マサチューセッツ工科大学(MIT)は2022年6月21日、「Quantum sensor can detect electromagnetic signals of any frequency」というタイトルのプレスリリースを発表した。

つまり、あらゆる周波数の電磁波を検出することができる量子センサを開発した、そんな内容だ。では、この任意の周波数を検出できる量子センサとはどのようなものだろうか、今回はそんな話題について触れたいと思う。

任意の周波数を検出できる量子センサ

MITが発表した量子センサ。

量子センサは、磁場または電場のとても微小な変動をも検出することができるが、従来の量子センサだと、ある特定の周波数しか検出できず、その有用性が制限されていたという課題があった。

今回MITは、量子レベルのセンシングを検出する能力を失うことなく、任意の周波数を検出することができる方法を開発したのだ。

量子センサといえば、量子力学に準じており、量子準位、量子もつれ、量子コヒーレンスなどの性質が利用されているセンサだ。

それによって、量子レベル、原子レベルの高感度な測定が可能となるのだ。読者の皆さんが知っている量子センサといえば、超伝導量子干渉素子(SQUID)や光ポンピング磁力計、ダイヤモンド窒素-空孔中心(NVセンタ)などだろうか。

では、今回MITが開発した量子センサを紹介したい。

  • MITが開発した任意の周波数を検出できる量子センサ

    MITが開発した任意の周波数を検出できる量子センサ(出典:MIT)

この任意の周波数が検出できる量子センサの原理は以下の図のようだ。

まず検出したい信号とバイアス信号の2つの信号を入力させミキシング(混合)させる。そしてその差の周波数を作り出し、それを量子センサで検出するというものだ。

バイアス信号の周波数をスイープさせると、量子センサ側で共鳴する信号がある。この共鳴周波数とバイアス信号の中心周波数を知ることができれば元の検出したい信号の周波数を知ることができるという原理だ。

この量子センサには、上記で紹介したダイヤモンド窒素-空孔中心(NVセンサ)が用いられているようだ。この共鳴する周波数で、ダイヤモンド側にラビ振動を起こさせているというのだ。

  • MITが開発した量子センサの原理

    MITが開発した量子センサの原理(出典:MIT)

いかがだっただろうか。

この量子センサを開発したMITのGuoqing Wang博士によると、このほかにも量子センサには、さまざまな周波数を測定する方法というものはあるらしい。

しかし、これらの方法では、大きなデバイスと強力な磁場を使用する必要があり、センサシステム系の量子状態を壊してしまい、測定したい現象に影響を与える可能性があるというのだ。

今回開発した量子センサは、生物医学の分野において単一ニューロンからの信号の検出を可能にしたり、電磁気的、光学的、物理的特性の研究がさかんに行われている2次元材料の挙動解明などにも役立つ可能性があるという。