世界のデータ量は、指数関数的に増加している。そのデータを光子(レーザ)を用いて保存するデータストレージを開発する企業が存在する。

それは、LyteLoopという米国の企業だ。彼らは、サイズはさまざまだが真空キャビティや宇宙空間における衛星を活用したデータストレージを手がけている。

では、LyteLoopとはどのような企業なのか、どのようなテクノロジーを有しているのか、今回は、そのような話題について紹介したいと思う。

LyteLoopとは?

LyteLoopとは、米国で2015年に設立し、社員は10名程度のまだ小さな会社だが、2021年2月に4000万ドル、日本円でおおよそ40億円の資金調達にも成功していて、ノリに乗っている企業といえるだろう。

では、彼らのテクノロジーとはどのようなものなのだろうか。その前に、世界のデータ量について、おさらいしておきたい。

世界のデータ量は指数関数的に増加していることはご存じだろう。その世界のデータの約90%は、過去2年間に作成されたものであり、まさにデータの急増を感じ取ることができる。そして、世界の電力のおおよそ5%がデータストレージとコンピューティングに使用されているというから驚きだ。

そこに勝機を見出したのが、LyteLoop。彼らは、光を使って膨大なデータを保存できるという。

彼らによると、データ容量は、データレートとパス長の積に依存するという。つまり、大量のデータを保存するには、高いデータレートと長いパス長が必要ということだ。

まず、高いデータレートを実現するには、光の波長を多重化しているという。従来の通信で用いられている波長分割多重方式をイメージするとわかりやすいかもしれない。また、光子の偏光を利用して直交状態でチャンネル数を2倍にしたり、空間多重化も採用したりするなどして高いデータレートを実現しているという。

そして、長いパス長を実現するには角度多重化と呼ばれる特許を取得した技術を用いることで可能となる。キャビティー内を反射させる双方のミラーは一体のものではなく、10mm以下のサイズの多数のミラー間を発射させることで、パス長を劇的に増加させる方法だ。 これは反射させるミラーなどのアパーチャーの直径を小さくし、光のモードを最適化することで実現できるという。

LyteLoopでは、TubeとCellという2種類のプロダクトがある。大型のTubeでは、30mから100mまでの大きさのものがある。例えば、100m×100mの大きさのもので110エクサバイトのデータストレージを実現できるという。

  • LyteLoopのTube

    LyteLoopのTube(出典:LyteLoop)

Tubeよりも小型で設置しやすいCellというプロダクトもある。大きさは、1.5m×1.5mや2.0m×2.0mがあり、それぞれ、12ペタバイト、200ペタバイトのデータを保存することができるという。

  • Cell

    LyteLoopのCell(出典:LyteLoop)

衛星を使ったデータストレージとは?

LyteLoopは、上記のテクノロジーを宇宙空間で衛星のコンステレーションを形成することで実現しようとしている。

LyteLoopの衛星コンステレーションで形成したデータストレージのイメージ動画が公開されているが動画では驚くべきシーンがたくさんある。

例えば、ロケットから衛星が20機程度フェアリング内に搭載され、高度な分離技術を実施した後、人工衛星は、ミラーや太陽電池パネルを展開する。そして、レーザーを照射する主衛星が存在し、衛星間でレーザーを反射させ、データストレージを実現している。

  • データストレージ

    LyteLoopの衛星コンステレーションで形成したデータストレージ(出典:LyteLoop)

LyteLoopの衛星コンステレーションで形成したデータストレージのイメージ動画

https://vimeo.com/503074727

いかがだっただろうか。いつも感じるのだが、New Spaceのフィールドには、斬新なアイデアを持つ企業が登場する。

LyteLoopもその一社だ。LyteLoopの宇宙でのデータストレージの技術的な課題は、1つ1つの衛星の軌道制御、姿勢制御の精度、もしくは、個々のミラーの角度制御の精度だろうか。

もちろん、コンステレーション全体で衛星の姿勢、軌道、ミラーの角度を最適化する必要はあるだろう。 いずれにせよ、一般的なデータストレージのような物理的なメディアではなくて、光子にデータを保存するというLyteLoopの技術は、斬新であることに違いはない。