2022年6月21日、マサチューセッツ工科大学(MIT)は、ホタルのようなロボットを開発した、そんなプレスリリースを発表した。
以前からMITは、昆虫のように飛ぶ超小型のロボットを開発してきたのだが、今回はまるでホタルのように光るロボットを開発したのだ。ではなぜMITはこのようなロボットを開発しているのだろうか。今回は、そんな話題について触れたいと思う。
MITが開発する昆虫ロボ
MITはこれまでにも超小型のロボットの開発に携わってきた。そのロボットとは、まるで見た目も昆虫のよう。以下の画像を見ていただきたい。
植物の大きさと比較してもらうとサイズ感もわかっていただけるだろう。この昆虫ロボットの重さはたった0.6g程度という。プレスリリースでは、1ペニー(1セント硬貨)の4分の1未満と紹介されている。
では、どのようにして飛ぶのだろうか。昆虫ロボは、ソフトアクチュエーターという人工筋肉で羽を動かす。
このソフトアクチュエータは、電極とエストラマーの2層からなるシートで構成され、これをロール状に巻いて20層くらいにする。
このソフトアクチュエータの電極部分に電圧を印加させると電極がエストラマーを機械的に圧迫し機械的な歪みが発生して羽が動くという仕組みだ。
では、なぜMITはこのような昆虫ロボを開発しているのだろうか。それは、まず昆虫の生物学と物理学の扉を開くためという。
これは、特殊な能力を持つ生物の模擬ロボットを開発する他の研究とアプローチが似ているだろう。他にも、作物の人工授粉や災害後の捜索救助任務にも活躍できるのではないか、そんな思いがあるという。
ホタル型ロボットとは?
MITは、昆虫型ロボットの開発、改良の次にホタル型のロボットへの開発と研究の進化を目指した。
そう、このソフトアクチュエータという人工筋肉の部分が発光するのだ。今回、このソフトアクチュエータ部分をエラストマーとカーボンナノチューブ電極の極薄層に変更。その理由は、光を遮らない電極にする必要があったためだ。
それを実現させたのは、わずか数ナノメートルの厚さで光を通過させる透明度の高いカーボンナノチューブ。そして発光させるために、エストラマーに硫化亜鉛粒子を混合。強力で高周波の電界を印加させると点灯するのだ。原理としては、電場が亜鉛粒子内の電子を励起し、励起された電子のエネルギー準位が下がる際に光を発光するのだ。
励起準位を調整することで光の色を、緑、オレンジ、青と変えることができるのだという。
では、なぜMITは、昆虫ロボをホタルのように発光させようとしたのだろうか。もちろん、先述の“昆虫の生物学と物理学の扉を開くため”という理由は同様だ。それ以外に、モーショントラッキングに活用し、この昆虫ロボの追跡システムに活用できるのではないかと考えているようだ。他にも、点灯によって通信手段としての活用法もあるという。
いかがだっただろうか。MITの昆虫ロボ、ホタルロボの技術力はもちろんのこと、緻密な開発戦略もとても魅力的に映るのは、筆者だけだろうか。