは一度伝えただけでは浸透しません。何回も愚直に伝え続けることも重要です。

――マネジャーの役割として大切なものは何ですか。

長沢氏:マネジャーは、特定のチームについて一番詳しい存在です。チームがやっていることが事業的にどんな価値を生むのかを、周囲や上層部にいかに伝えていくかも大切になります。例えば、エンジニアの場合、品質管理がうまくできたからといって、すぐに売上につながるわけではありません。しかし品質管理をするエンジニアには、価値があります。その価値がいかに事業の成果につながっているかをうまく説明できるかどうかが、特にエンジニアをマネジメントする立場では非常に大事だと思います。

エンジニアをいかに評価すべきか

――品質管理の例もそうですが、エンジニアの評価に悩む企業も多いと聞きます。

長沢氏:LIFULLでは全社評価制度として、行動指針を示すガイドラインに沿った行動ができているか、利他的な行動ができているか、挑戦的なことができているかという評価基準に加え、業績貢献とテクニカルスキルという5つの指標があります。テクニカルスキル以外は全職種共通です。

テクニカルスキルは職種によって分かれており、エンジニアに関しては、アプリケーションエンジニア、プラットフォームエンジニア、セキュリティエンジニア、AIエンジニアなど10種類以上が設定されています。さらに各部門の等級レベルが6段階ほどある状態です。このように細分化することで、各エンジニアのスキルを評価しています。

とは言え、例えば、研究開発部門の成果は(評価の期間である)半年では出ません。あるいは、研究した結果“できないことが分かった”という成果が出る場合もあります。このような場合、成果の度合いを画一的に評価することは難しいですが、業務を理解しているマネジャーが評価することにより、適正な評価ができるようにしています。

また、職種間で成果の判断に差が出ることも考えられます。そのため、弊社では半年に一度、マネジャー同士が集まり、評価の“目線合わせ”をすることで、横串での調整をします。評価は人材開発の一環です。人材により活躍してもらうためには、どのようなフィードバックをすべきなのかという観点を持って、行うべきでしょう。私が特に気を付けているのは、評価イコール給与交渉の場にならないことです。それぞれのメンバーが自分の目指すべき姿を確認し、次に向かう目線をつくってもらう場になるよう、気を配っています。

――エンジニア組織のトップであるCTOの在り方について、どう考えていらっしゃいますか。

長沢氏:私自身は、最終的に皆が頼るところになるべきだと考えています。やりたいことや困っていることがあれば、まず現場や上司に相談するでしょう。その上で、最も経営陣に伝えやすいポジションにいるのが私です。だからこそ、本当に困ったときには、皆が頼ってくれるような存在でいたいですし、エンジニアたちからもそう見えていると良いなと思います。

――では、CTOとして意識していることはありますか。

長沢氏:そうですね、メンバーが考えつくものではなく、自分でなければ生み出せないものを出していかなければいけないと強く思っています。長期的に考えたときに、海外拠点を増やすべきだということだったり、生成AIも今採り入れなければということだったり。業務と連動する連続的なことではなく、非連続なことをやっていくことがCTOの仕事だと考えています。