中国のロケットベンチャーDeep Blue Aerospaceは2022年5月6日、ロケットの垂直離着陸(VTVL)に成功。この結果を受けて、中国版SpaceXとの呼び声が高くなっている。
では今回、Deep Blue Aerospaceが成功させた垂直着陸とはどのようなものだったのか、どのような狙いがあるのだろうか、今回は、そんな話題について触れたいと思う。
Deep Blue Aerospaceがロケットの垂直着陸帰還に成功
Deep Blue Aerospaceは、中国の江蘇省に拠点を置くロケットベンチャー企業。2016年に設立され、再利用型の液体燃料のロケットの開発とロンチサービスに取り組んでいる。
今回、垂直着陸を成功させたロケットは、「Nebula-M1」というロケット。燃料は、液体酸素とケロシン。Nebula-M1のエンジンはおそらく「深蓝雷霆-20」(英語表記は、Deep Blue Thunder-20)と推定される。このエンジンは、ニードルボルトを採用したり、3Dプリンターで製造されたりするなど部品点数を大幅に削減し、信頼性を向上させたコンパクトな構造にしている点が特徴のようだ。
では、Deep Blue Aerospaceのロケットの垂直着陸の様子はどのようなものだったのだろうか。
まだ、Deep Blue Aerospaceから公式の動画がアップされていないようだが、ぜひ、検索して動画をご覧いただきたい。今回の垂直着陸を成功させたNebula-M1は、山奥の谷で打ち上げられている点に驚く。
垂直離着陸(VTVL)テストの何がすごいのか
今回のこのニュースの注目すべき点は、Nebula-M1が、中国史上初となるkm級の高度から垂直離着陸テストを成功させたこと。
具体的には、地上から1kmに達した後、地上に向かってNebula-M1が降下。エンジンのジンバルが小刻みに動き、姿勢を綺麗に保ちながら、降下している様子がよくわかる。そして、着陸の目標地点から0.5m未満の地点に着陸することができているのだ。この点は、横方向の誘導アルゴリズムが今回のテストでは追加されたことが大きいという。
つまり、Nebula-M1の垂直着陸による回収が成功したということは、再利用型のロケットであることを証明したことになるのだ。
実は、Nebula-M1の打ち上げミッションは今回が3回目で、昨年2021年に高度10m、100mでのホップテストを実施し成功。また、打ち上げなしのロケットのエンジン点火試験である「スタティック・ファイア・テスト」は7回実施されている。
では、Deep Blue Aerospaceは、次に何を目指しているのだろうか。それは、高度10km、100kmでの垂直離着陸テストの成功だという。そして、2024年には、完全再利用型のロケットとして商業化を開始することを計画しているというのだ。商業ロケットは、1段ロケットの「Shenlan Nebula-1」、2段ロケットの「Shenlan Nebula-2」だと推定される。
いかがだっただろうか。実は、Deep Blue Aerospaceを米国SpaceXに対抗した再利用型ロケット企業へと飛躍することを中国の宇宙開発計画における国有企業、中国航天科技集団(CASC)や他の中国企業が全面的にバックアップしているという。
そして、中国が今後宇宙大国としてさまざまな宇宙事業を行う上での基幹となるロケットにするという。今後、注目したいロケットベンチャーの1社だ。