三菱電機は2022年5月27日、音波で魚群を遠ざける技術を開発した。
三菱電機では、魚を自由に集めたり、遠ざけたりする技術を開発しているという。では、なぜ、このような技術を開発したのか、技術の特徴や展望はなんなのか、今回はそんな話題について触れたいと思う。
音波で魚を遠ざける技術が必要な理由とは?
三菱電機が発表した魚群を遠ざける技術。では、なぜこのような技術を開発したのだろうか。
実は、日本の水産業は、水産資源の漁獲量の減少や、水産業の労働人口が1984年と2018年を比較してみると約1/3に減少しているという課題を抱えている。
その解決策として「海洋牧場」があるのだ。
海洋牧場は、養殖で見られるような網などで囲い閉じた空間に魚を閉じ込めるのではなく、音響と給餌装置を使ってうまく魚を管理するというもの。
Marin Ranching(マリーンランチング)とも呼ばれている。この海洋牧場によって、水産資源を多くの労働力を使うことなしに捕獲することができる。ちなみに、海洋牧場では、養殖との相違点を明確にするため、魚を生育させることに増殖という言葉が使われているようだ。
音波で魚を遠ざける技術とは?
三菱電機が開発した音波で魚を遠ざける技術は、この海洋牧場において活用される。
では、どのような技術なのだろうか。それは、特定の魚が嫌いな音波(忌避音)を水中でスピーカーから間隔を変えて出力することで、音波に慣れさせず、その魚を遠ざけるというもの。
魚の種類や稚魚・成魚など魚の大きさによって聞こえる周波数が異なることを利用し、忌避音で特定魚種のみを遠ざけることが可能となるという。
魚の個体ごとの学習も不要。継続して魚に忌避音を与えると、慣れにより忌避行動を示さなくなるが、忌避音の出力間隔を変化させることで、魚類の慣れを解消することもできるという。
では三菱電機では、今後どのような展望を検討しているのだろうか。それは、この魚を遠ざける技術に加えて、魚の好きな音(嗜好音)で魚類を集める技術を開発し、特定魚をより自由に誘導し、捕獲できるようにすることだという。
これによって、給餌の際に魚を効率的に集めたり、遠泳しないように管理することが可能になる。
いかがだっただろうか。この技術は、海苔やカキの養殖場での魚類による食害低減や不要な魚や稚魚の乱獲を防止する観点でも有効であり、2027年度までに音波による魚群誘導システムの事業化を目指していくという。