米国のOcean Reef Groupは、海底農場プロジェクト「Nemo's Garden」を推進している。では、Nemo's Gardenとはどのようなプロジェクトだろうか。今回は、こんな話題について紹介したいと思う。
海底農場プロジェクト「Nemo's Garden」とは?
Nemo's Gardenプロジェクトは、イタリアの地中海に面した村「ノーリ(Noli)」周辺の海中で実施されている。以下の写真を見ていただきたい。海底といくつかの透明な半球が鎖で繋がれているのがわかると思う。これらのポッドが位置する水深は異なり、15~36フィート(およそ4.5m~11m)の範囲だという。
その外見はまるでクラゲのようだ。透明な半球はアクリルでできていて、内部は約2000Lの空気で満たされている。また、海底付近の温度はほぼ一定なため半球内部の温度も保たれるとのことだ。作物の栽培については、アクリルの内壁に常に起こる結露の水を使った水耕栽培を行うという。ちなみに半球内は、CO2・O2・湿度・気温・照度のセンサが取り付けられている上、ジャイロセンサも設置され傾きも常に確認できる。
また、半球に囲まれた中央部にはタワーが立っている。これは「TREE OF LIFE」と呼ばれ、高さ12フィート、幅10フィートという大きさ。金属でできていて、重さは0.5tだという。このタワーには、ライブカメラやそれぞれの半球と接続するケーブルなどが敷設されている。さらに、TREE OF LIFEから200mの範囲ではワイヤレスでの水中通信が可能で、ダイバーたちはこの塔を通じてお互いに通信することができるのだという。また、海岸部には管制塔があり、水中のNemo's Gardenとの通信を行っているという。
では、なぜ彼らはNemo's Gardenというプロジェクトを始動しているのだろうか。それは、農業の課題に起因しているという。農業で使われる淡水は、世界中に存在する淡水の70%をも占めるという。これは驚きだ。つまりそれだけ、農業地域での水の管理が重要だということを意味している。
しかし、異常気象・突然の乾季や豪雨・CO2の排出量増加・太陽放射など、変化が大きく予測が難しい気象条件が与える影響は大きく、淡水や気象条件を最適化するのは容易ではないのだ。しかし水中であれば、これらを安定して管理することができるため、プロジェクトの開始に至ったという。
いかがだっただろうか。これは興味深いプロジェクトだ。農業自体の課題を解決するために、海底での農業に着手する発想が興味深い。ちなみに、Nemo's Gardenは、以下のような動画も公開している。この動画を見ると水中栽培の様子もよくわかるし、どのような構造をしているのかも一目瞭然だ。