2022年10月13日、土屋鞄製造所は、キノコの菌糸体から生まれたレザー代替素材「Mylo(マイロ)」を使った新製品の発売を発表した。では土屋鞄製造所は、なぜキノコの菌糸体から生まれたMyloを使った商品を手掛けるのか。今回は、そんな話題について紹介したいと思う。

土屋鞄製造所が手掛けるキノコ菌糸体由来の素材「Mylo」とは

土屋鞄製造所によると、「土屋鞄製造所(大人向け鞄)」と「objcts.io」の2ブランドにおいて、キノコ菌糸体由来のMyloを採用した新製品3型を、2022年12月15日から一部直営店舗とオンラインストアにて数量限定・先着順で販売するという。

  • 今回発売される、Myloを採用したミニ財布・スマホショルダー・iPhoneケース

    今回発売される、Myloを採用したミニ財布・スマホショルダー・iPhoneケース(出典:土屋鞄製造所)

では、キノコの菌糸体から生まれたレザー代替素材のMyloとは、どのようなものだろうか。

まず、Myloを開発した企業を紹介したい。Myloを開発したのは米国のバイオテック企業、Bolt Threadsだ。米国のカリフォルニア州エメリービルを拠点とし、ビジネス誌「Fast Company」が選出する「最も革新的な企業」の1社にも数えられている。そして、アパレル業界や美容業界のためのサステナブルなソリューション開発で、より良い素材、より良い世界を創造することをミッションとしている。

そしてMyloは、このキノコの菌糸体85%と再生繊維15%で仕立てたシートの表面にポリウレタン樹脂をコーティングしたものだ。キノコの菌糸体が持つ微細な繊維で、本革のように柔らかな手触りと上質感のある風合い、さらに十分な強度をもつという。

  • Bolt Threadsが開発したMylo

    Bolt Threadsが開発したMylo(出典:土屋鞄製造所)

ちなみにキノコの菌糸体とは、菌が構成する根のような糸状の組織体のこと。Myloの原材料となる菌糸体は、100%再生可能エネルギーで稼働する最先端の垂直農法施設で生育されているという。キノコの菌糸体は、水と空気とマルチング材(おがくずなど菌糸体の生育時に培地の表面を覆うもの)のみで育てられているといい、たった2週間足らずの短い周期で生育できるため、安定した供給が可能だ。

  • キノコ菌糸体のイメージ

    キノコ菌糸体のイメージ(出典:土屋鞄製造所)

ではなぜ土屋鞄製造所は、Myloを使った商品開発を手掛けるのだろうか。そこには、土屋鞄製造所としてのイノベーションと土屋鞄のクラフツマンシップをかけ合わせた、新しいものづくりの発展に貢献していくことがあるという。

いかがだったろうか。現在も、思いがけないものを原材料とした製品が次々と誕生している。安価で安定供給が可能なもの。そしてエコでサステナブルなものだ。土屋鞄製造所という鞄メーカーがこのような視点で商品開発に取り組むのはとても興味深く、今後の動向に期待したい。