2023年1月5日、マンチェスター大学は、南極大陸の氷河がこれまでの研究で考えられていた年代よりもだいぶ昔に形成されていたことが、衛星データを活用した新たな研究で判明したと発表した。では、南極大陸の氷河はいつ形成されたのだろうか。今回は、こんな話題について紹介したいと思う。
南極の氷河が形成された年代に関すする新発見とは?
この研究を実施したのは、マンチェスター大学のMatt Tomkins博士とマンチェスターメトロポリタン大学のIestyn Barr博士をはじめとする研究チームだ。彼らは、南極大陸周辺のウェッデル海とロス海を結ぶように連なり大陸を東西に二分する約3500kmの山脈に存在する氷河を、詳細に調査したという。ちなみにこの山脈は「南極横断山脈」と呼ばれている。
詳しく見ていく前に、少しだけ南極大陸についておさらいしたい。ご存知の方も多いかもしれないが、南極大陸は地球上で5番目に大きな大陸で、その面積はおよそ1400万km2と、オーストラリアの2倍ほどだ。そして、この大陸の98%ほどは氷に覆われていて、その氷の高さが2kmに及ぶところもあるという。その南極大陸は、大昔から寒い時期と暖かい時期を繰り返し経験してきている。
では、今回の研究ではどのようにして南極の氷河を調査したのだろうか。研究チームは、この南極横断山脈について、氷河による侵食でできた氷のない区域「カール」の特定や調査を行った。山脈にあるカールの数は約1万4000個にも及ぶのだが、彼らは実際に現地まで調査に向かったわけではなく、人工衛星が撮影した衛星画像から取得した標高データを活用したという。
研究チームは、カールが温帯氷河と呼ばれる時期に形成されたと仮定し、現代の温帯氷河と類似性があると考えて、標高データから昔の気温を推定したとのこと。現在までに公開されている南極の過去の温度データと比較することで、南極横断山脈で最初に氷河ができた場所と時期がわかり、また温帯氷河があったとされる場所と時期が推定できるというのだ。
上図右上のグラフをご覧いただきたい。今までは3000万年前に氷河が形成されていたと考えられていたのだが、今回の研究により、少なくとも6000万年前にはすでに氷河が形成されていた可能性があると判明したとしている。
ちなみにこの研究成果は、2022年9月21日のNature Communicationsに掲載されている。
いかがだっただろうか。この分析手法は、現地の南極大陸へと赴かなくとも、初期の氷河に関する歴史を知ることができる素晴らしいものだと感じる。